log:petits fours



【昼咲月見草 Side:*】
(初出:2014.5.21)










通学路の途中、ふんわりとした可愛い薄桃色の花が群生しているのをみかけた。
思わず立ち止まって見とれていたら、犬の散歩中だった初老の女性が、親切にも花の名前を教えてくれた。



昼咲月見草……と、言うのだそう。



昼休みに図書館に出向き、植物図鑑の解説文を読んでみた。
月見草と言っても、いわゆる夕方から夜にかけて一夜限り開花する待宵草とは違って。
昼の間から咲き出して、花も2,3日萎まない種類なのだという。





「………なんだか、私みたい」





自嘲気味に口の端を吊り上げながら、ひとりごちた。
夜の間だけでは飽き足らず、昼の間ですらもなお。
空を見上げ続け、ただひたすらに月を恋うているなんて。




その姿、の。
なんと愚かしく、哀れであることか……。





昼はおろか、夜でさえ。
きっと月は、気付きはしないのに。

遥か下界の、片隅で。
自分を恋い慕って咲く、小さな花の在ることなどは……。









重い足取りで教室に戻れば、窓に群がるクラスメイト達の姿。
何事かと近寄ってみれば、皆の視線の先には校庭でサッカーに興じる男子の姿があった。

そのなかでも一際目立つの、は。
満月の光を紡いだような、赤味を帯びた金の頭髪。
そしてその頭髪を靡かせて走る、すらりとした彼の姿。

颯爽と敵陣の間を走り抜けて。
それはそれは、見事なシュートを決める彼。
幼い子供のように笑いながら、友人たちとハイタッチを交わす姿に、私の周囲からも惜しみない拍手と歓声が上がる。

級友達に倣って、笑顔で手を叩きながら。
私は胸を締め付けるような切なさと苦しさに、必死で涙をこらえていた。




………ああ、どうしてこんなにも。
遠目に姿を見られただけで、心が躍るほどに嬉しくて。
泣きたいほどに愛しい……などと、感じてしまうのだろう。


この想いが、彼に届く……だ、なんて。
そんな事は、きっとありはしないのに……。

それでも「もしかしたら」と、一縷の望みを捨てきれない私、は。


なんて、愚かな………。












ふ……と視線を、空に向ける。

真っ青な晩春の空に、は。
半月が、白く朧げに浮かんでいた。









終
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