【ゴルトレ♀】遭難する話
事後、彼女の腕の中に私はいた。少し体を動かすと、砂浜にシートがわりに敷いてある大きな葉がかさりと音を立てた。
「ねえ、ゴルシ。なんでこんなこと……」
私に腕枕をしながらぼうっと空を見上げる彼女に、わたしはそう問いかけた。
「まだ気づかねーのか」
えっ? という私の声に、彼女は続けた。
「そんなの、好きなやつが隣で、しかもアタシにひっついてんだ。我慢できなくなっちまったんだよ」
「好きなやつ……?」
いきなり出てきた予想外の単語。私は思わず復唱してしまった。
「あんたのことだよ。アタシは、トレーナーのことがずっと好きだったんだぜ」
ゴルシは照れることもなく、あっさりとそう告げた。
「えっ……それって告白……?」
そうだよ、という短い返事。波の音が、私たちの間に流れた沈黙をかき消した。
「ごめん、アタシ本当はあんたと二人きりになりたくてわざとこの島に連れて来たんだ。食べ物も水も初めからあるのをわかってた。」
申し訳なさそうに彼女は続ける。
「帽子の発信器のことも知ってたんだよ。誰も来ないように、わざと電源は切ってあるんだ。誰にも、邪魔されたくなかったから」
「ふたりで一週間くらい過ごせたらいいな、なんて軽く考えてたんだ。でもあんたを不安にさせて、しまいには襲っちまってさ。ほんと、ごめん。こんなアタシなんて、嫌いだよな」
そう言うと彼女は立ち上がり、私から脱がせた服たちを、こちらに投げてよこした。
「馬鹿だよな、アタシ。こんなことしなけりゃ良かった。そしたら、アンタはずっとアタシのトレーナーでいてくれたのになぁ」
そう言って笑うゴルシの目から、ぽろぽろと涙が溢れている。
「帰り道はこっち。本当に悪かったな、トレーナー。学園に着いたら、アタシとの契約はもう解除してくれて構わない。それだけのことをアタシはやっちまったんだ」
私に背を向けたまま、彼女は歩き出した。島だと思い込んでいたこの場所は、本土に繋がっていたらしい。
「契約解除なんて、しない」
私の一言に、彼女は歩を止めてこちらへ振り返った。いくつもこぼれ落ちた涙のせいで、彼女の瞼は濡れていた。
「確かに、あなたがしたことがいいことだとは言えない。遭難したと思っていた私はとても不安になった。でもね、私、あなたに抱かれて嬉しかった。ずっと、望んでいたことだから」
ずっと胸の奥に仕舞い込んでいた気持ちが一気に溢れ出る。
「あなたのことが、好きなの。一緒に時間を過ごすうちに、いつの間にか好きになってた」
「それって、マジか……?」
そう恐る恐る訪ねたゴルシに、私は答えた。
「ほんとうに、あなたのことが好き」
気がつくと、私は彼女に強く抱きしめられていた。ごめん、ごめんと何度も謝るゴルシの頭を優しく撫でる。
「トレーナーとしてもあなたを支えたい。だから、今は付き合えないけれど……あなたが卒業したら」
言い終える前に、唇が塞がれた。
「わかった、待っててくれ。学校なんて、ぱぱーっと卒業しちまうからよ」
そう元気に言い放つと、彼女は私を抱きしめていた腕を離した。
「ごめん。帰ろうぜ、トレーナー」
そして、いつもの距離感で二人歩き出す。私たちはまだ、トレーナーと担当ウマ娘。
でも、もうすぐ。彼女が学園を出て大人になったとき、私たちは恋人同士になるのだろう。
「ねえ、ゴルシ。なんでこんなこと……」
私に腕枕をしながらぼうっと空を見上げる彼女に、わたしはそう問いかけた。
「まだ気づかねーのか」
えっ? という私の声に、彼女は続けた。
「そんなの、好きなやつが隣で、しかもアタシにひっついてんだ。我慢できなくなっちまったんだよ」
「好きなやつ……?」
いきなり出てきた予想外の単語。私は思わず復唱してしまった。
「あんたのことだよ。アタシは、トレーナーのことがずっと好きだったんだぜ」
ゴルシは照れることもなく、あっさりとそう告げた。
「えっ……それって告白……?」
そうだよ、という短い返事。波の音が、私たちの間に流れた沈黙をかき消した。
「ごめん、アタシ本当はあんたと二人きりになりたくてわざとこの島に連れて来たんだ。食べ物も水も初めからあるのをわかってた。」
申し訳なさそうに彼女は続ける。
「帽子の発信器のことも知ってたんだよ。誰も来ないように、わざと電源は切ってあるんだ。誰にも、邪魔されたくなかったから」
「ふたりで一週間くらい過ごせたらいいな、なんて軽く考えてたんだ。でもあんたを不安にさせて、しまいには襲っちまってさ。ほんと、ごめん。こんなアタシなんて、嫌いだよな」
そう言うと彼女は立ち上がり、私から脱がせた服たちを、こちらに投げてよこした。
「馬鹿だよな、アタシ。こんなことしなけりゃ良かった。そしたら、アンタはずっとアタシのトレーナーでいてくれたのになぁ」
そう言って笑うゴルシの目から、ぽろぽろと涙が溢れている。
「帰り道はこっち。本当に悪かったな、トレーナー。学園に着いたら、アタシとの契約はもう解除してくれて構わない。それだけのことをアタシはやっちまったんだ」
私に背を向けたまま、彼女は歩き出した。島だと思い込んでいたこの場所は、本土に繋がっていたらしい。
「契約解除なんて、しない」
私の一言に、彼女は歩を止めてこちらへ振り返った。いくつもこぼれ落ちた涙のせいで、彼女の瞼は濡れていた。
「確かに、あなたがしたことがいいことだとは言えない。遭難したと思っていた私はとても不安になった。でもね、私、あなたに抱かれて嬉しかった。ずっと、望んでいたことだから」
ずっと胸の奥に仕舞い込んでいた気持ちが一気に溢れ出る。
「あなたのことが、好きなの。一緒に時間を過ごすうちに、いつの間にか好きになってた」
「それって、マジか……?」
そう恐る恐る訪ねたゴルシに、私は答えた。
「ほんとうに、あなたのことが好き」
気がつくと、私は彼女に強く抱きしめられていた。ごめん、ごめんと何度も謝るゴルシの頭を優しく撫でる。
「トレーナーとしてもあなたを支えたい。だから、今は付き合えないけれど……あなたが卒業したら」
言い終える前に、唇が塞がれた。
「わかった、待っててくれ。学校なんて、ぱぱーっと卒業しちまうからよ」
そう元気に言い放つと、彼女は私を抱きしめていた腕を離した。
「ごめん。帰ろうぜ、トレーナー」
そして、いつもの距離感で二人歩き出す。私たちはまだ、トレーナーと担当ウマ娘。
でも、もうすぐ。彼女が学園を出て大人になったとき、私たちは恋人同士になるのだろう。
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