煙草と、メスと
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彼女のいなくなった夜の屋上で、ジンはしばらく己の手のひらを見つめていた。やがて、興味を無くしたように逸らされた目は、地面に捨て去られた彼女のメスに向く。一般的なナイフより幾周りも小さいそれを、ジンは緩慢な動作で拾った。
彼女は知らないだろう。彼女が己の武器だと、”救う”ための武器だと言ったこのメス一つで、人を殺す術などいくらでもあることを。教えれば、彼女はきっと苦虫を噛み潰したような顔をするのだろう。
「だから、テメェはこちら側じゃねぇんだよ」
口の端にわずかな笑みを浮かべながら、ジンは言った。
どこまでも組織の色に染まらない、強い意志を持った彼女。そんな彼女の、初めて見る弱さ。それを見られたことに満足感を覚えている自分がいる。
さっさと壊れて堕ちてしまえばいい。そう簡単に彼女が折れることはないとわかっていながらも、ジンはそう願わずにはいられなかった。
彼女は知らないだろう。彼女が己の武器だと、”救う”ための武器だと言ったこのメス一つで、人を殺す術などいくらでもあることを。教えれば、彼女はきっと苦虫を噛み潰したような顔をするのだろう。
「だから、テメェはこちら側じゃねぇんだよ」
口の端にわずかな笑みを浮かべながら、ジンは言った。
どこまでも組織の色に染まらない、強い意志を持った彼女。そんな彼女の、初めて見る弱さ。それを見られたことに満足感を覚えている自分がいる。
さっさと壊れて堕ちてしまえばいい。そう簡単に彼女が折れることはないとわかっていながらも、ジンはそう願わずにはいられなかった。
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