よもやま
護廷高校パロディ(框様のキスの日イラストから触発された小話)
2025/08/13 09:50今年のエイプリルフールで、学パロ世界での女性陣のイラストが公開されましたが、その後のキスの日に、あの世界の織姫ちゃんが、一護君の抱きぐるみにキスしているイラストを、框様がアップされたのです。
そのイラストがあまりにも可愛くて、画面のこちら側でキャッキャ💕しながら書いた小話に、一護くん視点の続きとおまけをつけて、昨日Xに投稿いたしました。
一日遅れましたが、こちらにも全文アップさせていただきます。
お楽しみいただけましたら、幸いです。
表紙ネタの続きも頑張りますね。
仕事は相変わらず、日々、なんでこうなる?!の連続ですが、昨年度よりはだいぶ早い時間に帰宅できています。
このまま心身共に壊さないように、無理のない範囲で仕事も趣味も続けていこうと思います。
二次創作界隈はウェブオンリーが開催されたりと、最近色々と盛り上がっているようです。
イチオリ好きとしては大変喜ばしい展開だと思います。
私自身は、ここでひっそりと生息していきますね。
side:*
「呪いの藁人形なんてものがあるのだから、幸せを届けてくれるぬいがあっても、いいんじゃないかと思って」
そう、言って。
井上は自作の一護に似せたぬいぐるみに、毎日必ず、願掛けをする。
「喧嘩なんて、しませんように」
「どうしても喧嘩になった時には、酷い怪我をしませんように」
「昨日怪我したところから、痛みが消えていますように」
日々真摯に祈っては、最後に必ず「今日も1日、黒崎君が幸せでありますように」と締めくくって。
そっと、ぬい一護の頬に唇を寄せ、優しく優しくキスをする。
例え相手がぬいぐるみであろうとも、唇に重ねないあたりが、奥ゆかしいと言うかなんと言うか……如何にも井上らしいと思う。
「……でも確かに、最近アイツの怪我、減った気がするな」
恋次が、鯛焼きを頬張りながら呟く。
そもそも、喧嘩を避けるようになってきた……とも。
「以前から、無闇矢鱈と喧嘩に持ち込むタイプでも無かったが……最近は特に、な。
案外、効いてんじゃねぇの?」
「世の中、そんな都合よくいくものとも思えぬが……。
何にせよ、彼奴の怪我が減ることで、井上の笑顔が増えるなら、喜ばしいことだ」
ふんっ…とひとつ鼻を鳴らせば。
「違いねぇ」と、苦笑交じりに恋次が頷いた。
side:15
「今日も一日、黒崎くんが幸せでありますように」
突然耳に飛び込んできた自分の名に、思わず足を止める。
気配を殺しつつ、扉に嵌め込まれたガラスの覗き窓から中の様子を伺うと、井上が手にしたぬいぐるみの頬に、キスをしているのが見えた。
そのぬいぐるみ、は。
オレンジ色の髪を戴き、黒い学ランを着ていて……どう考えても、俺を模したのに違いなくて——。
「———っ?!」
思わず口元を押さえ、覗き窓の下に屈み込んで。
そのまま、廊下側の窓下を這うように進み、教室の端までたどり着いたところで、わずかな物音すら立てぬよう、慎重に身体を起こした。
幸いなことに、手芸部の部室の先に教室は無く、屋上に続く階段があるだけだ。
すう…とひとつ息を吸い込むと、全速力で最上階まで駆け上がった。
「——何だ、あれは」
屋上へと続く扉に背を預け、ずるずると床に座り込んで。
どくんどくん…と、痛みすら感じるほどに強く、うっかり口から出るんじゃないか…と不安になる程激しく拍動する心臓を持て余して、喘ぐように息を吐いた。
まるで洗濯機にでもぶち込まれたかのように、ぐらぐらと脳が揺れて。
目が回って、思考が出来ない。
そのくせ。
今しがた目にした光景だけは、幾度も幾度も嫌と言うほど鮮明に、脳裏に再生され続けていた。
まるで、壊れた機械のように。
「井上……」
なるべく喧嘩をするな、怪我をしてくれるな——とは、普段から面と向かって言われていた。
特に、怪我の手当をしてもらっているとき、ぷぅっと頬を膨らませて、でも、瞳はゆらゆらと不安気に揺らがせて、涙をこらえながら苦言を呈す——その様子は、なんとも可愛らしく、いじらしくて。
ついうっかり、妹たちにするように頭を撫でてやりたくなるから、困……。
「——って、何考えてんだ俺?!」
慌てて身を起こし、頭を激しく横に振った。
それでも、自分にばかり都合の良い記憶やら妄想やらは、脳のど真ん中にどっかりと居座ったまま、てんで出ていく様子がない。
自分に対する苛立たしさのあまり、背後の鉄扉に向き直りざま、額を打ち付けた。
——すると。
ゴォォオオォォン……と。
まるで寺の鐘を鳴らしたような音が、思いの外大きく周囲に響き渡ってしまった。
「除夜の鐘かよ?! ……にしては、煩悩消えねぇし?!」
自分自身に呆れながら呟いた、その時だった。
階段を駆け上がってくる足音と共に、そこに居るのは誰だ——と問う声が鋭く響く。
「ここは立ち入り禁止区域だぞ——って…なぁんだ、黒崎か」
俺を視界に入れるなり、気の抜けた声色と表情に変わったのは、担任の越智先生だった。
「なぁんだ——とは、どういう意味で?」
若干ムッとしながら立ち上がる俺に、越智先生は愉快そうに目を細める。
「隠れ煙草やら何やらの心配は、要らないと言うことだよ。
あんたは、見かけ倒しだから」
「——せめて、見かけに寄らないって言って貰えませんかね」
「おお! 流石は学年上位に食い込むだけのことはあるな」
「………」
眉間皺を深めた俺とは、対照的に。
学校一適当に仕事しているように見えて、意外と観察眼が鋭い担任は、カラカラとお気楽に笑うばかりだ。
「あと2分で、予鈴が鳴る。
頼むから、ショートホームルームまでには教室に戻っておいてくれよ!
あんたが席に着いていないと、井上を筆頭に、石田やら茶渡やら阿散井やら朽木やら有沢やらが、揃ってソワソワと上の空になるものだから、こちとら迷惑千万なんだ。
ちったぁ、担任の苦労も考えてくれ」
場所が場所だけに、無駄に響くのほほん声を残して、踵を返す越智先生。
階段を降りていく、その後ろ姿を見送りながら、俺は肩が下がるほどに大きく息を吐き出した。
「……俺だって、好きで絡まれたり喧嘩売られてるわけじゃねぇよ」
言い訳がましく呟きながら、俺もまた階段へと足を踏み出す。
毎朝——とまではいかないけれど、結構な頻度で起こるそれにうんざりしているのは、誰よりも俺自身だ。
避けられるものなら、避けて通りたい。
だけど——この髪色に加えて、両親の出自だのなんだのが複雑に絡み合って、一部の人間にとって俺は、良くも悪くも放っておけない、放っておくわけにはいかない存在——で、あるらしい。
大変に不本意、ではあるが。
「あ…! おっはよう、黒崎くん!!」
教室の戸を開けるなり、俺を迎えてくれた声と笑顔に。
それまではあまり考えたことのなかった〝この先〟に向けての望みが、ふいに心の奥底に灯る。
———泣かせたく、ない。
親父たちの世代よりも、更に以前の旧制中学の時代…それどころか、遡ろうとすれば寺子屋の時代から続いているという噂まである、あの学校の連中との抗争。
井上の兄貴がかつて大怪我を負ったのも、そのとばっちりを受けたからだと耳にしたことがある。
『……俺らの代で、終わらせられるものなら』
越智先生の、点呼の声を聴きながら。
机の下、膝の上に乗せた拳に、我知らず力を込めていた。
※おまけ※
「何や最近、以前にも増して無駄に喧嘩買わんようになったように思うけど、何かあったん?」
昼休み中の、屋上。
意味ありげな笑みを口の端に刻みながら、市丸先輩が俺に話しかけてきた。
内心ぎくりと心臓を凍りつかせながらも「別に、これと言って何も…」とシラを切る。
………おい、そこの赤毛と眼鏡!
聞こえないふりして、実はしっかり聴き耳立ててやがるのには、気付いてるからな!!
「ふうん?」
ニタリ…と。
まるで獲物を前にした蛇のように笑みを深め、「ほな、そういうことにしとこか」と、喉の奥をくつくつと鳴らしながら去っていく先輩。
「……絶対ぇ、知ってんだろ。井上のあれ」
小さく、舌打ちをひとつ。
そして大きく息を吸い込むと、背後を振り返りざま、悪友たちを怒鳴りつけた。
「だーかーら!!
聴き耳立てた挙句に、生温く微笑むのやめろ恋次!
石田も!! これ見逃しに、ため息吐くんじゃねぇよっ!!!」
……終わっとく。
そのイラストがあまりにも可愛くて、画面のこちら側でキャッキャ💕しながら書いた小話に、一護くん視点の続きとおまけをつけて、昨日Xに投稿いたしました。
一日遅れましたが、こちらにも全文アップさせていただきます。
お楽しみいただけましたら、幸いです。
表紙ネタの続きも頑張りますね。
仕事は相変わらず、日々、なんでこうなる?!の連続ですが、昨年度よりはだいぶ早い時間に帰宅できています。
このまま心身共に壊さないように、無理のない範囲で仕事も趣味も続けていこうと思います。
二次創作界隈はウェブオンリーが開催されたりと、最近色々と盛り上がっているようです。
イチオリ好きとしては大変喜ばしい展開だと思います。
私自身は、ここでひっそりと生息していきますね。
side:*
「呪いの藁人形なんてものがあるのだから、幸せを届けてくれるぬいがあっても、いいんじゃないかと思って」
そう、言って。
井上は自作の一護に似せたぬいぐるみに、毎日必ず、願掛けをする。
「喧嘩なんて、しませんように」
「どうしても喧嘩になった時には、酷い怪我をしませんように」
「昨日怪我したところから、痛みが消えていますように」
日々真摯に祈っては、最後に必ず「今日も1日、黒崎君が幸せでありますように」と締めくくって。
そっと、ぬい一護の頬に唇を寄せ、優しく優しくキスをする。
例え相手がぬいぐるみであろうとも、唇に重ねないあたりが、奥ゆかしいと言うかなんと言うか……如何にも井上らしいと思う。
「……でも確かに、最近アイツの怪我、減った気がするな」
恋次が、鯛焼きを頬張りながら呟く。
そもそも、喧嘩を避けるようになってきた……とも。
「以前から、無闇矢鱈と喧嘩に持ち込むタイプでも無かったが……最近は特に、な。
案外、効いてんじゃねぇの?」
「世の中、そんな都合よくいくものとも思えぬが……。
何にせよ、彼奴の怪我が減ることで、井上の笑顔が増えるなら、喜ばしいことだ」
ふんっ…とひとつ鼻を鳴らせば。
「違いねぇ」と、苦笑交じりに恋次が頷いた。
side:15
「今日も一日、黒崎くんが幸せでありますように」
突然耳に飛び込んできた自分の名に、思わず足を止める。
気配を殺しつつ、扉に嵌め込まれたガラスの覗き窓から中の様子を伺うと、井上が手にしたぬいぐるみの頬に、キスをしているのが見えた。
そのぬいぐるみ、は。
オレンジ色の髪を戴き、黒い学ランを着ていて……どう考えても、俺を模したのに違いなくて——。
「———っ?!」
思わず口元を押さえ、覗き窓の下に屈み込んで。
そのまま、廊下側の窓下を這うように進み、教室の端までたどり着いたところで、わずかな物音すら立てぬよう、慎重に身体を起こした。
幸いなことに、手芸部の部室の先に教室は無く、屋上に続く階段があるだけだ。
すう…とひとつ息を吸い込むと、全速力で最上階まで駆け上がった。
「——何だ、あれは」
屋上へと続く扉に背を預け、ずるずると床に座り込んで。
どくんどくん…と、痛みすら感じるほどに強く、うっかり口から出るんじゃないか…と不安になる程激しく拍動する心臓を持て余して、喘ぐように息を吐いた。
まるで洗濯機にでもぶち込まれたかのように、ぐらぐらと脳が揺れて。
目が回って、思考が出来ない。
そのくせ。
今しがた目にした光景だけは、幾度も幾度も嫌と言うほど鮮明に、脳裏に再生され続けていた。
まるで、壊れた機械のように。
「井上……」
なるべく喧嘩をするな、怪我をしてくれるな——とは、普段から面と向かって言われていた。
特に、怪我の手当をしてもらっているとき、ぷぅっと頬を膨らませて、でも、瞳はゆらゆらと不安気に揺らがせて、涙をこらえながら苦言を呈す——その様子は、なんとも可愛らしく、いじらしくて。
ついうっかり、妹たちにするように頭を撫でてやりたくなるから、困……。
「——って、何考えてんだ俺?!」
慌てて身を起こし、頭を激しく横に振った。
それでも、自分にばかり都合の良い記憶やら妄想やらは、脳のど真ん中にどっかりと居座ったまま、てんで出ていく様子がない。
自分に対する苛立たしさのあまり、背後の鉄扉に向き直りざま、額を打ち付けた。
——すると。
ゴォォオオォォン……と。
まるで寺の鐘を鳴らしたような音が、思いの外大きく周囲に響き渡ってしまった。
「除夜の鐘かよ?! ……にしては、煩悩消えねぇし?!」
自分自身に呆れながら呟いた、その時だった。
階段を駆け上がってくる足音と共に、そこに居るのは誰だ——と問う声が鋭く響く。
「ここは立ち入り禁止区域だぞ——って…なぁんだ、黒崎か」
俺を視界に入れるなり、気の抜けた声色と表情に変わったのは、担任の越智先生だった。
「なぁんだ——とは、どういう意味で?」
若干ムッとしながら立ち上がる俺に、越智先生は愉快そうに目を細める。
「隠れ煙草やら何やらの心配は、要らないと言うことだよ。
あんたは、見かけ倒しだから」
「——せめて、見かけに寄らないって言って貰えませんかね」
「おお! 流石は学年上位に食い込むだけのことはあるな」
「………」
眉間皺を深めた俺とは、対照的に。
学校一適当に仕事しているように見えて、意外と観察眼が鋭い担任は、カラカラとお気楽に笑うばかりだ。
「あと2分で、予鈴が鳴る。
頼むから、ショートホームルームまでには教室に戻っておいてくれよ!
あんたが席に着いていないと、井上を筆頭に、石田やら茶渡やら阿散井やら朽木やら有沢やらが、揃ってソワソワと上の空になるものだから、こちとら迷惑千万なんだ。
ちったぁ、担任の苦労も考えてくれ」
場所が場所だけに、無駄に響くのほほん声を残して、踵を返す越智先生。
階段を降りていく、その後ろ姿を見送りながら、俺は肩が下がるほどに大きく息を吐き出した。
「……俺だって、好きで絡まれたり喧嘩売られてるわけじゃねぇよ」
言い訳がましく呟きながら、俺もまた階段へと足を踏み出す。
毎朝——とまではいかないけれど、結構な頻度で起こるそれにうんざりしているのは、誰よりも俺自身だ。
避けられるものなら、避けて通りたい。
だけど——この髪色に加えて、両親の出自だのなんだのが複雑に絡み合って、一部の人間にとって俺は、良くも悪くも放っておけない、放っておくわけにはいかない存在——で、あるらしい。
大変に不本意、ではあるが。
「あ…! おっはよう、黒崎くん!!」
教室の戸を開けるなり、俺を迎えてくれた声と笑顔に。
それまではあまり考えたことのなかった〝この先〟に向けての望みが、ふいに心の奥底に灯る。
———泣かせたく、ない。
親父たちの世代よりも、更に以前の旧制中学の時代…それどころか、遡ろうとすれば寺子屋の時代から続いているという噂まである、あの学校の連中との抗争。
井上の兄貴がかつて大怪我を負ったのも、そのとばっちりを受けたからだと耳にしたことがある。
『……俺らの代で、終わらせられるものなら』
越智先生の、点呼の声を聴きながら。
机の下、膝の上に乗せた拳に、我知らず力を込めていた。
※おまけ※
「何や最近、以前にも増して無駄に喧嘩買わんようになったように思うけど、何かあったん?」
昼休み中の、屋上。
意味ありげな笑みを口の端に刻みながら、市丸先輩が俺に話しかけてきた。
内心ぎくりと心臓を凍りつかせながらも「別に、これと言って何も…」とシラを切る。
………おい、そこの赤毛と眼鏡!
聞こえないふりして、実はしっかり聴き耳立ててやがるのには、気付いてるからな!!
「ふうん?」
ニタリ…と。
まるで獲物を前にした蛇のように笑みを深め、「ほな、そういうことにしとこか」と、喉の奥をくつくつと鳴らしながら去っていく先輩。
「……絶対ぇ、知ってんだろ。井上のあれ」
小さく、舌打ちをひとつ。
そして大きく息を吸い込むと、背後を振り返りざま、悪友たちを怒鳴りつけた。
「だーかーら!!
聴き耳立てた挙句に、生温く微笑むのやめろ恋次!
石田も!! これ見逃しに、ため息吐くんじゃねぇよっ!!!」
……終わっとく。