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ユフィ
この島も後五日で終わりだね
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ヴィンセント
寂しいか?
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ユフィ
ん~、まぁ寂しいと言えば寂しいかな?
でも不便な事も沢山あるからやっぱり帰りたいかな~
ヴィンセントは? -
ヴィンセント
静かで悪くないがお前の言う通り不便な事が多い
だから私も早く帰りたい -
ユフィ
やっぱそーだよね!
んじゃぁさ、帰る前になんかこの島に遺していこうよ! -
ヴィンセント
何を?
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ユフィ
アタシたちがこの島にいたっていう証だよ!
次に来た人がその証を見て安心出来るようにさ! -
ヴィンセント
なるほど、悪くない考えだ
それで?
何を遺すんだ? -
ユフィ
そこなんだよね~
何がいいと思う? -
ヴィンセント
私に聞かれても困る
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ユフィ
何にしようかな~
壁画掘るとか? -
ヴィンセント
とても五日の間に出来るとは思えないが
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ユフィ
そ~んな古代象形文字を使った壁画じゃなくて簡単なのでいいんだよ
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ヴィンセント
例えば?
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ユフィ
相合傘とか?
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ヴィンセント
・・・
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ユフィ
痛々しい目でアタシを見るのやめろ!
冗談に決まってるじゃん!! -
ヴィンセント
勿論お前の事は愛しているがそのような形で残すのは賛同出来ないな
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ユフィ
分かってるってば!
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ユフィ
じゃぁアタシたちのトレードマークを掘るのとかは?
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ヴィンセント
私とお前のトレードマークは何だ?
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ユフィ
ヴィンセントはケルベロスでアタシはリヴァイアサンかな~
それかこの大型手裏剣 -
ヴィンセント
だが掘った壁が風化して表面が見えなくなったり崩れたりしたらそれまでじゃないか?
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ユフィ
ん~確かに
手っ取り早いと思ったんだけどな~ -
ヴィンセント
掘るのもそれなりに時間がかかるしな
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ユフィ
モーグリたちに伝えていってもらうとか?
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ヴィンセント
タイミングが遅いな
キングベヒーモスを倒した時に伝えるように言えば効果的だったかもしれん -
ユフィ
言われてみれば・・・
三つの種族と二人の人間が協力した証としてって感じで -
ヴィンセント
上手く行けば伝説として、それこそ千年前の男女のように言い伝えられた可能性があったな
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ユフィ
あ~あ、やっちゃったな
モーグリたち、本とか作ってくれてないかな? -
ヴィンセント
聞きに行くのは憚れるな
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ユフィ
自己主張激しすぎ―ってね
これはモーグリたちに期待かなぁ -
ユフィ
じゃ、なんか道具を遺すとか?
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ヴィンセント
私が温泉を掘った時に使ったピッケルならモーグリが持って行ったが
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ユフィ
伝わるっちゃ伝わるかもだけどインパクトが小さいな~
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ヴィンセント
食文化を伝えようかとも思ったがかなり限度があるな
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ユフィ
どの種族も人間の食べる物を食べないしそもそも人間の食べ物なんてそんなにないし
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ヴィンセント
後は遺せてそこの天然温泉くらいだな
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ユフィ
温泉か~・・あ、そーだ!
ここを癒しの秘境にするのはどうかな!? -
ヴィンセント
癒しの秘境?
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ユフィ
そ!
ゲームとかでよくある癒しスポットだよ!
回復出来る泉や温泉があって冒険に役立つお宝があんの!
で、次に来た人がモーグリとかに聞いてここにアタシたちが住んでたって事を知るんだよ -
ヴィンセント
誰かを癒すものを遺す、か・・・悪くないな
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ユフィ
でしょでしょ!
んじゃ、まず手始めにいらない物を・・・ -
ヴィンセント
待て
お前のいらない物を詰めようとするな -
ユフィ
未来の人が必要とするかもしれないじゃん!
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ヴィンセント
今のお前がいらない物を未来の者が必要とする事はないと断言する
分かったら大人しくモーグリに引き取り処分をしてもらえ -
ユフィ
え~?
でもそれしたらモーグリに手数料払わなくちゃいけないじゃ~ん -
ヴィンセント
未来への宝集めのついでに回収するぞ
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ユフィ
へ~い
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そして洞窟
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ユフィ
えーっと
手数料は鉄でいっか
後は石炭と銅を適当に採っておいてっと -
ヴィンセント
偶然にも青のクリスタルが見つかったぞ
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ユフィ
んじゃ、それもオマケで~
後はもうこんなもんでいいんじゃない? -
ヴィンセント
いや、待て
ここの土壁が少し気になる -
ユフィ
気になるって?
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ヴィンセント
奥に空洞があるみたいなんだが
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ユフィ
もしかしてお宝!?
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ヴィンセント
ただの空洞の可能性もある
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ユフィ
お宝の可能性だって捨てきれないじゃん!
アタシも手伝うよ! -
ユフィはヴィンセントの隣に立つと同じようにピッケルを構えて土壁を掘り始めた
次々と掘られて積まれていく土と薄くなっていく壁
そして・・・ -
ズザァアアアアアアア
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ユフィ
あ!
壁が崩れた!! -
ヴィンセント
漸くだな
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ユフィ
さてさて!
ど~んなお宝が眠ってるか美少女鑑定士ユフィちゃんが・・・ -
ヴィンセント
・・・
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土壁の向こうに現れた物にユフィもヴィンセントも言葉を失くす
そしていたたまれない気持ちになった
何故なら土壁の向こうの空洞にあったのは、壁画に描かれていた男女であろう人間の石像があったからだ
しかも無駄にクオリティが高くて100%美化しているような代物だ -
ユフィ
・・・うわぁ・・・
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ヴィンセント
・・・・・・製作過程が目に浮かぶな
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ユフィ
女の人、絶対に胸ここまで大きくなかったよ
断言出来る -
ヴィンセント
あからさまに目が大きくて睫毛が長いのが逆に不自然だな
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ユフィ
男の方も絶対どっかしら盛ってるね
つか、どんな顔してこれ作ったんだろ・・・ -
ヴィンセント
今の私たちと同じように何かを遺そうとしたのかもしれんな
恐らくここは石像を作れる余裕のある場所だったが千年という長い年月を経て洞窟となり、こうして埋まっていたのだろう -
ヴィンセント
或いは単純に暇を持て余して作ったのか
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ユフィ
遺す物ってよく考えないとダメだね
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ヴィンセント
そうだな
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そして拠点
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ユフィ
最後に蓋を締めて都合よく双子の滝の裏にあった空洞に隠してこれでよし!
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ユフィ
やっぱ遺すなら実用的な物だよね!
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ヴィンセント
お前は何度か余計な物を入れようとしていたがな
それも私に関するものばかり
抜き取るのに苦労した -
ユフィ
未来にヴィンセントを宣伝しようとしただけなのにな~?
そりゃちょ~っと盛り過ぎてアイタタタ~な感じになっちゃったけど?
ぷっくく・・・! -
ヴィンセント
全く・・・まぁ、私も同じ事をしてやったがな
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ユフィ
えっ
-
ヴィンセント
お前が余所見をしている隙にお前の武勇伝を綴った紙を入れておいた
コルネオの手で磔にされたり、乗り物酔いが酷くて何度も倒れたり、前口上を述べた直後に足を滑らせて頭をぶつけたり -
ヴィンセント
詳細に書いておいたぞ
-
ユフィ
ふ、ふざけんな!!
何が武勇伝だよ!
今すぐ取り消せー! -
ヴィンセント
嫌だと言ったら?
-
ユフィ
力づくでもっかい蓋を開ける!
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ヴィンセント
させる訳にはいかんな
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ヴィンセントはひょいとユフィをお姫様抱っこするとそこからさっさと遠ざかってしまうのであった
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ユフィ
お~ろ~せ~!
-
ヴィンセント
今日はもう疲れた
寝るぞ -
ユフィ
は~な~せ~!
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ヴィンセントがメモに認めたもの
それにはこんな一言が書かれていた -
『私はこの島でユフィと過ごせて幸福であった ヴィンセント・ヴァレンタイン』
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