ケンガンアシュラ
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傷跡に猫の同世界線。初見ルートver.
「もう、初見さんが怖がらせるからよ。……せっかく楽しんでいたのに」
『なら代わりに。俺が愉しませてやろうか』
「……」
逃げるよう駆け出した猫は、既に視界の外。代わりにあるは、私の手首を掴む彼の厚い指先。固くざらついた肌から離れようとも、びくともしない。彼と言えば 特段力を入れているようには見えなかった。
――…少し前だ。丁度初見と千葉の仕合を目に納めたあと、会場整備があるとの事で 空いた時間で外へ出た。死闘を繰り広げる戦慄した空間に居続けるには、それ相応の体力もいる。自然に肩へと力が籠もっていたのだろう、緊張した身体を休める為 場外の芝生を散策すれば、偶然にも可愛らしい猫が居て。そうして戯 れ合っていたのも束の間、先程仕合を終えた彼、初見が姿を現した事により。癒やしの源であった、膝元の猫は凄まじい加速と共に駆けるや否や、あっという間にその背を草むらへと隠してしまったのだ。
「――初見さん」
掴まれた腕を辿り、彼を見上げる。ふいに重なった視線は、“あの”翻弄するよう浮いた眼差し。問いには恐らく、首を縦に振る事以外赦 してはくれないだろう。何せ浮雲とも呼ばれる漢。何処まで本気であるかなど、こちらが読み取れる訳などない。火照り始めた頭にふと浮かぶ。――…そう、誂 われているのだ。彼にとっては軟派など、仕合の合間の暇潰しでしかない、そう考えるのが 極に自然な事。そうか、なんだ、と手品の種明かしをされたような気分になると幾分身体の火照りは引く物で。
「冗談はよして」
短く伝えたあとだ。掴まれた腕から彼の指が離れてゆく。やはり冗談に違いなかったのだ、と緩く胸を撫で下ろした。しかし、離れた固い指先は、私の指、手首、腕を昇り伝い。緊張の解け掛けた肩へと触れていく。
「初見さ…」
ざらり太い指先は そのまま首元に上がると同時、私の顎先をしかと捕らえるのだった。距離が縮まると、近づかなければ分からない彼の匂いに、冷めかけた身体の熱が戻って来る。互いの息が 肌に感じ取れるこの距離。彼は依然として、“浮雲”たる瞳を健在とさせていた。
『なあ。その“冗談”つうのは、誰が決めたんだ』
「……え」
仕合直後。きっとすぐにシャワーを浴びたのだろう。浴場備え付けのアメニティは男女で変わらぬらしい。ふわり漂う石鹸の香りは、自身も昨日の夜に使った物と同じ。しかし、何故だろう。程なくして感じるは、夜を想わせる少し重ための。サンダルウッドだろうか、バニラなのだろうか。定かでないが、それらを含んだ……――香水の匂い。
『それはお前さんが決める事じゃねえ、俺が決める事だ』
古来、王族や貴族の間では、情事の際、草木を調達しては香りと共に夜を愉しんで居たと言われている。これらは今なお、現代において香水として使われ「フェロモン」の役割を果たしているのだ。
『俺、結構本気なんだぜ』
「……」
あと数センチ近づけば、互いの唇が触れる。肌に感じる彼のぬるい吐息、胸元から仄かに香る 付けたての香水の匂い、合わさる事柄は、私の頭を揺るがすのに十分過ぎた。
『お前さん、落とすの』
瞬間、隙間は埋まっていた。ついぞと縮められた距離は 彼によって失われ、濡れた肌が私の唇を覆う。顎先にあった彼の指先はいつの間だろう。頬を抜けた髪の後ろへ、離れぬように充てられていて。そうして息継ぎ途中、薄く空いた唇の隙間から 熱い舌が口内へ侵食するのだ。
「……あっ……」
吐息に紛れ、咄嗟に出た短い声に。唇を離した彼の口笛が鳴る。
『へえ、出るじゃん。猫よりも可愛い声』
「――っ…」
滑らかな視線のあと、彼は曲げていた膝を伸ばし 重い腰を上げた。指先は、風に流れる私の髪を ただに掬 っては遊んでいる。
『それじゃあ、まあ。続きは裸で聞かせてくれるかい』
翻弄するよう溺れるキスに、身体の体温は上がったまま。砕け掛けた脚には、もう力の一つ入りそうにない。そうした矢先、何が起こったのだろう、火照った身体が宙に浮く。
「……きゃ、…は、初見さん、」
状況を理解するには 特に時間を要さなかった。太く逞しい彼の腕に支えられ、所謂 “お姫様抱っこ”をされているのだから。慌てた私が身を捩 れば、抱きかかえる彼の腕に力が籠もり。強引と視線を絡ませられる。
『キスで腰抜けちゃった』
「……そんなんじゃ、…ありません」
『嘘下手だねえ。まあ、いいか』
抱かれたままに向かう先は、恐らく彼の部屋。胸元に近づけば、先の香水か。バニラの香りが鼻を突く。すると彼は、ふと何かを思い出したかのよう、その声を耳元へと響かせるのだった。
『一生、記憶から消えねえ物 、味あわせてやろうじゃん』
バニラの花言葉を思い出す。――永久不滅。濃厚な甘い香りが特徴のそれ。記憶から消せない程、酷く印象的な匂いから、そう付けられたそうだ。
「もう、初見さんが怖がらせるからよ。……せっかく楽しんでいたのに」
『なら代わりに。俺が愉しませてやろうか』
「……」
逃げるよう駆け出した猫は、既に視界の外。代わりにあるは、私の手首を掴む彼の厚い指先。固くざらついた肌から離れようとも、びくともしない。彼と言えば 特段力を入れているようには見えなかった。
――…少し前だ。丁度初見と千葉の仕合を目に納めたあと、会場整備があるとの事で 空いた時間で外へ出た。死闘を繰り広げる戦慄した空間に居続けるには、それ相応の体力もいる。自然に肩へと力が籠もっていたのだろう、緊張した身体を休める為 場外の芝生を散策すれば、偶然にも可愛らしい猫が居て。そうして
「――初見さん」
掴まれた腕を辿り、彼を見上げる。ふいに重なった視線は、“あの”翻弄するよう浮いた眼差し。問いには恐らく、首を縦に振る事以外
「冗談はよして」
短く伝えたあとだ。掴まれた腕から彼の指が離れてゆく。やはり冗談に違いなかったのだ、と緩く胸を撫で下ろした。しかし、離れた固い指先は、私の指、手首、腕を昇り伝い。緊張の解け掛けた肩へと触れていく。
「初見さ…」
ざらり太い指先は そのまま首元に上がると同時、私の顎先をしかと捕らえるのだった。距離が縮まると、近づかなければ分からない彼の匂いに、冷めかけた身体の熱が戻って来る。互いの息が 肌に感じ取れるこの距離。彼は依然として、“浮雲”たる瞳を健在とさせていた。
『なあ。その“冗談”つうのは、誰が決めたんだ』
「……え」
仕合直後。きっとすぐにシャワーを浴びたのだろう。浴場備え付けのアメニティは男女で変わらぬらしい。ふわり漂う石鹸の香りは、自身も昨日の夜に使った物と同じ。しかし、何故だろう。程なくして感じるは、夜を想わせる少し重ための。サンダルウッドだろうか、バニラなのだろうか。定かでないが、それらを含んだ……――香水の匂い。
『それはお前さんが決める事じゃねえ、俺が決める事だ』
古来、王族や貴族の間では、情事の際、草木を調達しては香りと共に夜を愉しんで居たと言われている。これらは今なお、現代において香水として使われ「フェロモン」の役割を果たしているのだ。
『俺、結構本気なんだぜ』
「……」
あと数センチ近づけば、互いの唇が触れる。肌に感じる彼のぬるい吐息、胸元から仄かに香る 付けたての香水の匂い、合わさる事柄は、私の頭を揺るがすのに十分過ぎた。
『お前さん、落とすの』
瞬間、隙間は埋まっていた。ついぞと縮められた距離は 彼によって失われ、濡れた肌が私の唇を覆う。顎先にあった彼の指先はいつの間だろう。頬を抜けた髪の後ろへ、離れぬように充てられていて。そうして息継ぎ途中、薄く空いた唇の隙間から 熱い舌が口内へ侵食するのだ。
「……あっ……」
吐息に紛れ、咄嗟に出た短い声に。唇を離した彼の口笛が鳴る。
『へえ、出るじゃん。猫よりも可愛い声』
「――っ…」
滑らかな視線のあと、彼は曲げていた膝を伸ばし 重い腰を上げた。指先は、風に流れる私の髪を ただに
『それじゃあ、まあ。続きは裸で聞かせてくれるかい』
翻弄するよう溺れるキスに、身体の体温は上がったまま。砕け掛けた脚には、もう力の一つ入りそうにない。そうした矢先、何が起こったのだろう、火照った身体が宙に浮く。
「……きゃ、…は、初見さん、」
状況を理解するには 特に時間を要さなかった。太く逞しい彼の腕に支えられ、
『キスで腰抜けちゃった』
「……そんなんじゃ、…ありません」
『嘘下手だねえ。まあ、いいか』
抱かれたままに向かう先は、恐らく彼の部屋。胸元に近づけば、先の香水か。バニラの香りが鼻を突く。すると彼は、ふと何かを思い出したかのよう、その声を耳元へと響かせるのだった。
『一生、記憶から消えねえ
バニラの花言葉を思い出す。――永久不滅。濃厚な甘い香りが特徴のそれ。記憶から消せない程、酷く印象的な匂いから、そう付けられたそうだ。