ケンガンアシュラ
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瞬きする度、瞳孔を縮ませる刺激ある照明。嫌でも耳を
『――…俺は…ッ!、“絞殺王”、今井コスモだァッ!』
傷の負ったこの身体、一体何処にそんな気力が湧くのか。しかし、離したら負ける。肩関節ごと首を締め上げ、噛み締めた奥歯から鉄の液体が喉奥へ流れた時、とうとう相手の頚動脈を抑え込んだのだ。瞬間、今の今まで必死と抵抗していた処刑人、阿古谷が自身の脚の間でだらりと、その身を落としていく。この日、歓声とどよめきの入り交じる中。拳願絶滅トーナメント、第二回戦を瀕死状態で突発した。
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脚が噛み千切られた事と、幾度なく折られた肋骨が言う事を利かず、仕合後は情けなくも担架で運ばれていたが。彼女の手前、医務室ではベッドへ横たわるまでを 残り僅かな力を振り絞り自力で行った。こうでもしなければ、度重なる心労とその重圧で、彼女の方が先に駄目になってしまうと思ったのだ。
「コスくん、もう嫌、こんなになるまで……私、どうしたら良いの」
案の定、瞳へは分厚い水の膜が張られていて。それはすぐにでも、この横たわる胸元へと無限に落ちて来そうな程。腫れた腕を少しと上げれば激痛を伴うものの、自身も漢なのだ。今は目の前に居る彼女を安堵させるのが最優先であり、最重要である。点滴の針が無い方の腕を伸ばし、俯く彼女の柔らかな頬を撫でてやる。
『平気だよ、ほら。ちゃんと身体だって動いてるでしょ、ね』
切れてまだ血の固まらない傷口、そんな指先で滑らかに触れてゆくも、沈黙のまま。ただ首を横に振っては、投げかける言葉を頑なと信用しない。どうした物か、これはもう少し先の仕合まで取って置きたかったのだが、仕方がない、最終手段を使う事とする。
『名前さん、俺、格好良くなかった』
「……それは、」
『序盤アップライトって、なんか新鮮じゃない』
「……そうね」
『途中の大蛇絡めもさ、最後落としたフロントチョークも。俺的に結構キマってたと思うんだけど』
「……」
――…嗚呼クソ、駄目押しのもう一回だ、これで落ちてくれ。
『ね、格好良かった、でしょ』
「……
『やったね、名前さんに褒めて貰いたくて、俺、頑張っちゃった』
「もう、調子良いったら」
瞳に浮かんでいた雫は、いつの間に引いて。腕を動かせば、神経に
「コスくん、三回戦の事なんだけど」
やはり、そう来るか。恐らく、闘技場から意識朦朧と担架で運ばれる最中。先輩と彼女が何やら深刻そうな話をしていたような気がしたのだ。その声は耳に届かなかったものの、前述、闘技者交代の件に違いない。ベッド横、彼女が口を開く手前、俺はその声を遮るよう強く制すのだった。
『しないよ、棄権』
「……え」
『先輩と相談してたんだよね、三回戦目で俺を使うかどうか』
「コスくん…」
『俺は最後まで闘う。西品治警備保障の代表闘技者は俺だから』
細く、きつく促した視線は。彼女に何を思わせるだろう。不安、焦燥、悲しみ、怒り。目の前の彼女の心中に 渦巻く感情を無視してでも、この身が朽ちるまで闘い抜くのだ、この仕合は到底、生半可な決心で臨んだ訳じゃない。ふい、彼女の桜色の唇が開く。恐らくは、批判を喰らうと想い 無意識に身体の芯へと力みが生じたが、そんな事とは裏腹。
「当たり前でしょう、ここまで来たんだもの。西品治さんだって、コスくんの気持ちを汲んでくれるわよ」
『………そ、…か。…なあんだ、良かった』
身体の硬直が解け、ようやくと、これで心置きなく一眠りできそうだと肩が降りる。そうだ、三回戦目も、準決勝も、決勝戦だって。熱く、滾る闘いに身を投じては。頂点で“絞殺王”の名を轟かせてやるのだ。その為にここに来た。次第、次回戦もまだ闘えると頭が理解きた途端に、丁度瞼も重くなって来て。
『ごめん、名前さん、俺、少し寝るかも』
完全回復の見込みは当然ない。それでも、少しでも心身休ませて置かなければ。もしもだ、先輩の気が変わったりして、闘技者交代と言う最悪の選択をされたら、溜まった物じゃない、発狂物だ。
「あ、コスくん、待って。三回戦の話、まだ終わって無くてね」
『……なんだっけ』
「ユニフォームの事なんだけど、ほら。散々破けて予備もなくなっちゃったから、急遽発注しておいたのよ」
『ああ、そっか、ありがとう。ごめんね、手間掛けて』
予想以上に負傷した
『それで、どんな奴。寝る前に一応見て置くよ』
肌が切れ易い為、出来れば、全身を覆うようなユニフォームだと有り難い。それも言わずもがな、彼女なら近辺を理解し手配してくれているだろう。そうして、ビニールの破ける音と共、新たに袖を通すユニフォームが目の前に晒される。
『…………』
――…“袖を通す”、“袖”。それが、どうした事か、まるでない。疲労による幻覚だろうか、いや、瞳に映るそれは、腕を通す袖どころか、ファイトショーツでさえない。これは、この形状は、まさかと思うが。
『え、待って待って、名前さん、こ、これ、…これ、コテカだよね』
「そうよ」
当たり前、そう堂々と短に答えた彼女に驚きを隠せない。差し出されたのは、硬い素材で作られた、穴のある筒状の物。サイズはだいたい掌と合致する。確かに、確かにだ。大まかな部類としては男性用下着に類する物である。しかし、オブラートに包まず言えば、これはただのペニスケースなのだ。一体、何をどうしたらこれを発注する思考になるのか。
『そうよ、じゃないよ! こんなの着けて仕合になんて出れないよ』
「発注してすぐに願流島まで到着する物が これ以外なかったのよ」
『絶ッ対ッ嘘!』
「とにかく、三回戦はこれを着けて出場してね、ユニフォームの予備はもうないんだから」
『う、嘘でしょ、ねえ、ちょ、!…名前さん、待って!…これ、たま、玉が隠れないから!ねえってば!』
問いかけ虚しく、彼女はユニフォームと言う名の物を医務室のベッド横へ置き。「西品治さんから電話だから、外で架けてくるわね」と言う。堪らず引き止めたくも、激痛伴う体はそうそう言う事を利かない物で。俺は、彼女の去って行く綺麗な後ろ姿に、何度も何度も届かぬ名前を呼ぶのだった。頼む、夢なら覚めてくれ。
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「アダム。コスの様子はどうだった」
「旦那、あいつ、凄えうなされてるぜ、ありゃ悪夢に違いねえ」
「困ったな、身体を休ませてやりたいが。仕方ない、
「OK. I'll