バクテン!!
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「あれ敬助、何その袋」
男子新体操部の寮。
休日の朝、朝食を食べるや否や、築館は何故かコソコソと私に背を向け、大きな袋を抱きしめるように隠し、自室へ向かおうとしていた。
『ええと…ほら。あれだよ』
「バレンタインチョコ?」
『…うん』
私に気を遣ったのか、申し訳なさそうに眉を八の字にする彼。
「いくつ貰ったの?」
『あ、あはは………いや、まあ。ひ、一つじゃあ なかったけど』
言葉を慎重に選んでいるのか、苦笑する築館に、七ヶ浜が無神経にも大きな声で言う。
「築館〜。毎年、寮までチョコ持って来るなって言っとけって。あれほど言ってるだろ。しかも今日は休日だし。ったく…平日学校で渡せばいい物を」
『ご、ごめん。七ヶ浜』
「お。そういえばお前、毎年20個位は貰うよな。ん? 今年は去年よりだいぶ多くねえか?」
七ヶ浜が、築館の胸元で隠すチョコの入った袋をの中を覗く。
『そんなに貰ってないよ! それに全部、義理だから。義理』
「ほーん。義理、ねえ」
焦る築館を七ヶ浜は茶化すような目つきで眺めている。
「築館の事だし、何個か本命もいたりしてな〜」
『し、七ヶ浜…!もういいだろ』
話を切り上げ、築館はパタパタと袋を抱えて部屋へ向かって行った。
___________
ドアをノックし、築館の部屋へ入る。
「敬助、入ってもいい?」
『名前。ああ、良いよ。あと、さっきの七ヶ浜の………無神経でごめん。気にしなくていいからな』
「本命がどうって話?」
『うん』
築館は、部屋のドアを閉めた私を 優しく抱きしめた。柔軟剤の良い匂いがする。
『俺の本命は名前だけだし、そもそも名前からのチョコしか嬉しくないよ』
「……そうじゃなかったら…困るよ」
彼は困ったような小さい笑みを溢し、私の頬に手を触れる。とても温かくて心地良い。
するとふいに、築館は思い出したかのように問う。
『…なあ、もしかして』
「ん?」
『さっき嫉妬してくれた?』
「……」
瞬間、目を丸くする私に、築館はわたわたと焦るように訂正した。
『……って。俺の自惚れか。ごめん、ごめん、そんな訳ないのにな』
私は 顔が熱くなるのを感じながら、赤面しているであろう顔を隠すよう築館の胸元に顔を埋める。
「………たよ」
『え?』
「だから…したよ……嫉妬」
聞いてきたのは築館にも関わらず、彼の反応はない。胸元に埋めた顔を上げ、そっと彼を見上げる。
「…聞いといて何よ…。なんとか言ってよ。…って、敬助…顔真っ赤」
築館は 見上げる私から顔を反らしているが、耳まで真っ赤になってた。
『いや…その。嬉しくてつい』
そんな彼につられ、こっちも恥ずかしくなってしまう。
『名前、いつも嫉妬とか してくれないだろう?』
「それは…敬助が大人っぽいから…。子供だと思われたくなくて態度に出してないだけ…。本当は敬助が知らないだけで、結構ヤキモチ焼きだよ」
『…名前』
「……ごめんね。子供っぽいって…幻滅した?」
恐る恐る聞くと、築館は 慌てた様子で声を大にした。
『…っ…そんなわけないだろう…!…』
私を抱きしめる彼の腕に力が入る。
『子供っぽいなんて思わない。むしろ凄く嬉しいよ』
「でも、あんまり嫉妬させないでね。敬助モテるから心配だし」
口を尖らせ、わざと不機嫌な態度をとった。
『モテてないよ。でも、名前が不安にならないよう 俺も気をつける』
「ありがとう」
『あ。でも、たまにで良いから、今日みたいにヤキモチ焼いて欲しいかも〜』
「すぐ調子に乗らない」
『…はい』
「…ふふ」
何だかおかしくて2人で笑ってしまう。すると、築館がふいに私の頬に触れる。
「…敬助?」
『……名前、キスしていい?』
私は、返事の代わりに首を縦に振り、彼を見上げた。温かい彼の唇が そっと、宝物に触れるように落ちてくる。
「…ん…敬…助」
『可愛い…』
次第に唇が開き、舌を絡ませる濃厚で甘いキスになっていく。
抱きしめられた身体が熱を持ち、触れられた頬、撫でられる頭、その感触 全て気持ち良い。
「あっ…敬助……ま、待って」
『ん?』
私を後ろに押し倒そうとする築館に、慌てて問う。今日は休日で、部員たちはそれぞれ出掛けると言っていた。
七ヶ浜は実家の蒲鉾屋を手伝いに、女川はタンタンガールズのミニライブ、亘理は任侠映画の上映会。翔太郎と美里は公園へ練習に…。確かに寮には私達しか残らないが、まだ朝でカーテンを閉めても なお明るい。
何か、夜に持ち越せる理由を考えて、ふと 思いついたかのように提案した。
「チョコ…。私からも敬助にチョコがあるの。…えっと……食べない?」
築館は唐突に告げられた言葉に、少し
考える素振りを見せたあと、首を横に振った。
『ありがとう。でもチョコはあとで頂くよ』
「え…」
完全に押し倒された私に、彼は深いキスをする。
「…あ……っ…」
『目の前に。先に欲しいものがあるし…。あと、俺も男だから。今 “お預け”は ちょっと厳しいかも』
築館はシャツを脱ぎ、柔軟だが、鍛えられた身体を露わにした。
「敬助…」
『それに』
彼は私の耳元に触れるようなキスをする。
そうして くすぐるような、甘い声で呟くのだった。
『もう名前が嫉妬出来ない位、いっぱい愛したいからね』
「ーーッ…」
瞬間、彼の熱い舌先が、私の薄い耳を舐めあげるように優しく刺激する。
もう明るいのがどうとか、恥ずかしいのがどう…なんてどうでも良くなる程。
今はただ純粋に 彼に愛されたいと思った。
『名前、大好きだよ』