log:未来狂詩曲



【「絶妙のやわらかさ」なんだそうです】
(2015.12.14)







玄関は、開いていた。
父と母の靴も、あった。
でも…家の中は、人が居るとは思えないほど静かで。

訝しく思いながら廊下を進み、リビングの扉を開く。

ゆっくりと、室内を見渡して。
視線を掃出し窓へと向けたところで、思わず息が止まった。

そこにあったの、は。
窓越しの陽光を浴びながら、特大のビーズクッションに凭れて眠っている母と。
その母に凭れて眠っている、父の姿。
……しかも。
父の腕はがっちりと母の腰辺りに回されていた挙句、母の胸をまくら代わりにしているときている。
まるで、甘ったれの小さな男の子のように。


「……いい歳して何をやってるんだ、親父様…」


げんなりした気分で、独りごちる。
夫婦仲がよろしいのは大変結構なことだし、夜勤明けで父が相当疲れているであろうことも承知しているが、思春期ど真ん中を全力疾走中の娘にとっては、かなり目の毒な光景である。

……だいたい、母も母だ。
あんながっちり拘束されたうえに、胸を潰されているのだから、傍からみれば結構辛そうな態勢に見えるのに。
どうしてどうして、その顔に浮かぶ表情は至極穏やかで、幸せそうで…まるで甘い砂糖菓子を口に含んだまま眠ってしまった少女のようだ。


「ほんっと……破れ鍋に綴じ蓋、だよね」


すっかり眉間皺の消えた父の顔を眺めながら、ため息交じりに呟いて。
軽く肩を竦めたあと、そっと踵を返してリビングを出る。

とりあえず陽が落ちるまでは、このままそっとしておこう……。
そんなことを考えながら、音を立てぬよう静かにゆっくり戸を閉ざした。










終
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