Virus



「一勇、ちゃんと手を洗ってきた?」
「洗ったよー! うがいもしたー!!」
「それじゃあ、おやつを食べていいよ! あ…でもその前に、お祖母ちゃまと伯父さんに、ちゃんとご挨拶してね?」
「はぁい!」

橙色頭の幼い男の子が、とてとて…とリビングのサイドボードに近づいてきて。
小さな手を合わせると、神妙そうな顔つきで目を閉じた。

「おばーちゃん、おじちゃん、ただいま! 今日もお友達と、仲良く楽しく遊べたよ!! 今日も僕を護ってくれて、ありがとうございました!!!」

目を開けて、にっこりと微笑んで。
くるりと踵を返した男の子は、ダイニングテーブルへと向かって駆けていく。







サイドボードの上に、は。
古びて顔につぎはぎのある熊の縫いぐるみが、栗色の髪の女性の写真と、黒髪の男性の写真に並ぶようにして、ちょこん…と座っていた。











6/6ページ
スキ