R15

 洗濯乾燥機の蓋を閉めて、硬貨を投入口へ落とす。エコバッグを把手に引っかけたところで、コインランドリーのドアが開いた。背の高い、細身の男が入ってくる。
 アパートの隣人。それ以上は知らない。
「よく此処で会いますね」
 通り過ぎようとした東雲に、隣人が声をかけてきた。
「そうですね」
 同じアパートに住んでいるとはいえ、親しくはない。
「ベランダがないとシーツが干しづらくて」
「忠実なんですね」
 東雲がそんな風に返す。
「貴方も」
 洗濯乾燥機のスイッチを入れた隣人が、振り返って笑んだ。
「僕と同じタイミングだ」
「それは、偶々」
「アパートの壁が薄くて困りますね」
 用事を済ませた隣人がすれ違いざま囁く。
「声、聞こえてるでしょう」
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