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前回のあらすじ
ヴィンセントには好きな人がいた -
ヴィンセント
ルクレツィア・クレシェント
学科は違ったが同じサークルに所属していて仲が良かった -
ヴィンセント
科学に対する情熱に燃えていてその道に真っ直ぐだった美しい彼女に私はいつしか惹かれていった
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ユフィ
告白とかしたの?
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ヴィンセント
ああ
上手くいったらお前との婚約を解消してもらおうと考えていた
すまない -
ユフィ
い、いいよ!
それは全然悪くないよ!
それで?
その後は? -
ヴィンセント
勿論断られた
私は良き友人程度にしか思われていなかったらしい -
そう語るヴィンセントの表情は穏やかで、すっかり吹っ切れたという雰囲気に溢れていた
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ユフィ
その後はもう距離が出来て全然話せなかった感じ?
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ヴィンセント
いや、今までと変わらず接してくれた
勿論友人としてだがそこに不満などない
この結婚報告のハガキも友人として純粋に報告してくれたのだと思う -
ユフィ
ふーん・・・
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ヴィンセント
ただ、まさか宝条と結婚したとはな
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ユフィ
この男の人?
この人も知り合い? -
ヴィンセント
ルクレツィアと同じ学科にいた変わり者だ
私はあまりこの男の事が好きではなかった -
ユフィ
嫌な奴だったの?
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ヴィンセント
少なくとも私は最後まで好きになる事も理解する事も出来なかったし、したくなかった
そしてあろう事かこの男もルクレツィアの事が好きだった -
ユフィ
はっはーん、恋のライバルだった訳か
でもこのルクレツィアって人はそんな男のどこが良かったんだろうね? -
ヴィンセント
同じ科学の道を志す者同士、通じ合うものがあったらしい
議論を重ねて熱く語っている姿をよく見かけた -
ユフィ
ふーん
で、ヴィンセントはヤキモチ焼いてたけど話に入り込めないから遠くから眺めるしか出来なかった訳だ -
ヴィンセント
フッ、痛い所を突いてくるな
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ユフィ
今でもこのルクレツィアって人の事、好きなの?
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ヴィンセント
好きだったら今こうしてお前と一緒に暮らしてない
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ヴィンセント
そして、今回の同居に至るまで私がお前と顔を合わせてこなかったの理由の半分はこの大学時代の片想いがあったからだ
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ヴィンセント
玉砕するまでは親の決めた結婚など破棄するつもりでいた
玉砕した後は気持ちの整理がつくまで引き延ばしにしていた
傷心を理由に婚約に逃げてお前を都合が良いように利用してしまいそうだったから -
ヴィンセント
本当にすまない
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ユフィ
ヴィンセントが謝る事じゃないってば!
むしろちゃんと整理を付けようとしてて大人じゃん
誠意があるよ -
ユフィ
それにアタシだって何となく結婚に気乗りがしなくてワザと引き延ばししてたしさ
そこはお互い様だよ -
ヴィンセント
ユフィは今回の同居に至るまでに誰かと交際したり想いを寄せていた事は?
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ユフィ
ぜ~んぜん
あ、でもそれは決められた結婚があったからとかじゃなくて本当に単にいい人がいなかっただけだから -
ヴィンセント
ならいい
私との結婚の所為で遠慮していたら悪かったからな -
ユフィ
そこは気にしなくてもいいよ
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ヴィンセント
だが・・・お前はどうする?
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ユフィ
へ?
何が? -
ヴィンセント
このまま私と同居を続けるか?
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ヴィンセント
許嫁がいながら過去に他の女性に目を向けていた私と・・・
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ユフィ
でも昔の話でしょ?
そんなの婚約解消の理由にならないって! -
ユフィ
・・・ヴィンセントが解消したいなら話は別だけど、さ・・・
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ヴィンセント
・・・私は―――
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ユフィ
ストップ!!
たんま!! -
ヴィンセント
どうした?
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ユフィ
やっぱアタシの心の準備が出来てからでいい?
あぁでも今すぐ解消したいっていうんなら・・・でもやっぱ・・・ -
ヴィンセント
いや、お前の心の準備が出来てからで構わない
私はいくらでも待ち続けよう -
ユフィ
・・・うん、ありがと
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ユフィ
じゃあ、この話はこれでおしまい!
アタシ今日はもう疲れたから部屋行くね! -
ヴィンセント
ああ
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タッタッタッ・・・バタン
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ユフィ
はぁ・・・
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ユフィ
美しい彼女、ルクレツィアかぁ・・・
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