全年齢
法事に向かう電車の中で柏木武彦は、ふと懐かしさを感じた。子供の頃に使ったことのある路線だから、という訳ではない。何か、もっと古い記憶を刺激されるような感触である。小学校の頃の親友。みんなの憧れだった幼稚園の先生。記憶を遡るが、これといって当てはまるものは見つからない。
どこからか甘い匂いが漂ってくる。
肺を患った祖父が亡くなったのは、武彦が小学生の頃だった。祖父母の家には、毎年お盆とお正月に遊びに行っていた。その家に、今は伯母夫婦が住んでいる。夕方からの法事の前に顔を出す。お線香を上げた後、祖父が使っていた書斎に入った。
机の上のパイプ。武彦の鼻腔に、祖父が纏う甘い匂いがよみがえってきた。
どこからか甘い匂いが漂ってくる。
肺を患った祖父が亡くなったのは、武彦が小学生の頃だった。祖父母の家には、毎年お盆とお正月に遊びに行っていた。その家に、今は伯母夫婦が住んでいる。夕方からの法事の前に顔を出す。お線香を上げた後、祖父が使っていた書斎に入った。
机の上のパイプ。武彦の鼻腔に、祖父が纏う甘い匂いがよみがえってきた。