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【未来の教え子】
初出:2021.04.29







「………なんて言うか…見事なまでに、うまく混ざってるわね」

思わずつぶやいた私の言葉、に。
幼馴染は少しムッとしたような顔をし、親友は苦笑に近い笑みを浮かべた。

まるでひよこの羽のような、ふわふわの明るい色の髪。
その色は一護譲りに間違いないけど、髪質はどう見ても織姫のものだ。
目尻の垂れ具合も、一護に似ている。
けれど、目、そのものの顔面における面積割合だとか、瞳の大きさは織姫譲り。

要するに、パッと見には一護にそっくりなんだけど、要所要所は確実に織姫のパーツなのだ。

「……まぁ…でもこれで、変なこと言い出す馬鹿は居なくなるでしょうよ」

もともと顔立ちは悪くない上に、ユーハバッハとやらを倒した後から眉間に皺を寄せることの減った一護は、大学でも就職先でも、割と良くモテたらしい。
だから二人が結婚した時、高校時代から二人を知る私たちは手放しで祝福をしたけれど、付き合いの浅い連中の中には、織姫にあらぬ疑いをかける輩も居たのだ。
その疑い自体、本気でそう思っていたというよりは、織姫への嫉みややっかみが言わせたものだろうけれど。

だけど…この赤ん坊の顔を見たら、奴らだってきっと、もう何も言えやしない。
そのくらい、赤ん坊は二人の、二人足らしめる容姿の特徴を、過不足なく併せ持っていた。

「名前は、予定通りに?」
「ああ、そのつもりだ」

明日、役所に届け出に行くつもりだ…そう言いながら、一護が腕の中の赤ん坊の頬をそっと親指で撫でる。
首の座らない、くてくてとした、ちいさなちいさな新生児。
その抱き方が意外としっかり様になっているのは、かつて双子ちゃんたちをあやした経験からだろうか。
何にせよ、わずかな間にすっかり父親らしい表情が板についた姿は頼もしく、一方で、益々手の届かない遠い場所に行ってしまったような…そんな一抹の寂しさが、一瞬、心の片隅を隙間風のように過ぎっていった。

「かずい…かずくん……もう少し大きくなったら、あんたもうちの道場においでね?」
「……随分、気が早ぇな」
「正式に継ぐと決めたからには、易々と潰すわけにはいかないもの。門下生集めの営業活動だって、大事な仕事でしょ」

苦笑する一護に、軽く肩をすくめてみせる。

「頑張ってね、たつきちゃん。一護くんが通い始めたのと同じ年頃になったら、きっと連れて行くから」
「うん、待ってる!」

にっ…と口の端を釣り上げ不敵に笑えば、織姫の瞳が柔らかく細まった。
その微笑みに込められた励ましと信頼に、心がほわり…と温かくなる。





変わっていくものがあって。
失われていくものもあって。

だけど……。

変わらないものがあって。
新たに加わるものもある。

たくさんの終わりと始まりを繰り返しながら、あたしたちは生きていく。



ばいばい、あたしの泣き虫一護。
そして――。
ようこそ、あたしの未来の教え子さん。



そんな心の声が聞こえたはずもないだろうに。
ふ…と顔を上げた一護が、あたしに向かって穏やかに笑う。
その腕の中で、は。
一勇が未だ見えないはずの目を、真っ直ぐにあたしに向けていた。










終
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