log:petits fours
(初出:2016.1.17)
一護さんにとびつく大人ネルちゃんをみて呆然とする織姫さんに、茶渡君が「浦原さん、余計なことしやがって…と思ってるかもしれないけど」とツッコミを入れた件について。
そのときからずっと頭にあったネタを、形にしてみました。
ただ、こんな会話を交わしている余裕が当時あったのかは、ちょっと疑問。
なので、敵陣突入前に雪緒くんとリルカちゃんで、到達点の座標調整とかしていた…という設定をでっちあげております。
その点ご理解くださいませ。
※※アニメで見直したら、箱の外でこんな会話をする余裕全くなかったですね…申し訳ありません💦
言い訳させていただければ、子が単行本を自分の部屋に持っていってしまっていて、この辺りの数冊を初読以降ほぼ見直しできてないのです。
やっぱり自分用に全巻買い直さないとダメかなぁ。
愛蔵版出ないかなぁ…。
【いつもの君が好きだから】
「もう…茶渡くんってば、ひどいなぁ……」
口の中だけで呟きながら、もう何度目かもわからなくなった溜息を吐く。
『余計なことしやがって』
彼の口にした言葉が、ずきり…と心に突き刺さる。
そんなことは、思っていないの。
そこまでのこと、は。
だのに……。
「参ったなぁ…まさか、そんなこと考える人間なのだと思われていたなんて……」
そりゃあ、嫉妬しなかったと言えば嘘になる。
……羨ましかったのは、本当。
あんな風に全身で再会の喜びを表して、躊躇なく抱きつける…その天真爛漫さが。
だって、私には決してできないことだから。
恥ずかしいとか、そういうことじゃなくて。
私なんかにそんなことされても、きっと迷惑だろう…私の心は、いつだってそんな恐怖と諦めに支配されているから。
例えどんなに彼に逢えたことが嬉しくとも、手も足も竦んで動けなくなってしまう。
石田君の矢から庇おうとして、全身全力で彼を押さえつけてしまったことだって。
それこそ「余計なことをした」と思われていたなららどうしよう…と、今更ながらに身体が震えそうになるのだから。
そもそも。
此処に来たことで、さえ。
もしも「足手まといが増えた」等と、内心で思われていたとしたら……?
………ああダメだ。
思考がどんどん、ネガティブになっていく。
「しっかりしなさい、織姫!」
ぺちぺちっと自分の頬を叩いて、自身に喝を入れる。
彼にどう思われていようと、構わない。
私は私の意思で、彼を護るためにここに居るのだ。
『どんな大怪我だって、必ず治してみせる』
以前リルカちゃんに対して、そう啖呵を切った。
その気持ちは、今、この時も変わらないこと。
護ってみせる。
きっと、護り通してみせるんだから……!
「……井上?」
「ひゃいっ?!」
背後から呼びかける声に、思わず跳び上がった。
「わ、わりぃ…驚かすつもりは、なかったんだけど……」
そろり…と振り返ってみれば。
そこに立っていたのは、バツが悪そうな顔をして頭を掻いている黒崎くん。
「ぁ……え、と…えへへ、ちょっと考えごとをしてて…。私こそ、変な声を出してごめんね?」
あはは…と。
引きつり気味に笑いながら、ぺこり…と頭を下げる。
「……リルカと雪緒が、調整が終わったから直ぐに発つ…ってよ」
行こう…と。
私を促しながら、黒崎君は踵を返して歩き出して。
私は慌てて、その後を小走りで追いかけた。
……ところが。
リルカちゃん達が乗ってきた“箱”のすぐ近くまで来たことろで、ふいに黒崎くんは立ち止まってしまった。
「……?」
二歩分の距離を置いた所で、私もまた立ち止まって。
訝しんで、首を傾げた……その直後だった。
「……似合わねぇとは、思ってないから」
「へ……?」
ぼそり…と呟かれた言葉に、間抜けな声をあげて。
その私の耳に、更に二段階くらい音量の落ちた彼の声が、服、と付け足す。
「え……? あ…ああ……!!」
漸く、今、私が身につけている、裏原さん作の衣服のことを言っているのだと理解して。
一瞬で顔に血を上らせながら、ぱたぱたと意味もなくスカートについた砂埃を払った。
「あ、あは……でも確かに、露出が多いよね…」
照れ隠しに口に出した言葉に、無言でこくり…と肯かれて。
あ、そこはやっぱり否定しないんだ…と、再度がっくりと頭と肩とを落とす。
だけど……。
「……あの、さ。
その服も、以前の破面っぽい服も、ルキア助けに行った時の死覇装の時もそうだけど……似合う似合わねぇじゃなくて、さ」
「うん……?」
「ガッコの、制服とか。
ふわっ…とした長めのスカート、とか。
現世での格好のほうが、ずっどずっと井上らしい…って………そう、思うから…」
「…っ、?!」
思わず、息が止まりそうになった。
……ああ、どうしよう!
あんまり嬉しくて、涙が出そうだよ……!!
「……行こう、井上」
顔半分だけ私を振り返った黒崎君が、微かな笑みを浮かべて再度私を促す。
その耳はかなり赤くなっていたけれど、指摘すると怒りそうだから、ここはぐっと我慢。
「行って、さっさと終わらせて……皆で、現世に帰ろうぜ?」
「……うん! そうだね、黒崎くん!!」
続く黒崎君の決意の籠った声に、言葉に。
私も笑顔で、力強く肯き返した。
きっと、帰ろうね。
黒崎君と私と、茶渡君と。
石田君も連れて、皆で。
黒崎君の家族やたつきちゃん達の待つ、あの空座の街へ……。
終