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―――赦せなかった。自身より強い人間が居ると言う事実が。ただ、赦せなかったのだ。薄墨色に暴走と渦巻く波のよう、深い、深い海底、胸の底。冷たな暗い底へ埋まる感情は、いつしか自身すら気付かぬうちに、声となって感情の水面を揺らして居た。
『オレは赦せねえんだ。この世に、俺より強え奴が居るなんてな』
悔しかった。
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確かにこの眼で見た。表で名の知れた有名な格闘家をいとも
『戻りやしたー』
仕合会場へ脚を運んだ瞬間だった。山下が姿を現した途端、肌に触れる空気が変わったのは、恐らく気の
「おかえりなさい」
『……あれ、名前ちゃん、何処いんの』
「こら、“ちゃん”呼びは、やめなさい」
飽きれに似た声が、何処か籠もるよう事務所内へ響いている。ドアを開け見渡しても彼女の姿は見当たらない。―――“彼女”とは、山下商事に秘書として勤める女性である。見た目から 歳は案外変わらないとも思ったが、俺よりずっと歳上らしい。親しみを込め“ちゃん”呼びをするも、どうもちくちく叱られるので、この際、いっそ姐さん呼びにでもしたら良いだろうか。
「それより光我くん、帰って来てそうそう申し訳ないんだけれど、ちょっと手伝ってくれないかな」
『いや、だから何処いんのって、訊いて……』
―――瞬間、籠もる声の端を捉えた。そこは、ドアの死角となって居た給湯室。言葉の繋ぎが千切れたのは、安に驚きだけが理由ではない。眼の前に曝けた、明らかな動揺、明らかな刺激である。
『ちょ…、名前ちゃん、何やってんだよ』
「何って、見たら解るでしょう、電球交換してるのよ」
さも当たり前、と言わんばかり口にされては困る。危機感は
『………く、黒』
スカートからすらり飛び出した綺麗な脚。それは完全なる無意識である。視線はただ直線に、その白色の脚の隙間に釘付けになってしまうのだった。勿論、故意ではない、不可抗力だ。短いスカートを履いて高さのある椅子に上っていれば、そこを見上げるは必然。その必然の先に在るは、漢なら一度は憧れる夢、絶対領域。―――
「ごめんなさい、やっぱり上手く取り付けられないみたいなの、代わって貰える」
『あっ、馬鹿野郎、動くな』
「え、」
少しでもその脚の角度を変えてみろ、どんなサービスだ。スカートの隙間から黒色のショーツをこの眼に捉えている今。ただでさえ動揺から掌に汗をかいていると言うのに。これ以上丸見えになったりしたら、身の体温は上昇を続けるだろう。現に身体の芯はややに熱を帯びているのだ。どうにかして、早くその椅子から下ろさなければ。湧いた汗に比例して、心臓の躍動が早まっていく。
「ちょっと、歳上になんて言葉遣いするのよ」
『んな事言ってる場合か!』
「全くもう、どうしたって言うの」
全くもう、はこちらの台詞である。溜息を零した彼女の様子は、未だ何も気付いていないよう。指摘をすれば慌てるだろうが、このまま視ている訳にもいかない。俺は、正解の名称がよくよく解らないそれを口にする。
『だあ、もう、した、…下着!…パ、パンティ…! ショッ、ショーツ視えてんだよ!』
「……えっ、嘘、きゃ、…!」
『―――馬鹿、危ねえ…!』
発した羞恥に、彼女は自身が不安定な丸椅子に立つ事など まるで忘れて居て。反射的にスカートを抑え膝を屈ませたのだった。当然、傾いた椅子ごと彼女の身体は宙に崩れる。女の身体に気安く触れていい物か、この場合、そんな考えの一切は皆無に消え。倒れる混む細い線を この身一杯に広げては。固い床の何処へも当たらぬよう、受け止めて、そうして、きつく、きつく、抱き締めるのであった。―――着地は、物凄い音がした。
『……痛ッてえな、クソ、』
「や、やだ、光我くん、ごめんなさい、私、」
声の様子から察するに、彼女自身に怪我はなさそうだ。固く冷たな床を背、彼女をこの身前面で受け止める事が出来たと知る。衝撃から束の間、瞼を薄く開けてみれば、腹の上に跨り、今にも泣きそうと眉を八の字にする様。だから初めから、社長か俺を待っていれば良かったのだ、全く。そうして今度こそ歳上相手に説教を垂れようと意気込んだその時。ふい、この体勢に熱持つ違和感を覚える。
「どうしよう、ねえ平気、何処か怪我してない、痛い所は」
必死な瞳でこちらを見下ろし問う彼女。この体勢は、流石にパンチラよりもまずくないか。細い身を受け止めたはいい、怪我もしていない、しかし、仰向けに転がった腹の上に、その白色の脚を広げ跨っては、まるで。まるで、いつか観た厭らしいビデオを彷彿とさせるもの。挙げ句の果て、嫌でも視界に入ってしまう、割れた脚に埋まる黒のショーツ。先に在るは、まだ知らぬ、熱。
『―――マブい』
「なんて」
しまった、本音が駄駄に漏れている。首を傾ぐ彼女と視線が重なれば、焦燥はまた容易に駆られるもの。平然を装うも、この現象に逆らう知恵は持ち合わせがない。二度目、彼女がもう一度と「痛い所は」そう唇を開けた時だった。上に居るその自身、股下に触れる違和感にぴくり、肩が跳ね。白色の頬が、明らかに紅を帯びては。生理的現象を前に、彼女の声が静かに掠れていく。
「……光我く、あの、……」
『痛てえんだけど』
「―――…」
『凄え、痛えんだけど。どうしてくれんだよ、
鈍く疼いた下腹部の痛みに。全身の体温が其処へ集結する。見上げた天井は、電球が未だ中途半端と