一生飼われる覚悟。
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急に静かになり動かなくなった仔猫に、ジンは何事かと思い覆い被さっていた自分の体を起こした。
しかし顔を見ると、すやすやと寝息を立てて夢の世界へ旅立っているだけらしく、ため息を吐く。
「……抜けきっていなかったのか」
確かに急いでいたとはいえ、点滴に混ぜる睡眠薬の量を多めにしてしまったのはまずかったらしい。むしろさっきまでよく起きていたものだ。
手の甲で頬を撫でてやれば、半開きだった口がふにゃりとした笑みに変わった。その暢気な顔に、どうしても愉快さが込み上げてきてしまう。
「一つ勘違いをしているようだな、Kitty……」
この哀れな仔猫は、知る由も無いだろう。己の選択が、ジンの取る行動に何の変化ももたらさないことを。
例えあの爆発の中、こちら側の世界の闇に気付き恐れを成して逃げ出そうが、それでもジンの側にいたいと走り出そうが。どの道いつかは囲い込む気でいたジンにとっては些末なことだった。
逃げ道を塞いで、誰が飼い主かを教え込ませて、側に置く。最悪そこにKittyの意思がなくとも、それはそれで面白いと思うくらいには、離す気はさらさらなかった。
だがやはり、気分は良い。なにせ勝手に焦ってくれたおかげで、置いていかれまいと必死に駆けるKittyを見ることが出来たのだから。その瞳いっぱいに自分だけを移して、他に構わず一心に駆け寄ってくる姿はどうしてこうも満たされるのか。
家も、環境も、特注の首輪すらも用意したのは、命の危険を冒してまでジンを選んだことへの褒美だった。先程、Kittyの行動など何の影響もないと言ったが、今にして思えば、これがあの行動を選んだことでKittyが得られた唯一のことかもしれない。あの時の選択次第では、Kittyに与える自由など一欠片もなかったのかもしれないのだから。
「お前を信じて、あの野郎からの新しい仕事を俺の許可なしに引き受けたことには目を瞑ってやったんだ……気まぐれに他の奴らに媚びを売るのも少しは見逃してやる」
――随分と優しい飼い主だと思わねぇか、なァ?
まだ白く細い首に馴染んでいない真っ黒なチョーカーに触れながら独りごちる。むず痒いのか眉を寄せたKittyだったが、それでも起きる気配はなかった。
『一生、飼ってくれるんですか?』寝落ちする前、そう言ったKittyの顔は、捨てないでという懇願、そしてこちらが逃げ道など用意するはずがないと分かった上での期待に染まっていた。
あの小さな体で、己の感情に振り回されながら、それでもそのまま流されるものかと懸命に言葉を紡ぎ出そうとする様は、いつだっていじらしく愉快だ。
これから先、そんな姿を幾度も見られるのかと思うと、否応なしに口の端が釣り上がる。これではまるで、かき乱されているのはこちらではないか。そんなことすらどうでもいいと思えるほど、この可哀想で可愛らしい仔猫が懐く相手が自分であることに、例えようもない優越感を覚えてしまっていた。
「せいぜい甘やかしてやるよ……お前が望む通り、終わりの刻までな」
ぬくい体を抱いて、ジンはベッドへと横たわった。
自らこの手に堕ちてきた、仔猫の柔さをあますことなく味わうために。
しかし顔を見ると、すやすやと寝息を立てて夢の世界へ旅立っているだけらしく、ため息を吐く。
「……抜けきっていなかったのか」
確かに急いでいたとはいえ、点滴に混ぜる睡眠薬の量を多めにしてしまったのはまずかったらしい。むしろさっきまでよく起きていたものだ。
手の甲で頬を撫でてやれば、半開きだった口がふにゃりとした笑みに変わった。その暢気な顔に、どうしても愉快さが込み上げてきてしまう。
「一つ勘違いをしているようだな、Kitty……」
この哀れな仔猫は、知る由も無いだろう。己の選択が、ジンの取る行動に何の変化ももたらさないことを。
例えあの爆発の中、こちら側の世界の闇に気付き恐れを成して逃げ出そうが、それでもジンの側にいたいと走り出そうが。どの道いつかは囲い込む気でいたジンにとっては些末なことだった。
逃げ道を塞いで、誰が飼い主かを教え込ませて、側に置く。最悪そこにKittyの意思がなくとも、それはそれで面白いと思うくらいには、離す気はさらさらなかった。
だがやはり、気分は良い。なにせ勝手に焦ってくれたおかげで、置いていかれまいと必死に駆けるKittyを見ることが出来たのだから。その瞳いっぱいに自分だけを移して、他に構わず一心に駆け寄ってくる姿はどうしてこうも満たされるのか。
家も、環境も、特注の首輪すらも用意したのは、命の危険を冒してまでジンを選んだことへの褒美だった。先程、Kittyの行動など何の影響もないと言ったが、今にして思えば、これがあの行動を選んだことでKittyが得られた唯一のことかもしれない。あの時の選択次第では、Kittyに与える自由など一欠片もなかったのかもしれないのだから。
「お前を信じて、あの野郎からの新しい仕事を俺の許可なしに引き受けたことには目を瞑ってやったんだ……気まぐれに他の奴らに媚びを売るのも少しは見逃してやる」
――随分と優しい飼い主だと思わねぇか、なァ?
まだ白く細い首に馴染んでいない真っ黒なチョーカーに触れながら独りごちる。むず痒いのか眉を寄せたKittyだったが、それでも起きる気配はなかった。
『一生、飼ってくれるんですか?』寝落ちする前、そう言ったKittyの顔は、捨てないでという懇願、そしてこちらが逃げ道など用意するはずがないと分かった上での期待に染まっていた。
あの小さな体で、己の感情に振り回されながら、それでもそのまま流されるものかと懸命に言葉を紡ぎ出そうとする様は、いつだっていじらしく愉快だ。
これから先、そんな姿を幾度も見られるのかと思うと、否応なしに口の端が釣り上がる。これではまるで、かき乱されているのはこちらではないか。そんなことすらどうでもいいと思えるほど、この可哀想で可愛らしい仔猫が懐く相手が自分であることに、例えようもない優越感を覚えてしまっていた。
「せいぜい甘やかしてやるよ……お前が望む通り、終わりの刻までな」
ぬくい体を抱いて、ジンはベッドへと横たわった。
自らこの手に堕ちてきた、仔猫の柔さをあますことなく味わうために。