弱虫ペダル
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浮かない気持ちとは裏腹に、陽気なインターホンが部屋に響いた。丁度 ショートケーキの飾り付けの 最後の苺を盛り付けたあとだった。重い腰を浮かせ、ドアを開ける。
「お邪魔します…」
『…おう、いらっしゃい。上がれよ』
「………うん」
彼女はパンプスを脱ぐと、綺麗に揃えて玄関脇にそっと置いた。リビングに招き入れると、彼女は鼻を すんと鳴らす。
「あ…甘い香り…。もしかして、ケーキ?」
彼女もまた俺と同じで、浮かない表情のまま、口角だけを上げてみせた。
『誕生日は 毎年手作りのケーキが良いんだろ。まあ………こうして祝えるのは、これが最後なんだけどな』
苦笑しながら 飾り付け終わったショートケーキを彼女の前に差し出すと、ケーキを見つめる その目に涙が伺える。
「……通司くん…ごめんね…ごめんなさい……私」
『おいおい、ケーキに涙零すなよ。塩っぱくなっちまうだろう?』
精一杯の冗談を言ったつもりが、大きな効果はなく 彼女は両手で顔を覆い 静かに泣き始めた。
彼女と付き合い始めたのは、高校に入ってすぐだった。入学初日に 総北自転車競技部へ入部した際、マネージャーとして入部を希望したのが名前だった。笑われるかもしれないが、何となく目を合わせたその日、「ああ。俺、彼女と結婚するんだ」そんな思いが頭をよぎったのだ。彼女もまた、俺に好意を抱いてくれていて、恋人になるのは ごく自然な流れだった。
辛い練習の時、雨の中 死にものぐるいで走ったスプリントの計測、主将になった時。俺の想い出にはいつも彼女がいて。彼女が隣に居ない人生など、考えられる訳がなかった。そう、あの時までは。
『泣くなよ…名前、涙 温かいんだ。生クリーム 溶けちまう』
手を伸ばし、不器用な指先で彼女の目尻の涙を拭う。それでも、蛇口を捻ったように 溢れる涙は止まる事はなかった。
「……私の家のせいで………本当にごめんなさい……」
『……』
彼女の生まれは、古くから絶えず継がれる大層立派な家柄で、昔から許嫁が居たと聞いている。彼女は、俺と今後の人生まで考えた上で、両親に頭を下げ続けたものの、最後までそれが許可される事はなかった。その日の夜 泣きじゃくりながら駆け落ちを持ちかけ 俺の家にやってきた際、彼女の父親があとを付けていて。直接「名前と別れて欲しい」と頭を下げられたのだ。大金を差し出しながら。
俺は混乱と葛藤の末、金は受け取らない。代わりに彼女に苦労のないようにして欲しい、そう伝え 彼女と正式に別れる事になったのだった。
「…通司くん……」
彼女が俺の胸に顔を埋める。俺は両手できつく彼女を抱き締めた。
『……でも良かったよ。誕生日まで待ってもらえて』
毎年 彼女の誕生日は俺のショートケーキで祝う決まりになっている。父親に別れて欲しいと懇願された際、「彼女に苦労のないように」その条件の他に 今年の彼女の誕生日だけは 祝わせて欲しいと頼んだのだった。
「…うん……」
『ケーキ、食うか?』
「頂きます」
熱湯に晒した包丁で、ホールケーキを六等分に切り分ける。毎年の通り、中には苺と生クリームをこれでもかと言うくらい沢山。
「美味しそう」
『召し上がれ』
そう言うと、彼女は銀色のフォークを手に取り、ケーキをすくうと 静かに口元に運んだ。
『旨いか?』
「……うん…うん…美味し……美味しい」
涙声でショートケーキを頬張る彼女に胸が痛む。ふと、フォーク以外にも 銀色に光るものが目に止まった。
『……指輪、貰ったんだな』
左手の薬指には、きらりと光る 銀色の指輪。その言葉に、彼女は沈黙する。しん、と静まり返る部屋に 少ししたあと、彼女の か細い声が響いた。
「……本当はね、これ……通司くんから…欲しかった…」
『………名前』
「私に似合う…可愛い指輪、通司くんが選んで渡してくれて……嬉しいって…私も笑って…」
『…っ…』
「それでっ…結婚式も、っ…隣には通司くんが居て……ッ……二人で幸せに、なろうねって……笑いあって……そうなるんだって…思ってたのに……こんな……こんなの…」
薄い肩を震わせ、彼女は消え入りそうな声で辛そうに涙する。
「…通司くんが…いない人生なんて……こんなの嘘だよ……ねえ……通司くん…!…」
言葉の最後は張り詰めた 叫びのようになっていて。俺は彼女を抱き締める腕に力を込めた。
『俺も。名前が居ない人生なんて、嘘だと思ってる…。誕生日 祝えるのが、今日で最後だってのも 信じられねえ…』
食べかけのケーキの生クリームが 溶けて崩れて行くのを見て、まるで二人を投影してるかのようなそれに 俺は奥歯を噛み締めた。しかし、俺は「でも」と続けて。
『俺さ、前世とか来世とか、そんなん信じちゃいねえんだけど』
「…え?」
突然の空想話に 彼女は困惑し顔を上げた。
『俺らが 本当に結ばれる運命なら、次の世界で 必ず出会うって信じてる。俺が高校入学初日、名前に出会った時さ、きっとこいつと結婚するって直感でそう思った』
「……」
『それってさ、多分 前世のどこかで 一度出会ってたんじゃねえかなって…思うんだよ』
溶け出した生クリームからは 甘い匂い。彼女と過して来た 数えきれない程の想い出が蘇る。例え崩れたとしても、消えるわけじゃない。形を変えても、それは想い出として 残り、忘れ去られる事など無いのだ。
『だからさ、次の来世か、またいつかの来世で。俺たちは必ず出会う。……いや。俺が名前を必ず迎えにいく』
「…っ…通司くん。……私も。私、必ず 通司くんを見つけるね。顔や声が変わってたとしても……っ…絶対、絶対見つけるからね…!…」
溢れて来そうな涙を留め、俺は顔を上げた彼女の唇にキスを落とす。
「通司くん……愛してる」
『俺もだ。……愛してるよ、名前』
俺たちは熱い抱擁のあと、思い出せる記憶を全て噛み締めながら、最後の交わりをした。
___________________
なんだって ショートケーキが食べたくなるんだろう。たまには 栗のモンブランや フルーツが乗ったタルトでも食べればいいのに。何故か たまに、無性にショートケーキを食べたくなるのだ。
俺は仕事帰りに最寄り駅の一番近くにある 小さなケーキ屋へ立ち寄った。昔からある洋菓子店で、夕方は意外と空いている穴場の店なのだ。仕事の疲れにはビールを なんて、同僚は口々に言うが 俺にはケーキが一番効く。
店のドアを開け すぐに目を向けるのは、ショートケーキが並ぶショーケース。今日は売れ行きが良かったのか、いつもより残数が少ない。しかし、幸いにもワンピースだけは残っており、俺は しめたと早歩きでショーケースへ足を向けた。すると、レジ前で優しい女性の声が響く。
「すいません、ショートケーキ、お一つ下さい」
……一足遅かった。店員は最後のショートケーキを丁寧に箱へ包み、女性は嬉しそうに会計を済ませる。仕方がない、また明日来よう。そう思い 洋菓子店を後にした。ふと 後ろから、店のドアのベルが鳴る。先程の彼女が店から出て来たのだろう。何となく振り返ったその時、俺の心臓は強く跳ね上がった。そうして、それはまた彼女も同じのようで。
「……あ………あの……。こ…こんな事言うの、私……少し変なんですけど……」
動揺した彼女の手は震えていて、瞬間にショートケーキの入った箱は重力に負け 地面に落ちて行った。俺もまた 心臓の高鳴りを抑える事など出来なくて。
『俺も……な、なんだろう……、なんだ…』
無意識に頬を伝って熱い涙が流れて行く。彼女の大きな瞳からも 大粒の涙が止めどなく溢れていて、それが地面に転がったケーキに落ちて行く。
途端に 身体に電気が走ったかのような感覚に襲われた。
――なんだ。ケーキに涙が…落ちて……。嘘だろ……なんだこれ…誰の記憶だ………もしかして………俺の。俺の記憶なのか…。
記憶を遡ろうとするも、はっきりとした情景は浮かんでこない。もどかしい思いに駆られるも、何故か 胸がとてつもなく熱くなる。すると それは彼女も同じようで。大粒の涙を頬に伝えながら、眉を八の字にし微笑んだ。
「…本当、おかしいんです…良く…思い出せないのに……」
涙が落ちていくショートケーキに目を向けながら 彼女は続けた。
「………やっと……やっと会えたんだ…って、私の心が言ってるんです、おかしいですよね……」
俺はそんな彼女に一歩一歩 近づき、その震える手に そっと触れた。その感触は俺に確信をくれた。嬉しさで胸が埋め尽くされ、俺もまた 無意識に微笑んだ。
『俺もです。………待たせてごめんって……俺の心が言ってます………』
――前世や来世なんて 空想めいた事は信じない。けど、今日だけは例外だ。
俺は 地面に落ち、崩れたケーキを愛おしく胸に抱く。生クリームでスーツは汚れ、手はベタベタ。涙でぐしゃぐしゃの顔、格好悪い事この上ない。しかし、今はそんな事 関係ない。俺は彼女の瞳を真っ直ぐ見つめた。
『どんだけ時間……かかっちまったんだろうな』
――前世の約束を 今ここで。
『迎えに来たぞ、名前』
「お邪魔します…」
『…おう、いらっしゃい。上がれよ』
「………うん」
彼女はパンプスを脱ぐと、綺麗に揃えて玄関脇にそっと置いた。リビングに招き入れると、彼女は鼻を すんと鳴らす。
「あ…甘い香り…。もしかして、ケーキ?」
彼女もまた俺と同じで、浮かない表情のまま、口角だけを上げてみせた。
『誕生日は 毎年手作りのケーキが良いんだろ。まあ………こうして祝えるのは、これが最後なんだけどな』
苦笑しながら 飾り付け終わったショートケーキを彼女の前に差し出すと、ケーキを見つめる その目に涙が伺える。
「……通司くん…ごめんね…ごめんなさい……私」
『おいおい、ケーキに涙零すなよ。塩っぱくなっちまうだろう?』
精一杯の冗談を言ったつもりが、大きな効果はなく 彼女は両手で顔を覆い 静かに泣き始めた。
彼女と付き合い始めたのは、高校に入ってすぐだった。入学初日に 総北自転車競技部へ入部した際、マネージャーとして入部を希望したのが名前だった。笑われるかもしれないが、何となく目を合わせたその日、「ああ。俺、彼女と結婚するんだ」そんな思いが頭をよぎったのだ。彼女もまた、俺に好意を抱いてくれていて、恋人になるのは ごく自然な流れだった。
辛い練習の時、雨の中 死にものぐるいで走ったスプリントの計測、主将になった時。俺の想い出にはいつも彼女がいて。彼女が隣に居ない人生など、考えられる訳がなかった。そう、あの時までは。
『泣くなよ…名前、涙 温かいんだ。生クリーム 溶けちまう』
手を伸ばし、不器用な指先で彼女の目尻の涙を拭う。それでも、蛇口を捻ったように 溢れる涙は止まる事はなかった。
「……私の家のせいで………本当にごめんなさい……」
『……』
彼女の生まれは、古くから絶えず継がれる大層立派な家柄で、昔から許嫁が居たと聞いている。彼女は、俺と今後の人生まで考えた上で、両親に頭を下げ続けたものの、最後までそれが許可される事はなかった。その日の夜 泣きじゃくりながら駆け落ちを持ちかけ 俺の家にやってきた際、彼女の父親があとを付けていて。直接「名前と別れて欲しい」と頭を下げられたのだ。大金を差し出しながら。
俺は混乱と葛藤の末、金は受け取らない。代わりに彼女に苦労のないようにして欲しい、そう伝え 彼女と正式に別れる事になったのだった。
「…通司くん……」
彼女が俺の胸に顔を埋める。俺は両手できつく彼女を抱き締めた。
『……でも良かったよ。誕生日まで待ってもらえて』
毎年 彼女の誕生日は俺のショートケーキで祝う決まりになっている。父親に別れて欲しいと懇願された際、「彼女に苦労のないように」その条件の他に 今年の彼女の誕生日だけは 祝わせて欲しいと頼んだのだった。
「…うん……」
『ケーキ、食うか?』
「頂きます」
熱湯に晒した包丁で、ホールケーキを六等分に切り分ける。毎年の通り、中には苺と生クリームをこれでもかと言うくらい沢山。
「美味しそう」
『召し上がれ』
そう言うと、彼女は銀色のフォークを手に取り、ケーキをすくうと 静かに口元に運んだ。
『旨いか?』
「……うん…うん…美味し……美味しい」
涙声でショートケーキを頬張る彼女に胸が痛む。ふと、フォーク以外にも 銀色に光るものが目に止まった。
『……指輪、貰ったんだな』
左手の薬指には、きらりと光る 銀色の指輪。その言葉に、彼女は沈黙する。しん、と静まり返る部屋に 少ししたあと、彼女の か細い声が響いた。
「……本当はね、これ……通司くんから…欲しかった…」
『………名前』
「私に似合う…可愛い指輪、通司くんが選んで渡してくれて……嬉しいって…私も笑って…」
『…っ…』
「それでっ…結婚式も、っ…隣には通司くんが居て……ッ……二人で幸せに、なろうねって……笑いあって……そうなるんだって…思ってたのに……こんな……こんなの…」
薄い肩を震わせ、彼女は消え入りそうな声で辛そうに涙する。
「…通司くんが…いない人生なんて……こんなの嘘だよ……ねえ……通司くん…!…」
言葉の最後は張り詰めた 叫びのようになっていて。俺は彼女を抱き締める腕に力を込めた。
『俺も。名前が居ない人生なんて、嘘だと思ってる…。誕生日 祝えるのが、今日で最後だってのも 信じられねえ…』
食べかけのケーキの生クリームが 溶けて崩れて行くのを見て、まるで二人を投影してるかのようなそれに 俺は奥歯を噛み締めた。しかし、俺は「でも」と続けて。
『俺さ、前世とか来世とか、そんなん信じちゃいねえんだけど』
「…え?」
突然の空想話に 彼女は困惑し顔を上げた。
『俺らが 本当に結ばれる運命なら、次の世界で 必ず出会うって信じてる。俺が高校入学初日、名前に出会った時さ、きっとこいつと結婚するって直感でそう思った』
「……」
『それってさ、多分 前世のどこかで 一度出会ってたんじゃねえかなって…思うんだよ』
溶け出した生クリームからは 甘い匂い。彼女と過して来た 数えきれない程の想い出が蘇る。例え崩れたとしても、消えるわけじゃない。形を変えても、それは想い出として 残り、忘れ去られる事など無いのだ。
『だからさ、次の来世か、またいつかの来世で。俺たちは必ず出会う。……いや。俺が名前を必ず迎えにいく』
「…っ…通司くん。……私も。私、必ず 通司くんを見つけるね。顔や声が変わってたとしても……っ…絶対、絶対見つけるからね…!…」
溢れて来そうな涙を留め、俺は顔を上げた彼女の唇にキスを落とす。
「通司くん……愛してる」
『俺もだ。……愛してるよ、名前』
俺たちは熱い抱擁のあと、思い出せる記憶を全て噛み締めながら、最後の交わりをした。
___________________
なんだって ショートケーキが食べたくなるんだろう。たまには 栗のモンブランや フルーツが乗ったタルトでも食べればいいのに。何故か たまに、無性にショートケーキを食べたくなるのだ。
俺は仕事帰りに最寄り駅の一番近くにある 小さなケーキ屋へ立ち寄った。昔からある洋菓子店で、夕方は意外と空いている穴場の店なのだ。仕事の疲れにはビールを なんて、同僚は口々に言うが 俺にはケーキが一番効く。
店のドアを開け すぐに目を向けるのは、ショートケーキが並ぶショーケース。今日は売れ行きが良かったのか、いつもより残数が少ない。しかし、幸いにもワンピースだけは残っており、俺は しめたと早歩きでショーケースへ足を向けた。すると、レジ前で優しい女性の声が響く。
「すいません、ショートケーキ、お一つ下さい」
……一足遅かった。店員は最後のショートケーキを丁寧に箱へ包み、女性は嬉しそうに会計を済ませる。仕方がない、また明日来よう。そう思い 洋菓子店を後にした。ふと 後ろから、店のドアのベルが鳴る。先程の彼女が店から出て来たのだろう。何となく振り返ったその時、俺の心臓は強く跳ね上がった。そうして、それはまた彼女も同じのようで。
「……あ………あの……。こ…こんな事言うの、私……少し変なんですけど……」
動揺した彼女の手は震えていて、瞬間にショートケーキの入った箱は重力に負け 地面に落ちて行った。俺もまた 心臓の高鳴りを抑える事など出来なくて。
『俺も……な、なんだろう……、なんだ…』
無意識に頬を伝って熱い涙が流れて行く。彼女の大きな瞳からも 大粒の涙が止めどなく溢れていて、それが地面に転がったケーキに落ちて行く。
途端に 身体に電気が走ったかのような感覚に襲われた。
――なんだ。ケーキに涙が…落ちて……。嘘だろ……なんだこれ…誰の記憶だ………もしかして………俺の。俺の記憶なのか…。
記憶を遡ろうとするも、はっきりとした情景は浮かんでこない。もどかしい思いに駆られるも、何故か 胸がとてつもなく熱くなる。すると それは彼女も同じようで。大粒の涙を頬に伝えながら、眉を八の字にし微笑んだ。
「…本当、おかしいんです…良く…思い出せないのに……」
涙が落ちていくショートケーキに目を向けながら 彼女は続けた。
「………やっと……やっと会えたんだ…って、私の心が言ってるんです、おかしいですよね……」
俺はそんな彼女に一歩一歩 近づき、その震える手に そっと触れた。その感触は俺に確信をくれた。嬉しさで胸が埋め尽くされ、俺もまた 無意識に微笑んだ。
『俺もです。………待たせてごめんって……俺の心が言ってます………』
――前世や来世なんて 空想めいた事は信じない。けど、今日だけは例外だ。
俺は 地面に落ち、崩れたケーキを愛おしく胸に抱く。生クリームでスーツは汚れ、手はベタベタ。涙でぐしゃぐしゃの顔、格好悪い事この上ない。しかし、今はそんな事 関係ない。俺は彼女の瞳を真っ直ぐ見つめた。
『どんだけ時間……かかっちまったんだろうな』
――前世の約束を 今ここで。
『迎えに来たぞ、名前』