log:petits fours



【二次元サファリパーク】
(初出:2019.6.17 よもやま)







先月の母の日、お義母様に…とカーネーションを用意したら、お義父様はご家族の誰よりも喜んでくださった。
その姿を見て、父の日には必ず、お義父様に何かしらのプレゼントを差し上げようと心に決めていた。

料理やケーキの類は、きっと遊子ちゃんがとびきり美味しいものを作るだろうと予想できたし、夏梨ちゃんと一護君が「美味しいお酒でも取り寄せようか」と話していたのを耳にしている。
では、私は…と考えて。
勿論お花だってお義父様はきっと大喜びしてくださるだろうけれど、どうせなら日常に使っていただけるものを差し上げたいという気持ちが強くあり、結果、手芸の腕を活かすことにした。

仕事や家事の合間に針と手を動かすこと、約一ヶ月。
ささやかな宴の席で私が差し出した包み、それをお義父様が開いた途端、お義父様だけでなく、遊子ちゃんと夏梨ちゃんの口からも感嘆の声が上がった。
それを聞いて、ホッと胸を撫で下ろす私。

お贈りしたのは、市販の白衣にアップリケと刺繍を施したもの、二着。
一着はサバンナの風景と動物たち。フェルト製のライオンと象のワッペンは、その日の気分で好きなところに付けられる。
もう一着は、海の中の風景。胸ポケットからのぞいているのは潜水艦の上部と望遠鏡で、こちらのワッペンは鯨とイルカだ。

日頃気さくでユーモア溢れるお義父様は、診療室に居るときも同様で、椅子にふんぞり返って上から物を言ったりなどなさらない。
患者さんやその家族の心に寄り添って親身に診療されるから、ご近所の子供達や若い父母の間では、特に人気のあるお医者様なのだ。
だから、ただでさえ体調が悪くて不機嫌な子供達や、不安でいっぱいの付き添いの家族が、少しでも心を和ませてくれたなら。
泣く子が笑顔になって、会話の糸口を掴むきっかけにでもなれたら。
そんな考えから、白衣に手を加えることを思いついたのだ。

「いやぁ、可愛いねぇ…! 小さな患者さんたちが、きっと大喜びするよ!!」

強面の顔をくしゃくしゃに崩して、喜んでくださるお義父様。
早速に白衣を羽織り、ここがいいかな、いややっぱりこっちが良いかな?…などと、双子ちゃんたちと賑やかにワッペンの取り付け位置を検討し始めた姿に、自然に綻んで行く私の口元。
贈り物を渡せる家族が、出来たこと。その幸せを、あらためて胸の奥で噛みしめる。

ふと視線を感じて首を巡らせれば、隣に座る一護君が、少し不貞腐れたような顔をして私を見ていた。
視線が重なると慌てたように顔を背け、ばつが悪そうな表情でがしがしと頭を掻き始める。
その、どこか幼い一護君の様子に苦笑を零しながら、手芸店に並んでいた色とりどりの綺麗な布たちの記憶を、脳内のスクリーンに映し出した。

ひと月後に訪れる、一護君の誕生日。
愛しい愛しい旦那様には、何を作ってプレゼントしたら良いでしょうね……?








終
19/33ページ
スキ