ケンガンアシュラ
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『スケベしようや』
「………」
風呂上がり。少し値の張るパックをし、全身へは入念と保湿を施す。二重ガーゼで気持ちの良いパジャマへ袖を通せば、不思議と気分は落ち着いて。生乾きにならぬよう、ドライヤーでしっかり髪を乾かしては、お気に入りのブラシで毛先まで
『明日、名前も休みやし。ちいと夜更かししても
風呂上がり、バスタオルで頭の天辺から脚の爪先までを一枚で済まし。当たり前だが髪の無い頭にはドライヤーなんて必要としない。後、全身へ使える保湿液を適当と、滝を浴びるよう塗っては、下着姿のまま 歯ブラシを咥えトイレへ向かう。そうして出て来たと思えば、パジャマは
「な、って。今、本読もうと思ったんだけれど」
『まあまあ、一旦それを閉じましてと』
丁度、本の栞を解いた所に彼の太い指先が落ちて来て。元あったベッドサイドへと戻されゆく。場面は「K」と先生の想い人で在る「お嬢さん」の関係に進展がある、と言った大事な章だった。
『今夜は、月が綺麗やな』
「漱石繋がりで一瞬素敵だと思ったけど、生憎今日は新月でした」
『細かい事はええねんて。ほんで、スケベせえへん』
「嫌」
『
「そう言う意味じゃなくて、誘い方が嫌なの。何なのよ、“スケベしようや”って」
幾分、彼との付き合いも長くなって来た。同棲を始めて暫く経つし、肌を重ねた回数も 数え切れない程に。しかし、在り来りでもいい、ムードくらいは大切にして欲しい物。幾ら付き合いが長いと言えど、
『……』
ふい、寄せられた筋肉質な腕が背に回り、この肩を抱く。風呂上がりの
「直也、」
掠れるように重なった唇は、何故だろう、いつもより拙さを覚える。
『あかん』
「どうしたの」
触れるだけのキス。肩に回された力強い腕は寂しい程に簡単と離れ。温もりが消えた肩は冷たく、ただに空虚。彼の指先の行方は、自身の頭を搔いて居て。その表情は、重たな考えに俯きを成していた。
「ごめん、私がさっき、はっきり嫌って言っちゃったから、その……、勃たなくなった」
『アホ、ちゃう。見ての通りビンビンしてるわ』
瞳を伏せると、彼の下着の中央は既、固く膨らみ帯びている。それなのに何故、肩から指を離すのか。何故、舌先が深く交わらないのか。何故、その先に進まないのか、解らない、解らなかった。暫く時が空いた後、彼が言いづらそうと、その口を開くのである。
『…この前したあとから、間、空いてしもたやん』
思い返せばそうだ。互い、仕事の予定やプライベートの都合により、共に暮らして居ながら就寝時間がバラバラで。気付けば、最後に肌を重ねた夜から二か月以上 間が空いてしまっている。彼に言われるまで気が付かったのは、仕事の忙しさをその日のうちにリカバリーしようと頑なに、私が決まって幾日もナイトルーティンをしつこく繰り返して居た所為。疲弊を浮べながら明日の支度をする恋人を誘う程、彼だって気が利かない訳じゃない。いつの間、彼の優しさに甘え、二人の時間を疎かにしてしまって居たのだった。私の所為だ。
「ごめんね、そうよね、誘いづらいわよね」
『いや、なんつうか、間空いてしもて。面と向かって真面目に誘うん、恥ずくて』
「…、」
『照れ隠しで、キモい誘い方しか思い浮かばへんかった』
再び肩へと回された掌は、先より熱を帯びていて。照れて上った体温なのか、交わしたキスの為なのか、定かでない。けれど、どちらにしたって嬉しい事に変わりないのだ。
『名前』
「ん」
額を寄せ、触れた唇が、流れる空気を甘くしていく。皮膚が掠れるよう優しいキスは、徐々、舌先が充たり そうして深く絡まり熔けていくのだった。太い首元へと腕伸ばし、絡ませ、強く、強く抱く。擦れた肌の隙間から、体温が伝わり響くこの感覚、なんて心地良い。矢先、息継ぎの為 唇を離した時である。吐息交じり、彼の妖艶たる声が、耳を
『でっかいおちんぽお注射、欲しいやろ』
―――先まで見せていた しおらしい姿は何処、と問いたい。どこまでムードを壊す気なのだ。変態的過ぎて最低だし、そもそも それで“うん”なんて 可愛気に頬を紅潮させるとでも思っている彼の脳内は、明らかどうかしている。深い、深い、溜息が零れた。気付けば、言葉より先に手が出ていて、彼の形の良い丸い頭を何度も高らかな音と共、叩く様。『暴力反対やで!』そんな声はこの際、閑却としていい。
「馬鹿直也、今日はもうしない」
『う、嘘やろ、待って! これネタ、ネタやねん、ちょっと俺等の中で流行ってるただのネタなんや』
「“俺等”って何よ、ただあなたが言いたいだけじゃない、このドスケベ」
『嘘ちゃうて、滅堂の牙にも教えたらお見事! ハマっとったで』
滅堂の牙と言えば、加納アギトではないか。理人、金田、氷室を含む四馬鹿であれば何とか納得出来るが、加納がこのような事に
「無理、嘘臭さ倍増でさらに萎えた、もう良い、本読むから邪魔しないでよね」
『ちょう待っ…、俺のエクスカリバーどないすんねん』
「知らないわよ、変態」
下着姿の彼のそこは、未だ大きく腫れていて。そんな真横で本を開くなど、甚だおかしい光景に思わず笑いが込み上げるが。ここは毅然とした態度を貫きたいところだ。笑ってしまえば、それは彼のペースに まんまと飲まれた証拠。そんなの、悔しくて堪らない。
『月が綺麗やな』
「
だから、今夜は新月だって言ったのに。駄目だ、今度こそ、おかしくて笑ってしまった。