オムライス(ヴィンユフィ)

「おっまたせ~!ユフィちゃん特性ウータイ風オムレツだぞ~!」

昼のラッシュが終わり、客が捌けた午後のセブンスヘブン。
そこではユフィがティファに変わってヴィンセントにオムライスを振る舞っていた。
ウータイ独特の調味料が使われたオムライスはさっぱりとした香りを放っており、腹の虫を騒がせるには十分だった。
しかしウータイ料理の魅力はそれだけではない。
さっぱりとした香りとは想像もつかぬ程のコクの深い味がなんといっても魅力的で、ヴィンセントの好む味であった。
それをウータイ人であるユフィに振る舞ってもらうのは勿論嬉しい事なのだが、今現在一つだけ弊害が・・・。

「・・・これは何だ?」
「何ってハートだけど?」

何言ってんの?みたいな口調で告げられてヴィンセントは盛大に溜息を吐く。
少しだけ頭痛がするのは気の所為ではない筈だ。

「食べ物で遊ぶな」
「何だよ、オムライスに文字や絵を描くのは当たり前だろ~?」
「それは自分のオムライスの時に描け。私のオムライスに描くな」
「煩いな~。他ならぬこのユフィちゃんがハートを描いてやったんだぞ!むしろ感謝しろっ!ちょー激レアなんだから!!」
「私にはレアではないのは確かだな」
「なんだとー!?」

怒るユフィを他所にスプーンでハートの文字を塗り潰してオムライス全体に塗りたくる。
全く、ハートなどと何を考えているのやら。
いや、ユフィの事はよく知っているではないか。

(これは仕返しが必要だな)









別の日。

その日はヴィンセントの行きつけの喫茶店で仕事の打ち合わせをする用事があった。
ジュノンの賑やかな通りからは少し外れた所にある小さな喫茶店は知る人ぞ知る店で、一日の訪れる客は少ないものの固定客は多い。
なんともヴィンセントの好みが現れている店だと思いながらユフィはなるべく静かにカウンター席の端に座っているヴィンセントの隣に腰掛けた。

「よっ。待った?」
「そうでもない」
「んじゃ始める前に飲み物を―――」

「こちらをどうぞ」

ユフィがメニュー表を手に取る前にマスターがコーヒーの入った白いマグカップをユフィの前にコトリと出した。
しかしそれはただのコーヒーではなかった。
深い香りを放つコーヒーの表面にはミルクで描かれたラテアートなる物が施されていた。
それもハートの形の・・・。

「わ、ラテアート!マスター出来るの?」
「ええ、心得ております。チョコボやサボテンダー、トンベリなども描けますよ」
「へー。アタシのこれ、ハートを描いたのは何で?もしかしてアタシへのラブコール?アタシも罪作りだね~」
「いえ、それはヴィンセント様からのリクエストでございます」
「え・・・?」

思わぬ名前に悪戯な表情は消え失せ、反射的にヴィンセントの方を見る。
と、カウンターテーブルに頬杖をついて涼しい微笑みを浮かべるヴィンセントと目が合った。

「どうした?」

優しい紅の眼差しに胸がドキリと高なり、ユフィは言葉を失う。
何を言おうか言葉を探すが見当たらず、ただ口だけが音を伴わずパクパクと動く。
予想と期待通りの反応にヴィンセントの笑みは深くなった。

「さて、打ち合わせを始めるとしよう」

ユフィが打ち合わせに集中出来なかったのは言うまでもない。









END


(・ω・)。○(『スキボタン』の『スキ』に掛けてお互い直接『スキ』とは伝えないヴィンユフィを目指してみた)

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