年末年始あたりに、１からこのおまけまでをまとめて、生誕祭に格納できればなーと思っています。


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妹ちゃん達と感想を語りあったり、材料を推察しながら、横目にこそり…と黒崎くんの様子を伺う。
彼が今手にしているのは、味のベースがチョコレートの新商品だ。

ほぼ表情のない顔をしながら、指先でつまんだそのドーナツの欠片を、ためつすがめつすること約10秒。
先端を少し齧り、ゆっくりと咀嚼を始めた…その動きが、ふと止まった。

齧りかけのドーナツへと向けられる、薄茶の瞳。
その奥底で、きらりと光が踊ったのを、私は見逃さなかった。

心の中で、ゆっくりとカウントダウンを始める。

いち、にの、さん！

ほぼズレることなく、ばくり…と、
残った欠片のすべてを、黒崎くんは口の中に放り込んだ。
相変わらず無表情に、でも一口目よりも少し早いペースで、咀嚼が始まる。

もっ、もっ、もっ、もっ、もっ……。

——例えば。
今私の目の前の光景が漫画の一コマだったとしたら、そんな擬音が書き込まれるのではないかしら。

『可愛いなぁ……』

その動作は、つい最近見かけた、チンチラネズミの食事動画を連想させて……。
私は吹き出したくなるのを懸命に堪えながら、黒崎くんの様子を見守った。

普段あまり喜怒哀楽を、特に喜と楽を素直に表に出さない彼だけれど、付き合いが長くなってくればそれなりに、気がつく行動パターンは増える。
きっと黒崎くんは、今食べているドーナツの味を、心底気に入ったのに違いない。

『次に、お宅にお邪魔するときの手土産や、バイトの差し入れにドーナツを買う機会があったら、絶対にこの新商品を買っていこう——』

そんなことを思いながら、空になった皿やら何やらを片付け始めた双子ちゃんたちを手伝って、キッチンへと向かう。

「ありがとう、織姫ちゃん！」

にっこりと笑った遊子ちゃんが、ちらっとリビングを振り返りながら私の耳元に唇を寄せた。

「お兄ちゃん、あの新商品、絶対気に入ったよね！」
「うんうん！　あたしもそれ、思った！」

反対側の耳元で、夏梨ちゃんもまた、愉快そうにそう囁く。
二人の顔を、交互に見やりながら。
私もまた微笑みを浮かべつつ、強く深く、二人に頷き返した。







おしまい。