ケンガンアシュラ
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そろそろ視線の先がぼやけて来た。いつか彼女に勧められた携帯ゲームは、息抜きのつもりが止め時を見失っている。この日の日中、師である暮石、チームメイトのコスモと共にスケートリンク場へと足を運んでいた。華麗なイナバウアーをアヘ顔で決め込む師に対し 何度他人のふりをした事だろう。稽古を付けて貰えるのは有り難いが、彼らのクレイジー加減には 色んな意味で
「アダム、お風呂お先したね。…ゲームも程々に、寝るの遅くなっちゃう」
『おう』
疲労した脳へは、だいたい何も考えないで済むようなゲームが最適と知っている。しかし、そのゲームですら 気を抜けば幾分頭を使う物。日本のゲームは大概面白い為か、下手に息抜きにそれを使おうとすれば 止め時を見失うのが現実。恐らく 彼女がこうして声を掛けてくれなければ、濃い黒色の空に、薄い陽が湧くまで とことん画面と対峙するに違いない。
『サンキュー、どこでセーブするか迷ってたんだ』
「分かる、ハマると中々抜け出せないから」
風呂上がりの髪の毛をタオルで拭いながら、俺の隣へ腰を下ろす。こうやって否定する訳でもなく、眉を八の字にし 控えめと笑う彼女が好きだ。そう言えば、今日行ったスケート場でも、そんな表情を覗かせていた事を思い出す。スケートが初めてと言う彼女が、壁を伝い まるでペンギンのよう小幅で進む様子。転んで頭を打ってしまうのでは、と大袈裟な程心配になり、手を貸そうと声を掛けたのだが。その時も首を横に振りながら、そんな顔で笑っていた。
「今日のスケート、凄く楽しかったね」
『さあ。よちよち歩きは楽しかったかい』
「意地悪」
頬を膨らませ、白い肌を赤面させた彼女は ふと。思い出したかのよう続けた。
「楽しみと言えば。暮石さんが誘ってくれた、パーティも楽しみよね」
『…what?』
思わず 間の抜けた声が漏れてしまった。暮石は、いつ彼女とそんな話をしたのだろう。彼女が転ばぬよう、半ば付きっきりで居た俺が 聞き逃した、否。一度手洗いにスケート場を離れた時だろうか。すると、細い腕が目の前を通り越し、ドライヤーをコンセントへと差し込んだ。彼女は事を既知と思っていたらしい。
「あれ。…アダムがお手洗いに行った時だったのかな。月末に道場で、ハロウィンパーティしようって暮石さんが」
暮石の事だ。きっと彼女に伝えれば もれなく俺へ繋がると横着したのだろう。彼の適当で掴めない様子にはほとほと慣れて来たのだが、無意識にも溜息が出てしまう。それでも、先の予定を彼女が楽しみと言っている。出来れば二人きりで過ごしたい気もするが、彼女が楽しめるのなら構わない事だ。
『なるほど、日本のハロウィンは初めてだな。コスプレ……だっけ。お前も何かすんの』
「うん、ナースをしようと思ってて」
『…それは何の
聞かなければ良かった、いや。ここは聞いて良かったと思うべきだ。今ならまだ、コスプレだって変えがきく。ナースと聞いて万人が思い浮かべるは、あの白い衣装。そして、男なら一度はアダルトビテオで見ているであろう、
『そりゃ禁止だ』
「ええ、だってもうネットで注文しちゃったのに。暮石さんが」
『……………ブッ殺す』
「え、なんて」
人の彼女になんて格好させる気だ。クレイジーにも程がある。しばらくすると 隣で揺れる、艶やかな髪が十分に乾いたらしい。そうしてコンセントを抜く為伸ばされた 彼女の細い手首を捕まえた。風呂上がりで保湿されているのか、いつにも増して滑らかな肌。静かな夜、俺だけが瞳に映せる特別な物だ。誰かの前に晒すなど、考えるだけで頭がおかしくなる。
『名前』
「……あっ、」
噛み付くようなキスを落とすと、薄い肩がぴくりと震えた。白い肌が少しずつ紅潮してく姿に 俺の身体も熱が走しる。息継ぎの途中で開いた口元へ舌を寄せれば、熱い吐息と混じった体液が交差していった。
「…やっ…あ、アダム、…」
『あ?』
「………ごめんね、…何か怒ってる……」
怒ってる、怒ってるよ。唇を落とした時、少しの熱を持つ白い肌。繋がった時、羞恥を含む表情で回される細い腕。
『……怒ってねえよ。悪い、怖がらせた』
離れた先の唇が濡れている。親指で払うよう拭ってやるが、図星を突かれた身。余裕のなさが伝わってしまうようで情けなくなって、ふいに視線を外した。すると彼女は暫く考え込んだあと、携帯を取り出してはネットを開き 何かを検索してみせ。
「ねえ、見て」
画面を向けられた為、避けていた視線を移すと。そこにあるのはネットショッピングの注文画面。買い物かごに入っているのは、黒いタイツと、羽織るタイプの長い白衣。何だか、唐突にキスをした理由を見透かされているような気がして、無性に腹の底が熱くなる。そして知ってか知らずか。彼女は小さく首を傾ぐのだ。
「これで、露出。抑えられるかな」
どう思う? と、また困り顔で苦笑され。いつだってそうだ、俺が子供っぽくも不貞腐れていると いつも彼女が最善を尽くしてくれる。格好良く、彼女の隣を歩けるような大人な男で居たいのだが、手前には常にジェラシーが邪魔をして それを許してはくれない。重過ぎて、いつか別れを切り出されるんじゃないかと たまの不安に駆られる程に。
『ナース服は着るんだな』
「せっかく用意して貰えたし、ね。楽しいのに変わりはないでしょう」
『……確かに』
つられて苦笑を漏らす。大人な彼女に置いていかれない為には、どうすればいいだろう。いっそ、誰の手にも届かない所へ閉じ込めて置けたらいいのに。俺が溜息混じりにも口角を上げた様子を見て、彼女の瞳には安堵が浮かんでいる。
「あ、そうだ。アダムも何かコスプレしようよ」
彼女は携帯へ目を落とし、再びネットショッピングを始め出した。視線の端に映るのは、格好の付かないダサめな着ぐるみ。どんなセンスしてるんだか。考え混むのがおかしくなって、思わず笑ってしまう。
「ほら、これとかどう。一緒に買わない?」
向けられた視線。ふと瞳が重なれば、映るは先程キスした際。拭い切れていなかった、濡れたあと。一度と醒めた熱が、またぶり返す。俺はそっと腕を伸ばし 彼女の手から携帯を離した。そして拭い切れていなかったそこへ、再び自身を重ねるのだ、より深く。背へ回した腕をきつくして、離れないよう抱きしめる。吐息が、瞳が、声が、全部全部、全部俺の物にしたくて堪らない。熱く絡むキスに、その後の行為に気付いたのか、彼女は赤面の中に 少しの焦りを浮かばせた。
「……ま、待って、アダム。ねえ、ショッピング、…着ぐるみは」
『
言い終わらぬうち、熱は上昇を続けている。既に風呂上がり、着替え終わった彼女の服へとするり手を滑らせれば、欲しかった感触に 全身の神経が痺れた。
『
――