【ゴルトレ♀】こんなに愛したのは
「ごめんね、私……そういう経験ゼロで……」
トレーナーと付き合いだして数ヶ月。そりゃまぁアタシだってお年頃のウマ娘ちゃんですし、好きな子目の前にしていつまでもただのいい子ちゃんを演じてもいられないわけで。
なんやかんや理由をつけて外泊許可証をもぎ取り、担当トレーナー兼恋人のコイツを連れてラブホまでやってきたわけだ。
「ちぇっく、いん……?」
もういい歳した大人のくせに、やたらフロントでおどおどしやがるから、年確されるんじゃないかとアタシの方が焦ってしまった。
初めて手を繋いだりキスしたときから薄々感じてはいたけれど、どうやら彼女は処女らしい。
「ゴルシちゃんは、その……手慣れてると言うかなんと言うか……」
トレーナーは微妙な顔をしながらアタシを覗き込んでくる。
「まぁ、人並みにな」
ここで嘘をつくのはかえってコイツを傷つけると思ったアタシは、本当のことを彼女に伝えた。ちょうどそのタイミングでエレベーターがやってきた。
「そっか、うん。そうだよね……ゴルシちゃんは綺麗で可愛くてかっこよくて……」
トレーナーは目的の階についても、地面に視線を落としたままアタシの後をついてくる。
「どーした、トレーナー。アンタ変だぞ」
アタシの問いかけに彼女はなんでもないの一点張りで、意地でも理由を話さなかった。
部屋で2人並んで、ルームサービスのジュースを飲む。あの会話以降、トレーナーはほとんど口を開いていなかった。
「やっぱし嫌か? アタシとそういうことすんのは。そりゃそうだよな、女同士ってだけでハードル爆上げ……」
「ううん、違うの」
彼女はようやくその重い口を開いた。
「ゴルシちゃんのことは大好きだし、ひとつになりたい。だけど、今まであなたと重なってきた人たちが羨ましくて、妬ましくて……」
あはは、と無理に浮かべた笑顔が痛々しくて、アタシは思わず目を逸らしてしまった。
「ここまでマジになったのは、アンタが初めてだよ」
うん、と頷いた彼女はやはり苦しそうで、アタシは、コイツ以外共にした夜を思い出して、生まれて初めて本気の後悔をした。こんな言い訳めいたセリフで、コイツの心が癒えるわけがない、そうわかっても、ほかにかける言葉が見つからなかった。
マジで愛する人を、傷つけてんじゃねー! と、過去のアタシを引っ叩いてやりたいくらい、アタシは後悔した。
無駄にギラギラとして悪趣味なホテルの壁を見つめたまま、彼女は動かなかった。
窓のない、閉塞感のある部屋にはアタシとトレーナーしかいない。
アタシは自分と彼女の苦しい気持ちに蓋をしたくて、そっとトレーナーに唇を重ねた。
「私たちのぜんぶが、はじめてだったらよかったのにね」
彼女の呟きに、アタシは何も返事をすることができなかった。
トレーナーと付き合いだして数ヶ月。そりゃまぁアタシだってお年頃のウマ娘ちゃんですし、好きな子目の前にしていつまでもただのいい子ちゃんを演じてもいられないわけで。
なんやかんや理由をつけて外泊許可証をもぎ取り、担当トレーナー兼恋人のコイツを連れてラブホまでやってきたわけだ。
「ちぇっく、いん……?」
もういい歳した大人のくせに、やたらフロントでおどおどしやがるから、年確されるんじゃないかとアタシの方が焦ってしまった。
初めて手を繋いだりキスしたときから薄々感じてはいたけれど、どうやら彼女は処女らしい。
「ゴルシちゃんは、その……手慣れてると言うかなんと言うか……」
トレーナーは微妙な顔をしながらアタシを覗き込んでくる。
「まぁ、人並みにな」
ここで嘘をつくのはかえってコイツを傷つけると思ったアタシは、本当のことを彼女に伝えた。ちょうどそのタイミングでエレベーターがやってきた。
「そっか、うん。そうだよね……ゴルシちゃんは綺麗で可愛くてかっこよくて……」
トレーナーは目的の階についても、地面に視線を落としたままアタシの後をついてくる。
「どーした、トレーナー。アンタ変だぞ」
アタシの問いかけに彼女はなんでもないの一点張りで、意地でも理由を話さなかった。
部屋で2人並んで、ルームサービスのジュースを飲む。あの会話以降、トレーナーはほとんど口を開いていなかった。
「やっぱし嫌か? アタシとそういうことすんのは。そりゃそうだよな、女同士ってだけでハードル爆上げ……」
「ううん、違うの」
彼女はようやくその重い口を開いた。
「ゴルシちゃんのことは大好きだし、ひとつになりたい。だけど、今まであなたと重なってきた人たちが羨ましくて、妬ましくて……」
あはは、と無理に浮かべた笑顔が痛々しくて、アタシは思わず目を逸らしてしまった。
「ここまでマジになったのは、アンタが初めてだよ」
うん、と頷いた彼女はやはり苦しそうで、アタシは、コイツ以外共にした夜を思い出して、生まれて初めて本気の後悔をした。こんな言い訳めいたセリフで、コイツの心が癒えるわけがない、そうわかっても、ほかにかける言葉が見つからなかった。
マジで愛する人を、傷つけてんじゃねー! と、過去のアタシを引っ叩いてやりたいくらい、アタシは後悔した。
無駄にギラギラとして悪趣味なホテルの壁を見つめたまま、彼女は動かなかった。
窓のない、閉塞感のある部屋にはアタシとトレーナーしかいない。
アタシは自分と彼女の苦しい気持ちに蓋をしたくて、そっとトレーナーに唇を重ねた。
「私たちのぜんぶが、はじめてだったらよかったのにね」
彼女の呟きに、アタシは何も返事をすることができなかった。
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