log:1月31日 愛妻の日



【ピンクダイヤモンド】
(初出:2015.2.1)







ちょっとした用事があって、尸魂界に来ていて。
さて、現世に戻ろうか…と、一番近い門のある場所へと向かっていた時、花売りの子供から花束を買っている白哉と行き会った。

花なんか買って、一体何処に行く気だ…と、からかい半分に尋ねれば。
怪訝そうに眉根を寄せた白哉に、「兄こそ、手ぶらで奥方の元へと戻る気なのか?」と返された。

「今日は、現世では『愛妻の日』とされているのではなかったか?
ルキアがそのような事を話していたので、ならば妻の墓前に花でも…と思ったのだが」
「………あ」

しまった、すっかり忘れてた。

「兄も現世に戻ったら、花の一本、菓子のひとつも用意してから、帰宅するがよろしかろう」
「ああ、そうだな…そうするよ」

アドバイス、ありがとな…と微笑めば、白哉は相変わらず無表情なまま。
「礼には及ばぬ」とそっけなく呟き、俺に背を向け歩き出した。

黙って後ろ姿を見送っていると、数歩進んだところで白哉が顔半分だけ俺を振り返って。
どうかしたのかと軽く首を傾げた俺に、くれぐれも奥方を大切にな……と。

それは、白哉の口から出た言葉であるが故に。
他の誰に言われるよりも重く深く俺の心に響き、全身へと沁み渡っていく。

「言われなくとも」

自分でも決意を新たにしながら、そう答えれば。
淡雪のような微かな笑みが、白哉の口元に浮かんだ。

「子が生まれるのは、五月だったか?」
「ああ…その予定だ」
「兄も、さぞかし楽しみであろう」
「まぁ、な」
「家の中に幼き者が居るというのは、良いものだ。自然と皆の笑顔が増える。
肝をつぶしかける事も、時には起こるが……」

ふ…と、苦笑を漏らす白哉。
恐らくは緋燕がらみの何らかのハプニングを、思い出しているのだろう。
ルキアと恋次以上に、どうも緋真さんの面影が濃いようだ…と噂される緋燕のことを、白哉はことのほか可愛がっていると聞いていた。


「では、今日はこれにて…。引き留めて済まなかった」

そう言って、今度こそ立ち止まらずに去っていく後ろ姿を、見えなくなるまで見送って。
俺もまた、踵を返して走り出した。

現世へ、と。
大切な大切な、俺の伴侶の待つ場所へ……。








「ただいま、織姫」
「おかえりなさい、一護くん! ……わぁ、可愛いチューリップ!!」


終
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