バクテン!!
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今日は 大学のマットを借りれる貴重な日。いつもはマットを見ると テンションも上がり、得意の柔軟や タンブリングも調子良く熟 せるはずなのに。なんだか上手く行かなくて。心がモヤモヤ晴れずにいた。
――理由は明確だ。
築館から聞いた名前のタイプの男が、まんま シロ高の高瀬だったと言う事実。俺は 高瀬より背は小さいし、力だってあのゴリラには負ける。腹臥 だって、高瀬の力強い演技には勝てない事も、合宿の際 魅せつけられたそれで痛感している。林檎農園だって、母方の祖父が代々 林檎農家の高瀬なら いとも簡単に連れて行ってくれるに違いないのだ。
『ひとっつも、当てはまんねえよな…俺』
深いため息を着く。今日の部活が終われば明日は休日。あっという間に彼女の誕生日を迎える訳で。格好良く 彼女のタイプになってデートへ誘おうと思ったが、これでは断られるに決まっている。…情けない。もう一度 ため息が出そうになった その時、後ろから 心地よい声が響いた。
「女川くん」
『…名前。……おお、お疲れ。どした』
振り返れば、絶賛片思い中の彼女が居て。ちくりとする胸の痛みを消す為に、無理に笑ってみせた。彼女は俺の顔をしばらく覗いたあと。
「ちょっと来て」
少し硬い表情で、彼女は大学の体育館の外へ向かっていく。若干の緊張を抱きながら、俺も彼女の小さな背中に続いた。
_______________
日が沈みかけた 夕方。体育館の外へ出れば、瞬間に彼女の影が長く伸びていく。
『……名前、……なに。なんか、真剣な話し?』
早まる鼓動を抑え込むように、一つ深呼吸をした。おずおずと問うと、彼女は眉間にシワを寄せていて。
「ねえ、女川くん。この頃 調子悪いのは何で? 第二タンブ、全然タイミング合ってないし、倒立でもふらつきが多いよ」
『え………と。そんな事ないんじゃ…』
「嘘禁止。マネージャーなんだから、お見通しなの。……本当、どうしちゃったの、体調でも悪い?」
今度は心配するように 瞳を見つめられる。それ以上 視線を向けられれば、すぐ身体に穴が空いてしまいそうな程。
『体調は悪くねえよ……。なんつうか…。そうそう。ろ、六人の演技、まだ慣れなくてさ』
はぐらかすように頭をガシガシかくと、金色の髪の毛が数本抜けた。彼女は少し考えたあと、短く息を吐く。
「そっか、体調が悪くないなら良いよ。…でも、美里くんや双葉くんも入部して、やっと念願の 六人で演技出来るようになったんだから。県大会まで 時間もないし、それまでちゃんと調子戻してね。…私も心配なんだから」
『心配掛けちまったのは謝る…ごめん』
格好悪すぎだろ。タイプの男になれない上に、演技のタイミングも合ってないと指摘を受けて。挙句の果てに心配までさせるなんて。これは もう諦めるしかないのかも。情けなさに苦笑を漏らすと、彼女は思いついたかのように呟いた。
「そうだ。そういえば、築館くんも 何か変なんだよね」
『え、築館が?』
演技はいつも通りだし、誰が見ても癖のないオールラウンダーな築館。俺が気付かないだけで どこかおかしな演技をしていただろうか。首を捻るも 思い当たる節がない。
「そうなの。この前ね、急に私に 好みのタイプを聞いて来たりして」
――…やべ。なるほど、その事か。
俺は 何も知らない素振りで、瞳の動揺を精一杯 誤摩化した。
『へ、……へえ。何でだろう、おかしいよなあ…』
すると、思い出し笑いなのか 彼女はクスクスと笑い始めて。
「ね、おかしいでしょ。……築館くん、そんな事聞いてくる人じゃないのに。それでね、何かちょっと裏が合って怪しそうだったから 咄嗟にシロ高の高瀬くんの特徴を伝えちゃった」
『ぇ゙っ……!?』
「……え? なんで、女川くんがそんなに驚くの」
『いや…いやいやいや……ちょっと…!ちょっと待って…!脳を一旦 アプデさせてくれ…』
混乱する頭を整理しよう。…築館に頼んで聞いて貰った彼女のタイプ。普段そんな事を聞いて来ない築館を怪しんた彼女は ふと思いついた高瀬の特徴を伝えたと言っていた…。と、言う事は。
『名前のタイプって、高瀬じゃないって事…?』
小さく口にした俺の質問に、彼女は 目を丸くしたあと おかしそうに吹き出した。
「ふふっ…。さすがに高瀬くんじゃないよ。確かに演技は凄いけどね。あの通りの、リンゴリラだし…。あ、今度会った時に、私が高瀬くんの事 ゴリラって言ってた事 内緒だよ」
笑いながら しー、人差し指を立てる彼女。途端に身体の芯から力が抜けた。それでも、肩を落とすような落胆的な意味ではなく、完全な安堵の意。彼女の本当のタイプは分からないが、これはまだ望みを捨てなくて良いのでは。そんな事を考えていると 次第にムズムズし始めて。堪 らなくバクテンがしたくなって来た。
『〜〜っ…よっしゃ! 今から 体育館戻って練習だ。しっかりタイミング合わせて飛んでやる!』
「あれ、何だか いつも女川くんの調子に戻ったみたい。……なんだ、もしかして私の心配損て事?」
『ごめん、ごめんて。今度ちゃんとお詫びするからさ』
「もう、調子良いんだから」
頬を膨らますも、楽しそうにする彼女に胸が温まる。
――ああ、その笑顔。凄え好きだ。
「……そうだ なら、お詫びに。明日 一日私とデートしてよ」
『えっ……』
まるで心臓を矢で撃ち抜かれたような 衝撃的な言葉に、俺はただ 口をぽかんと開ける事しか出来ずにいた。
「私ね、明日 誕生日なの。心配掛けたって気持ちがあるなら お詫びに、付き合って。デート」
夢なら覚めないでくれ、と頬を抓 りたい衝動を抑え込む。このチャンス、絶対逃すもんか。緊張で声が震えないよう、いつもの声色を繕 って返事をする。
『いいよ。どこがいい?』
「暑くなって来たし 水族館かな、うみの杜」
『おっけー。魚の解説役は俺にお任せ』
「わ、さすが お魚屋さんの息子」
『へへん。あと、プレゼントも居るよな。大サイズのイルカのぬいぐるみでも買って渡すよ』
「ええ、大サイズ 高いよ」
たんたんガールズのグッズ用で貯めていたお年玉をここで ふんだんに使ってやる。次のライブは金欠で行けなくなるが、そんな事は二の次 三の次。
帰ったら一番格好良い服を 選ぼう。
――理由は明確だ。
築館から聞いた名前のタイプの男が、まんま シロ高の高瀬だったと言う事実。俺は 高瀬より背は小さいし、力だってあのゴリラには負ける。
『ひとっつも、当てはまんねえよな…俺』
深いため息を着く。今日の部活が終われば明日は休日。あっという間に彼女の誕生日を迎える訳で。格好良く 彼女のタイプになってデートへ誘おうと思ったが、これでは断られるに決まっている。…情けない。もう一度 ため息が出そうになった その時、後ろから 心地よい声が響いた。
「女川くん」
『…名前。……おお、お疲れ。どした』
振り返れば、絶賛片思い中の彼女が居て。ちくりとする胸の痛みを消す為に、無理に笑ってみせた。彼女は俺の顔をしばらく覗いたあと。
「ちょっと来て」
少し硬い表情で、彼女は大学の体育館の外へ向かっていく。若干の緊張を抱きながら、俺も彼女の小さな背中に続いた。
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日が沈みかけた 夕方。体育館の外へ出れば、瞬間に彼女の影が長く伸びていく。
『……名前、……なに。なんか、真剣な話し?』
早まる鼓動を抑え込むように、一つ深呼吸をした。おずおずと問うと、彼女は眉間にシワを寄せていて。
「ねえ、女川くん。この頃 調子悪いのは何で? 第二タンブ、全然タイミング合ってないし、倒立でもふらつきが多いよ」
『え………と。そんな事ないんじゃ…』
「嘘禁止。マネージャーなんだから、お見通しなの。……本当、どうしちゃったの、体調でも悪い?」
今度は心配するように 瞳を見つめられる。それ以上 視線を向けられれば、すぐ身体に穴が空いてしまいそうな程。
『体調は悪くねえよ……。なんつうか…。そうそう。ろ、六人の演技、まだ慣れなくてさ』
はぐらかすように頭をガシガシかくと、金色の髪の毛が数本抜けた。彼女は少し考えたあと、短く息を吐く。
「そっか、体調が悪くないなら良いよ。…でも、美里くんや双葉くんも入部して、やっと念願の 六人で演技出来るようになったんだから。県大会まで 時間もないし、それまでちゃんと調子戻してね。…私も心配なんだから」
『心配掛けちまったのは謝る…ごめん』
格好悪すぎだろ。タイプの男になれない上に、演技のタイミングも合ってないと指摘を受けて。挙句の果てに心配までさせるなんて。これは もう諦めるしかないのかも。情けなさに苦笑を漏らすと、彼女は思いついたかのように呟いた。
「そうだ。そういえば、築館くんも 何か変なんだよね」
『え、築館が?』
演技はいつも通りだし、誰が見ても癖のないオールラウンダーな築館。俺が気付かないだけで どこかおかしな演技をしていただろうか。首を捻るも 思い当たる節がない。
「そうなの。この前ね、急に私に 好みのタイプを聞いて来たりして」
――…やべ。なるほど、その事か。
俺は 何も知らない素振りで、瞳の動揺を精一杯 誤摩化した。
『へ、……へえ。何でだろう、おかしいよなあ…』
すると、思い出し笑いなのか 彼女はクスクスと笑い始めて。
「ね、おかしいでしょ。……築館くん、そんな事聞いてくる人じゃないのに。それでね、何かちょっと裏が合って怪しそうだったから 咄嗟にシロ高の高瀬くんの特徴を伝えちゃった」
『ぇ゙っ……!?』
「……え? なんで、女川くんがそんなに驚くの」
『いや…いやいやいや……ちょっと…!ちょっと待って…!脳を一旦 アプデさせてくれ…』
混乱する頭を整理しよう。…築館に頼んで聞いて貰った彼女のタイプ。普段そんな事を聞いて来ない築館を怪しんた彼女は ふと思いついた高瀬の特徴を伝えたと言っていた…。と、言う事は。
『名前のタイプって、高瀬じゃないって事…?』
小さく口にした俺の質問に、彼女は 目を丸くしたあと おかしそうに吹き出した。
「ふふっ…。さすがに高瀬くんじゃないよ。確かに演技は凄いけどね。あの通りの、リンゴリラだし…。あ、今度会った時に、私が高瀬くんの事 ゴリラって言ってた事 内緒だよ」
笑いながら しー、人差し指を立てる彼女。途端に身体の芯から力が抜けた。それでも、肩を落とすような落胆的な意味ではなく、完全な安堵の意。彼女の本当のタイプは分からないが、これはまだ望みを捨てなくて良いのでは。そんな事を考えていると 次第にムズムズし始めて。
『〜〜っ…よっしゃ! 今から 体育館戻って練習だ。しっかりタイミング合わせて飛んでやる!』
「あれ、何だか いつも女川くんの調子に戻ったみたい。……なんだ、もしかして私の心配損て事?」
『ごめん、ごめんて。今度ちゃんとお詫びするからさ』
「もう、調子良いんだから」
頬を膨らますも、楽しそうにする彼女に胸が温まる。
――ああ、その笑顔。凄え好きだ。
「……そうだ なら、お詫びに。明日 一日私とデートしてよ」
『えっ……』
まるで心臓を矢で撃ち抜かれたような 衝撃的な言葉に、俺はただ 口をぽかんと開ける事しか出来ずにいた。
「私ね、明日 誕生日なの。心配掛けたって気持ちがあるなら お詫びに、付き合って。デート」
夢なら覚めないでくれ、と頬を
『いいよ。どこがいい?』
「暑くなって来たし 水族館かな、うみの杜」
『おっけー。魚の解説役は俺にお任せ』
「わ、さすが お魚屋さんの息子」
『へへん。あと、プレゼントも居るよな。大サイズのイルカのぬいぐるみでも買って渡すよ』
「ええ、大サイズ 高いよ」
たんたんガールズのグッズ用で貯めていたお年玉をここで ふんだんに使ってやる。次のライブは金欠で行けなくなるが、そんな事は二の次 三の次。
帰ったら一番格好良い服を 選ぼう。