公私混同しないジンニキ
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「……おい」
「……」
人の気配がリビングに入ってきたと同時に、パチリと言う音がした。途端部屋が一気に明るくなり、私は眩しさから逃れるように膝に顔を埋めた。
一番会いたくなくて、一番会いたかった人が、ソファーで膝を抱える私の目の前にいる。そして今の私を見て鼻で笑っている。
見なくてもわかってしまった。
「顔見せろ」
「……」
「無理矢理顔上げられるのと、自分で顔を見せるの、どっちがいい」
「……っ」
「ハッ、ひでぇツラしやがって」
「うぅ〜っ……!」
やっぱり笑われた。こんな泣きじゃくってぐしゃぐしゃな顔、見られたくなかったのに。
恨みを込めてジンさんを睨みつけても、ジンさんはそんなのどこ吹く風というように流して笑うだけだった。
「来い」
ジンさんが隣に座って両手を広げている。
これがジンさんの甘やかしてくれる時の合図。
これが、ただただ狡いのだ。任務中だった先程とは打って変わって優しさを含ませた声で私を招くのだから。
弾かれたようにそこに飛び込んで、でもやっぱりこの顔は見られたくなくて硬い胸に顔を埋めた。
するとジンさんが膝裏に手を入れぐいと引き、私はジンさんの太腿の上に姫抱きの状態のまま降ろされた。背中に回された手が酷く暖かくて心地よくて、止まりかけてた涙がまた溢れ出す。
「帰ってきてから今までずっと泣いてたのか」
「……っ、だって、悔しくって」
「……そうか」
「またっ、ジンさんの足、引っ張っちゃった……」
嗚咽混じりに吐く声もジンさんはしっかりと耳を傾けてくれている。その優しさが、逆に胸に刺さった。自分が惨めで仕方なかった。
ジンさんはそんな私の頭を一度するりと撫でると、ゆっくりと口を開いた。
「……まあ、予測済みだったとはいえあれは緊急事態だったからな。その中ではお前はよくやった方だ」
「でも……っ」
「お前、俺が何故キレていたのか分かってねぇのか」
「へ……?」
情けない声が漏れ、また鼻で笑われてしまった。
「あの時のお前の行動は、まさに"捨て身"と呼ぶに相応しいもんだった」
息が止まった。
確かに、あの時の私は自分の身の安全などどうでも良くて。任務が遂行出来さえすれば、あとは何とか生きていればいいかくらいの気持ちでいたのだ。いや、そんなことすら考えてなかったかもしれない。
「自分の身も守れず、更に自己犠牲に走る奴に誰が信頼を置く?」
はっきりと告げられた言葉に、思わず涙が止まった。
それは部隊を率いるジンさんだからこそ、とても重みのある発言で。
顔を上げてジンさんの瞳を見つめる。相変わらずその奥底にある感情は読めなかったけど、それでもちゃんと目を見て言いたかった。
「ジンさん」
「……」
「……ごめんなさい」
「分かればいい」
ジンさんの大きな手が背中をゆっくりと撫ぜていく。強ばっていた体から力が抜けていった。
「ったく、敵はよりにもよってお前のところに行くし銃声は聞こえるしお前は全く応答しねぇし……」
「え?」
「何でもねぇよ……」
ジンさんの呟きが上手く聞こえず聞き返すが躱されてしまった。代わりのように頭を撫でていた手が頬へと降りてくる。しかし、走った痛みに思わず声を出してしまった。
「い゙……っ」
「……そのままにしてたのか」
「何となく……戒めだと思って……」
「それとこれとは別だろ……」
舌打ちをしたジンさんは、私をソファーへ下ろすとキッチンへと向かった。
戻ってきたジンさんの手には氷のうがあった。頬に当てられるそれは、熱を持った頬にはちょうど良い。
「当ててろ」
「ありがとうございます…」
そのままジンさんは私の隣に腰掛けた。
腫れ上がった私の頬を見て、ジンさんが僅かに眉をひそめる。
「……悪い、俺も気が立っていた。加減はしたつもりだったんだが」
「なっ、ジンさんは何も悪くないです!私がもっと……上手くやれてたら……」
「よくやってるだろう、お前は」
そう言って肩を引き寄せまた頭を撫でるその手はやっぱり優しくて。子供っぽいと分かっていても、私は唇を尖らせてしまうのだ。
「そうやって甘やかすから……すぐ頼っちゃいそうになるんですよ……」
「下っ端のお前が、上を頼ることの何が悪い」
「だって情けないじゃないですか……もっとしっかりした人になって、ジンさんを守れるようになりたいんです」
「テメェが俺を守ろうなんざ100年早いな」
「わ、分かってますけど……!」
くつくつと喉を鳴らして笑う姿すら様になっていて、それに見惚れてしまう自分が嫌だった。
首の後ろに回された腕に体重をかけて、ささやかな抵抗を試みたがなんの意味も無く、逆に体温を感じて心が落ち着いてしまった。お返しとばかりに彼がするりと髪に指を通しては落としていく、その動きすらも心地いい。
何だか、瞼が急激に重くなってきてしまった。
「……眠いんだろ」
「そっ……!……んなことは……」
「いい。暫く任務もない……休んでおけ」
「ゔぅ……」
幼子を寝かしつけるかのように、背中をぽんぽんと優しく一定のリズムで叩かれる。色んな意味で疲れ切っていた私には効果抜群だった。
「焦らなくていい……時間なんざ腐るほどあるんだからな」
「う……ぅん……」
「おら、寝ろ」
「ん……」
瞼が落ちていく中、何故か不安に駆られて伸ばした手は、ジンさんがとって指を絡めてくれた。
残る意識を総動員させて言葉を紡いだ。
「ジン、さん」
「何だ」
「……わたし、がんばるから」
「……あぁ」
「だから……、だから……」
──置いていかないで
最後まで言えたかどうか。睡魔に誘われるまま私は意識を手放した。
ジンさんがこの時どんな表情で私の話を聞いていたのかも、
「……誰がテメェを置いていくかよ」
自分の額に贈られた口付けとその意味も、知らぬまま。
「……」
人の気配がリビングに入ってきたと同時に、パチリと言う音がした。途端部屋が一気に明るくなり、私は眩しさから逃れるように膝に顔を埋めた。
一番会いたくなくて、一番会いたかった人が、ソファーで膝を抱える私の目の前にいる。そして今の私を見て鼻で笑っている。
見なくてもわかってしまった。
「顔見せろ」
「……」
「無理矢理顔上げられるのと、自分で顔を見せるの、どっちがいい」
「……っ」
「ハッ、ひでぇツラしやがって」
「うぅ〜っ……!」
やっぱり笑われた。こんな泣きじゃくってぐしゃぐしゃな顔、見られたくなかったのに。
恨みを込めてジンさんを睨みつけても、ジンさんはそんなのどこ吹く風というように流して笑うだけだった。
「来い」
ジンさんが隣に座って両手を広げている。
これがジンさんの甘やかしてくれる時の合図。
これが、ただただ狡いのだ。任務中だった先程とは打って変わって優しさを含ませた声で私を招くのだから。
弾かれたようにそこに飛び込んで、でもやっぱりこの顔は見られたくなくて硬い胸に顔を埋めた。
するとジンさんが膝裏に手を入れぐいと引き、私はジンさんの太腿の上に姫抱きの状態のまま降ろされた。背中に回された手が酷く暖かくて心地よくて、止まりかけてた涙がまた溢れ出す。
「帰ってきてから今までずっと泣いてたのか」
「……っ、だって、悔しくって」
「……そうか」
「またっ、ジンさんの足、引っ張っちゃった……」
嗚咽混じりに吐く声もジンさんはしっかりと耳を傾けてくれている。その優しさが、逆に胸に刺さった。自分が惨めで仕方なかった。
ジンさんはそんな私の頭を一度するりと撫でると、ゆっくりと口を開いた。
「……まあ、予測済みだったとはいえあれは緊急事態だったからな。その中ではお前はよくやった方だ」
「でも……っ」
「お前、俺が何故キレていたのか分かってねぇのか」
「へ……?」
情けない声が漏れ、また鼻で笑われてしまった。
「あの時のお前の行動は、まさに"捨て身"と呼ぶに相応しいもんだった」
息が止まった。
確かに、あの時の私は自分の身の安全などどうでも良くて。任務が遂行出来さえすれば、あとは何とか生きていればいいかくらいの気持ちでいたのだ。いや、そんなことすら考えてなかったかもしれない。
「自分の身も守れず、更に自己犠牲に走る奴に誰が信頼を置く?」
はっきりと告げられた言葉に、思わず涙が止まった。
それは部隊を率いるジンさんだからこそ、とても重みのある発言で。
顔を上げてジンさんの瞳を見つめる。相変わらずその奥底にある感情は読めなかったけど、それでもちゃんと目を見て言いたかった。
「ジンさん」
「……」
「……ごめんなさい」
「分かればいい」
ジンさんの大きな手が背中をゆっくりと撫ぜていく。強ばっていた体から力が抜けていった。
「ったく、敵はよりにもよってお前のところに行くし銃声は聞こえるしお前は全く応答しねぇし……」
「え?」
「何でもねぇよ……」
ジンさんの呟きが上手く聞こえず聞き返すが躱されてしまった。代わりのように頭を撫でていた手が頬へと降りてくる。しかし、走った痛みに思わず声を出してしまった。
「い゙……っ」
「……そのままにしてたのか」
「何となく……戒めだと思って……」
「それとこれとは別だろ……」
舌打ちをしたジンさんは、私をソファーへ下ろすとキッチンへと向かった。
戻ってきたジンさんの手には氷のうがあった。頬に当てられるそれは、熱を持った頬にはちょうど良い。
「当ててろ」
「ありがとうございます…」
そのままジンさんは私の隣に腰掛けた。
腫れ上がった私の頬を見て、ジンさんが僅かに眉をひそめる。
「……悪い、俺も気が立っていた。加減はしたつもりだったんだが」
「なっ、ジンさんは何も悪くないです!私がもっと……上手くやれてたら……」
「よくやってるだろう、お前は」
そう言って肩を引き寄せまた頭を撫でるその手はやっぱり優しくて。子供っぽいと分かっていても、私は唇を尖らせてしまうのだ。
「そうやって甘やかすから……すぐ頼っちゃいそうになるんですよ……」
「下っ端のお前が、上を頼ることの何が悪い」
「だって情けないじゃないですか……もっとしっかりした人になって、ジンさんを守れるようになりたいんです」
「テメェが俺を守ろうなんざ100年早いな」
「わ、分かってますけど……!」
くつくつと喉を鳴らして笑う姿すら様になっていて、それに見惚れてしまう自分が嫌だった。
首の後ろに回された腕に体重をかけて、ささやかな抵抗を試みたがなんの意味も無く、逆に体温を感じて心が落ち着いてしまった。お返しとばかりに彼がするりと髪に指を通しては落としていく、その動きすらも心地いい。
何だか、瞼が急激に重くなってきてしまった。
「……眠いんだろ」
「そっ……!……んなことは……」
「いい。暫く任務もない……休んでおけ」
「ゔぅ……」
幼子を寝かしつけるかのように、背中をぽんぽんと優しく一定のリズムで叩かれる。色んな意味で疲れ切っていた私には効果抜群だった。
「焦らなくていい……時間なんざ腐るほどあるんだからな」
「う……ぅん……」
「おら、寝ろ」
「ん……」
瞼が落ちていく中、何故か不安に駆られて伸ばした手は、ジンさんがとって指を絡めてくれた。
残る意識を総動員させて言葉を紡いだ。
「ジン、さん」
「何だ」
「……わたし、がんばるから」
「……あぁ」
「だから……、だから……」
──置いていかないで
最後まで言えたかどうか。睡魔に誘われるまま私は意識を手放した。
ジンさんがこの時どんな表情で私の話を聞いていたのかも、
「……誰がテメェを置いていくかよ」
自分の額に贈られた口付けとその意味も、知らぬまま。
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