弱虫ペダル
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
――彼女の唇が好きだ。滑らかで、柔らかで、程良い熱を持っていて。途切れた息継ぎの
「裕介、冷凍庫にある鮭って使っていいんだよね」
手が離せないのか、キッキンから顔半分だけを出した彼女と 振り返りざまに瞳が重なった。そう言えば、先週あたりスーパーへミネラルウォーターを買いに行ったついで。何となく目が合った二尾入りのサーモンを何故か一緒に購入していた事を思い出す。家に帰ったあと冷蔵庫に入れてみたが、良く考えれば 特に自炊に凝ってる訳じゃない。いつ調理しようか悩んだ末、段々に考えが及ばなくなってしまった俺は『そのうち食べてやるからな』と 切り身にひっそり声を掛けた後 淋しく暗い冷凍庫へそいつを閉まっていたのだった。
『あ、やべ、すっかり忘れてた。使ってくれると有り難てえ』
冷凍にしてると言えど、時間が経てば勿論味は落ちる。彼女に見つけて貰わなければ 恐らくあのサーモンは、悲しい結末を迎えていたに違いない。そして無責任に購入した俺も、サーモンに呪われてしまっている事だ。
『…救済完了、と』
事実、救済したのは彼女であるが。ふと、キッキンから甘いミルクの香りと、サーモンの香ばしい匂いが鼻を抜ける。組み合わせ的に思い浮かぶは パスタかドリア辺りが良い線だろうか。熱したフライパンの音が徐々に小さくなっていく。そうして皿へ盛られた料理をトレーに乗せた彼女がリビングへ戻って来た。
「お待たせ」
『パスタ?』
「うん、ファルファッレ」
あれ、ファルファーレ、ファンファーレ?と首を傾いだ彼女が愛おしくて
『生クリームなんてあったか』
「スイーツ用に買ってたホイップクリームがあったから。それで」
『…な、…マジかよ』
「嘘、冗談。牛乳が余ってたの」
『………ったく。ビビらせんなッショ』
わざと細めた視線を送ると、おかしそうに吹き出した彼女が熱々のパスタを食べ始めた。飯を食うのにわざわざ 綺麗に引かれた口紅。別に家に居るんだから 化粧なんてしなくて良い、と言うと何故か機嫌を損ねる為 ここは敢えて言わない事とする。彼女に似合った淡い色の口紅、湯気立つパスタがその濡れた口元へ運ばれる
___________________
「洗い物、ありがとう」
『作って貰ってんだ、皿ぐれえは洗うだろ』
二人掛けのソファに腰を下ろすと ふわり、彼女の頭が肩へと
『名前』
「ん?」
「…あっ、……裕、介……どうしたの」
余裕はなくも、彼女の瞳の端に映るは 既に耐えきれなくなったジーンズの膨らみ。どうしたの、じゃないだろう。好きな女とキスをしておいて、こうならない男など ただの不全症か何かだと言いたい。それでも、何となく恥ずかしくて 分かりきった嘘の言い訳をする。
『…お前がさっき作った飯に、何か盛ったんじゃねえの』
「そんな訳ないでしょ……ん、…」
もう それについて突っ込むのはよしてくれ、と彼女の言葉を遮るよう 再び唇を重ね、欲し貪った。服を挟んで触れた身体から互いの熱が伝われば、とうとう自身の熱源が我慢の限界を迎え。
「――する…?」
『
唐突に立ち上がりリビングを出た俺に、彼女はきっと目を丸くしているに違いない。しかし、どうしても一旦 気持ちを落ち着かせる
――何考えてんだ、裕介。汚ねえ
二つ目の深呼吸でようやく落ち着いた俺は、用を足してもいないレバーを引いて水を流した。冷たい水でよく手を洗い、彼女が待つリビングへ戻れば。明るかった室内は、閉められたカーテンで 殆どの光が遮られ。先程まで熱く絡むようなキスをしていたソファの上には、いつの間に下着姿となった彼女が 滑らかな肌を晒していた。胸を刺す光景に
「もしかして、脱がせたかった?」
床に落とした服と 立ち尽くす俺へ、交互に視線を配っている。その様子に わざとらしくため息をついたあと、俺はきつくなったジーンズと 十分に火照った身体からシャツを離した。ゆるり手を伸ばし、彼女の顎先にそっと触れる。――彼女の濡れた この唇が好きだ。彼女が、彼女が
『クハッ、………言ってろ』
近づき絡んだ前髪。何か言いた気にする彼女へ 図星だとバレないよう、深く。深く、キスをした。