log:未来狂詩曲



【置餌トラップ】
(初出:2013.11.23)










「……お・や・じ・さ・まっ♪」

休日の、朝。
居間のソファに腰かけて、珈琲を飲みつつ新聞を読んでいたら。
満面の笑みを湛えた咲良が、るんるんとした足取りで近寄ってきた。

反射的に、顔を顰める俺。

彼女が俺を「親父様」と呼ぶときは、大概がろくでもない用件の事が多いのだ。


「………何だ?」

上目使いに睨むようにして、問いかければ。
うふん……と、実に嬉しそうに笑った後で、「これ、なーんだ?!」と、娘は後ろ手に持っていたパッドを俺の眼前に差し出した。

「……っ?!」

画面一杯に映し出された画像に、思わず目を剥く。
あまりの驚愕に、うっかり気管に珈琲を流し込んでしまい、俺は盛大にむせ込んでしまった。

「さ……げほっ、さく、らっ……ごほごほっ…おま、一体なんつーものを………げふっ」
「我ながら、傑作よね~! いやぁ、いい写真だわぁ~♪」


得意気に胸を張りながら娘が眺めている、画像。
それ、は。
あろうことか、俺とヨメさんが、ポッ〇ーの両端をそれぞれ咥えている……要するに、ポ〇キーゲーム真っ最中のものだったのだ。



「あんなあからさまな置き餌トラップに、ひっかかる父さん達が悪いよ……」

ダイニングテーブルで朝も早よから勉学に励む息子が、ぼそりと呟く。
齢19にして異様に人間(いや、死神?)出来ている緋燕はと言えば、やはり参考書と向き合いつつ我関せずを決め込んでいる。





………そう…あれは、11日の夜の事。
残業を終えて深夜近くに帰宅したら、テーブルの上に喰いかけのポッ〇ーの箱が置いてあって。
出迎えてくれたヨメさんはと言えば、風呂上りでほっぺたが桃色に上気してて、実に美味しそ…いや、可愛いい状態だった事も手伝って。

ほぼ四半世紀振りにゲームしてみるか?……って。
つい、彼女を誘ってしまって……。





「………………//////」





恥ずかしいやら、してやられたことが悔しいやら……で。
顔を真っ赤にして俯き、頭を抱える俺の頭上から。
更に追い打ちをかけるように、娘がとんでも無いことを言いだした。

「このデータ……浦原さんとこに持っていったら、幾らで買い取ってくれるかなぁ?」
「さ、咲良ぁっ?!」

がばっと身を起こした俺に、にんまりと悪魔の微笑みを浮かべて。

「いちゃっプルしてる親父様たちのデータって、あっちでは結構高く売れるんだってねー♪」
「……咲良、お前っ?!」

狼狽える俺をしり目に、うふふ……と無駄に色っぽく微笑む娘。
なまじ外見は織姫の若い頃にそっくりだから、余計に始末が悪い。


「昨日からさぁ、〇〇ショッピングモールで、クリスマスフェアが始まってるんだよねー。
私、お目当てのブーツとワンピースがあるんだけどぉ……」
「…………咲良…お前と言う娘は…っ!!」
「あ、父さん。俺も気になってるコートがあるんだ。
去年着てたのは、俺また身長伸びちゃったせいで着れそうにないし……。
そうそう、ひぃ兄と色違いでお揃いにしたいかなぁ……」
「え…別に、俺は………」
「やだなぁ…遠慮しないでよ、ひぃ兄。昨日広告見て、いいなぁ…って言ってたじゃん!」
「どんだけヤクザだ、お前等はっ?!」





思わず叫んでしまった、丁度その時。
朝一番で美容院に行っていたヨメさんが、帰宅して。

「随分、賑やかね! 何をそんなに盛り上がってるの…?」

それこそ、こちらは一点の邪気もない天使のような笑顔を浮かべ、居間へと入ってきた。

「おかえりなさい、母さん! 今日ねぇ、この後、父さんがショッピングモールに連れて行ってくれるって!」
「あら、そうなの?」
「私の服と、兄貴達のコートを新調してくれるってさ!
母さんもこの間、新しい手袋欲しいって言ってたよね、父さんにおねだりしちゃえば?」
「ええ?」

苦笑しながら俺の顔をみるヨメさんに、憮然として肩を竦めるしかない俺。

「で、ね? 母さん……ちょっとこれ、見て見て!!!」
「……なぁに?」
「ばっ…止めろ、咲良!!」


俺の静止など聞かない振りで、ヨメさんにパッドを差し出す咲良。
そこに映し出された画像を目にするなり、ヨメさんはぽんっと音がしそうな勢いで、真っ赤になった。

「さ…ささささ、さくらちゃんっ」
「はぁい?」
「こ、これ………後で、母さんの携帯に転送して、ついでに待ち受けに設定してぇーーっ!!!」
「あ、阿呆かぁぁあああっ、一体全体、何を言いだすんだ織姫ぇぇええええええっ!!!」
「一護! 織姫! 年末年始虚取締強化週間の前に一度ゆっくり…と思って、遊びに来てやったぞ!!
急だが、別に構わんよな?
呼び鈴をいくら押しても反応が無いので、勝手に入ってきてしまったが………む、こ…これは?!」
「げ……ル、ルキア…っ?!」
「うわぁ……これ、浦原さんトコ持ってったら、相当な値が付くんじゃねぇの?」
「現世女子高校生と同レベルの発想すんじゃねぇっ、恋次ぃいっ!!!」
「聞いて聞いて、ルキアちゃん! これ、後で咲良ちゃんに待ち受けにして貰おうと思ってーっ♪」
「だーかーら、それは止めろって、織姫ぇえええええっ!!!」
「相変わらず仲睦まじくて良いことだな、織姫……。
本当にそなたは、ヘタレ大王な一護の莫迦には勿体無くて……」
「どさくさに紛れて、何、人の悪口言ってやがる?!」
「……ヘタレは事実だろ。自分の気持ち自覚すんのに、2年もかかるか、普通」
「ぐ……っ!」












「あーあ、まるであっちが高校生みたいだね………いや、精々良いところ幼稚園児レベル…かな?」
「………全く」

顔を見合わせ、苦笑して。
蒼良と緋燕は、互いに肩を竦めた。











黒崎家の朝は、今日も賑やか………。



終

「ポッキ〇の日」と「いい夫婦(11/22)の日」小ネタ
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