R15

 アパートの窓を開け、少しだけ張り出した柵にもたれる。ギシっと鳴った。構わず煙草を咥えて火を付ける。火照った身体に夜風が心地よい。風に流される煙を目で追う。
 このアパートは規則がうるさくない。【騒音】を注意されることもない。
 ただ、今夜の相手は黎明くろあきが煙草を吸うことを嫌がる。

 喫煙者には厳しい世の中。昼間は煙草の吸える喫茶店を探しあぐね、缶コーヒーを買って公園に行くとそこも禁煙。駅前に透明な板で囲まれた喫煙所があったなと思いだしたが、檻に入れられた動物のような気分になるのでやめた。

 頭を手すりに乗せるようにのけぞらせて紫煙を燻らせる。
 星が一つ、流れた。
 隣人はもう寝ているのだろうかと思った。
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