log:1月31日 愛妻の日
【思春期息子の受難の夜】
(初出:2020.01.31)
「父さん、今年は何を買ってくるかな?」
「さぁ…」
超弩級の愛妻家である父は、「愛妻の日」に母さんへのプレゼントを欠かしたことがない。
ことり…と、少女のような仕草で小首を傾げた母さんは、父さんから貰えるものならなんだって嬉しいし、大切な宝物になるのだ…と微笑んだ。
「うわー、これは外れだ!…って思ったこととか、一度も無いの?」
「うん」
即答されてしまった。
しかも、光り輝くような満面の笑顔で。
まぁ…でも、そうなんだろうな…と、日頃の二人のあれやこれやを思い起こせば、納得するしかない。
だって…父さんは本当に、母さんを大切にしているから。
いつだって気にかけていて、どんなに小さな変化や異変も見逃すことはない。
よくいえば溺愛、悪くいえば過保護が過ぎるのだけど、母さんを知らない同級生たちに僕と二人でいるところを目撃されれば、翌日は「あの美人はどこの誰だ」と大騒ぎになる容姿なうえに、辛く苦しい時ほど「大丈夫」と微笑う芯の強さを持つ母さんだから、父さんがああなるのも仕方がないのかな…とは思う。
それは、母さんにとっての父さんについても、ほぼ同じなわけで……。
そんな二人の間に、相手への贈り物を選び違うなんて事故など、どうにも起こりようがないのだろう。
「あ…帰ってきたみたい!」
玄関方面から聞こえた物音(&霊圧感知)で父さんの帰宅を察した母さんが、リビングを小走りに出て行く。
僕は飲みかけのココアが入ったカップを手に席を立つと、そのまま自室へと戻ることにした。
「…いつまでも新婚のように仲が良いのはいいことなんだけど…」
流石に子供の目の前で致すようなことはないけれど、ドアを開けたらキスハグ真っ最中なんて程度のことなら、日常茶飯事だ。
家庭内別居なんてされるよりは断然マシだが、思春期の息子の目ってのも、多少は気にして欲しいところだ。
おそらくこのあと2時間くらいは、自室から出ない方が身のためだろうな……と。
小さなため息をひとつ零しながら、ドアノブに手をかけた。
終