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車の助手席を降りようと左手をドアにかけると、
彼の手がそれを引き止めた。
瞬間。薄い唇から舌が伸びて、私の唇を優しく こじ開ける。
「んっ…、じ、銃兎」
甘いキスに頭がくらくらしそうで思わず離れようとするが
すかさず それを彼の手が阻止する。
私の後頭部を押さえ 半ば強引にキスを続けるのだ。
やっと離してくれたかと思えば、キツく抱きしめられる。
「銃兎…ねえ 苦しいよ」
『すみません……約束守れなくて…』
明日は私の誕生日。前日の夜から明日にかけて
丸一日、私の為に一緒に居てくれる約束をしていたのだ。
しかし、先程 銃兎が仕事を終え、車で私の家に来た際、緊急の呼び出しがあった。
どうも物騒な事件らしく、署の警察官が一気に駆り出されるほど。
さすがにそんな中 出動しない訳には行かなくて…。
「お仕事なんだから仕方ないでしょう? 気にしてないから平気だよ、ヨコハマを守るのが銃兎の仕事だから、ね?」
そう笑ってみせると 彼は抱きしめる腕に力をこめる。
「ねえ だから苦しいって…」
腕が緩み、やっと彼の顔を見れた。
「ちょっと、何で銃兎が私より落ち込むのよ。誕生日なんてまた来年もあるじゃない…」
『……』
「銃兎?」
彼は細いため息をついた。
『私は 職業柄、こうして大事な日や名前が私を必要とする時、そばに居れない時が どうしてもあります』
「ん…それを分かってて付き合ってるつもりよ…」
『不安にさせたり、孤独な想いをさせてしまう時の方が多い。これからもそれは変えられないと思います…』
いつでも そばに居てくれるような奴と付き合え。
きっとそんな事を言われる気がした。
今日の彼はずっと口数が少ないし、キスだって不器用な感じで…。
別れ話のタイミングを見計らっているのかもしれないと思うと胸が痛い。
『名前、車を降りてください…』
「うん…」
私は車を降り、もう乗る事はないかもしれない車を見つめた。
車だけじゃない。
銃兎の香水と煙草が混じった香り、
甘いキス、
優しい手、
愛おしく見つめてくれる瞳。
全て失ってしまうと思うと急に涙が溢れ出る。
『名前!?どうしたんですか』
「嫌だよ……」
『え…?』
「っ…ねえ、私、いつでも一緒に居られる他の人じゃなくてっ」
『ちょ、名前!』
「会える時間が限られてても銃兎がっ…」
『落ち着いてください!』
「銃兎じゃなきゃ嫌なのっ…!」
しん、と静まる夜に ただ声が響き渡った。
『名前、何を勘違いしているか分かりませんが…』
「……!」
私は目を丸くした。
だって、目の前には、大きな薔薇の花束を持ち、立ち膝で跪いている彼の姿があったのだから。
『私だって。あなたじゃないと嫌に決まってるじゃないですか』
「それってまさか…」
『プロポーズです。ま、勘違いの内容は縁起が悪いので聞きませんが』
「銃兎…、私でいいの…?」
涙が止まらない私に 彼はいつもの優しい、そして少し困った顔で笑った。
『それはこちらのセリフです。私はこうやって、あなたの誕生日さえ一緒に過ごせない男です』
『それでも、この花束と、私の名字を受け取ってくれますか?』
答えは一つしかなかった。
「…はい、喜んで」
彼は私をまたキツく抱きしめた。
すると、彼の車の無線がまた 繰り返し出勤命令を出す。
「銃兎、お花、ありがとう。もう行って」
『ああ。行ってきます』
彼は車に乗り、エンジンをかけると同時に窓を開けた。
『名前』
「ん?」
『しょっ引いたら、すぐ戻る。そしたら』
『明日、指輪を買いに行くぞ』
頷くと、彼は車を走らせ 夜のヨコハマへ溶けて行った。
時計が午前0時を指す。花束と迎えた誕生日。
左手の薬指が宝石で光るまで
あともう少し。
彼の手がそれを引き止めた。
瞬間。薄い唇から舌が伸びて、私の唇を優しく こじ開ける。
「んっ…、じ、銃兎」
甘いキスに頭がくらくらしそうで思わず離れようとするが
すかさず それを彼の手が阻止する。
私の後頭部を押さえ 半ば強引にキスを続けるのだ。
やっと離してくれたかと思えば、キツく抱きしめられる。
「銃兎…ねえ 苦しいよ」
『すみません……約束守れなくて…』
明日は私の誕生日。前日の夜から明日にかけて
丸一日、私の為に一緒に居てくれる約束をしていたのだ。
しかし、先程 銃兎が仕事を終え、車で私の家に来た際、緊急の呼び出しがあった。
どうも物騒な事件らしく、署の警察官が一気に駆り出されるほど。
さすがにそんな中 出動しない訳には行かなくて…。
「お仕事なんだから仕方ないでしょう? 気にしてないから平気だよ、ヨコハマを守るのが銃兎の仕事だから、ね?」
そう笑ってみせると 彼は抱きしめる腕に力をこめる。
「ねえ だから苦しいって…」
腕が緩み、やっと彼の顔を見れた。
「ちょっと、何で銃兎が私より落ち込むのよ。誕生日なんてまた来年もあるじゃない…」
『……』
「銃兎?」
彼は細いため息をついた。
『私は 職業柄、こうして大事な日や名前が私を必要とする時、そばに居れない時が どうしてもあります』
「ん…それを分かってて付き合ってるつもりよ…」
『不安にさせたり、孤独な想いをさせてしまう時の方が多い。これからもそれは変えられないと思います…』
いつでも そばに居てくれるような奴と付き合え。
きっとそんな事を言われる気がした。
今日の彼はずっと口数が少ないし、キスだって不器用な感じで…。
別れ話のタイミングを見計らっているのかもしれないと思うと胸が痛い。
『名前、車を降りてください…』
「うん…」
私は車を降り、もう乗る事はないかもしれない車を見つめた。
車だけじゃない。
銃兎の香水と煙草が混じった香り、
甘いキス、
優しい手、
愛おしく見つめてくれる瞳。
全て失ってしまうと思うと急に涙が溢れ出る。
『名前!?どうしたんですか』
「嫌だよ……」
『え…?』
「っ…ねえ、私、いつでも一緒に居られる他の人じゃなくてっ」
『ちょ、名前!』
「会える時間が限られてても銃兎がっ…」
『落ち着いてください!』
「銃兎じゃなきゃ嫌なのっ…!」
しん、と静まる夜に ただ声が響き渡った。
『名前、何を勘違いしているか分かりませんが…』
「……!」
私は目を丸くした。
だって、目の前には、大きな薔薇の花束を持ち、立ち膝で跪いている彼の姿があったのだから。
『私だって。あなたじゃないと嫌に決まってるじゃないですか』
「それってまさか…」
『プロポーズです。ま、勘違いの内容は縁起が悪いので聞きませんが』
「銃兎…、私でいいの…?」
涙が止まらない私に 彼はいつもの優しい、そして少し困った顔で笑った。
『それはこちらのセリフです。私はこうやって、あなたの誕生日さえ一緒に過ごせない男です』
『それでも、この花束と、私の名字を受け取ってくれますか?』
答えは一つしかなかった。
「…はい、喜んで」
彼は私をまたキツく抱きしめた。
すると、彼の車の無線がまた 繰り返し出勤命令を出す。
「銃兎、お花、ありがとう。もう行って」
『ああ。行ってきます』
彼は車に乗り、エンジンをかけると同時に窓を開けた。
『名前』
「ん?」
『しょっ引いたら、すぐ戻る。そしたら』
『明日、指輪を買いに行くぞ』
頷くと、彼は車を走らせ 夜のヨコハマへ溶けて行った。
時計が午前0時を指す。花束と迎えた誕生日。
左手の薬指が宝石で光るまで
あともう少し。