log:petits fours
【蜂蜜色の瞳に映りしもの、は】
(初出:2019.8.3 よもやま)
side:織姫
色素の薄い黒崎君の瞳に光が入ると、それはそれは綺麗なトパーズ色になる。
強い意志の力に溢れる瞳は、いつもは闇に輝く獅子のそれのような鋭さを持っているのだけれど、時折ふ…と眼差しが和らぐことあって。
そんなときはまるで、とろりと甘い蜂蜜のようだなぁ…なんて、思ったりする。
「そんなことを言うのは、あんたくらいのもんよ」
たつきちゃんは、そう言って笑うけれど。
私はいつだって、不安なのだ。
今は黒崎君を「不良っぽいから」と言って警戒している女の子たちが、あの、瞳の奥底に隠れている甘い光に気づいてしまったら……黒崎君のことを、放っておかないのではないのかしら…って。
不良だなんて誤解が解けて、黒崎君が皆から好かれるようになったなら、それは素直に嬉しい。
でも…もし黒崎君が、あの甘い瞳を向ける相手をたった一人、私ではない誰かに決めてしまったら……?
そんなことを考えると、とても胸が苦しくなってしまう。
孤独な彼が、魂の片割れとも言える相手を見つけることが出来たなら、「仲間として」は、心から喜ぶべきことなのだけれども。
「………大好き、だよ」
何やら大声で言い争いながら、土手を歩いていく黒崎君と朽木さん。
二人から少し遅れて歩く私がぼつり…こぼした言葉は、風に巻き上げられ、黄昏色の空の彼方へと消えていった。
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side:ルキア&恋次
「……何時になったら、阿奴は自覚するのであろうな」
「ぁあ? 一体何の話だ、ルキア」
苦笑混じりにこぼした、私の呟きに。
隣で鯛焼きに囓りついていた恋次が、口をもごもごと動かしながら首を傾げた。
「阿奴…ってことは、一護のことか?」
「ああ」
頷いて、再び苦笑を漏らす。
ますます怪訝そうに眉根を寄せた恋次だったが、井上に関することだ…と言葉を続ければ、途端に何処かうんざりしたような表情になった。
「他のことはともかく、こと色恋に関しては、朴念仁とか唐変木という言葉が服着て歩いているようなモンだからな、あいつは。
それでいて、井上に対する庇護欲っつーか独占欲つーか…は周囲がドン引くほどダダ漏れだから、始末に負えねぇ」
「全くだ」
恋次の言うとおり、一護の井上に対する過保護っぷりは、傍目から見てもいささか度が過ぎていて。
それこそ、時折ちら…と井上相手に浮かべてみせる微笑み、そのときの奴の目の色といったら…まるで黄金色の蜂蜜のように、とろりと甘いのだ。
「……でもよぉ、ルキア。
あの二人がもたくらもたくらとして、ちっとも関係が進展しねぇのには、井上の鈍さも一役買ってると思うぜ」
「うむ……」
そこは正直、私も否定できない。
井上は本来、人の心の細かな機微を敏感に察知する利発な娘であるはずなのだが、こと自分に関することのみ、時折異常に察しが悪くなるのだ。
「……割れ鍋に綴じ蓋…とは、よく言ったものだがな」
「ああ、良くも悪くも…な」
再び恋次と顔を見合わせ、苦笑を交わしたのち、どちらともなく深いため息を吐く。
「まぁ…いつか良い機会があれば、俺から、奴の背中を一発どやしておいてやるさ」
そう、呟いて。
隣を歩く赤毛の大男は、鯛焼きのしっぽの部分を、ほいっ…と口の中に放り込んだ。
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side:竜貴
一護の瞳の色が、時折蜂蜜のように甘くなる…そう主張する織姫に、私が返した「そんなこと言うのは、あんたくらい」という言葉。
ここには、二つの意味があった。
一つは、言葉通りの意味。
もう一つは…そもそも妹ちゃんたち以外に一護があんなに甘い視線を送るのは、織姫しかいないのだ…ということ。
自覚のない幼馴染と、自覚のできない親友と。
二人の心が重なる日が来ることが、待ち遠しくもあり、ほんの少し不安でもある。
ねぇ、二人とも…忘れないでいて。
あんたたちが例えどんなに甘い蜂蜜のような関係を築こうと。
大切なツレと、大切な親友…そのポジションだけは、この先もずっと、他の誰にも…たとえあんたたち2人にだって、あたしは譲ったりしないんだからね…!
終