泡が弾けて華が咲く

「時間厳守…」

「え?もうそんな時間?」

妹、瀏姫るいの呼びかけに、兄の澄尊きよたかは慌ててリビングから出ると、自室に入り上着を羽織って通学に使っているカバンを掴む。
そのまま部屋を出て玄関へ行くと、すでに準備を終えた瀏姫が靴を履き両手で通学カバンを持って待っていた。

「時は金なり…」

そう言って靴棚にかけてある靴べらを取り澄尊に渡すと、澄尊は有難う、と笑って受け取り靴を履いた。
澄尊が靴べらを元の場所にかけると、同時に瀏姫は玄関のドアを開けて出るとドアを支えた。
澄尊は妹に続いて外に出ると、瀏姫はドアから手を離し、澄尊は向きを変えてドアノブを持つとゆっくり閉める。
そして、カバンの中から鍵を取り出し鍵穴に刺して回すと、ガチャリと鍵がかかる音がした。
その音を確認して澄尊はよし、と言うと、妹と共に階段へ向かい、一階まで降りるとマンションを出た。

「お弁当、ハンカチ…あと鍵とスマホと財布。ちゃんとある?」

澄尊は指折りながら必要最低限のものを口に出して瀏姫に確認を取ると、先を歩いていた瀏姫は小さくため息を吐き、くるりと兄の方へ体を向け人差し指を立てた。

「…杞人天憂…」

「あ、ごめんそうだね」

妹の言葉に澄尊は苦笑して言うと、数歩進んで妹の頭にポンと手を置く。

「瀏姫はもう高校生だもんな」

澄尊はそう言って優しく瀏姫の頭を撫でると、あまり表情を出さない瀏姫の頬がほんのり赤くなり小さく頷いた。
しばらく一緒に歩いていると、目の前に駅が見えてきた。
澄尊は瀏姫の方に顔を向けると片手を少し上げた。

「それじゃあ行ってきます。瀏姫も気を付けて行っておいで」

「うん…行ってらっしゃい」

瀏姫も片手を上げて小さく振ると、くるりと背を向け通学路へ向かった。
澄尊はその背が見えなくなるまで見送ると、駅の中へと入り大学の最寄り駅まで行く電車に乗り込んだ。
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