弱虫ペダル
name change
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『名前さん。はい、これ』
「あ、小鞠くん。ありがとう」
昼休み。私は、満面の笑みの小鞠から、両手に乗るサイズの重箱を受け取った。
高級そうな重箱には、小さな桜が散っている。私は、小鞠を目の前に その蓋を開けた。
「わあ、今日は桜餅。美味しそう」
重箱の中身は一口サイズの桜餅が並べられている。甘い香りがふわりと広がり、思わず喉を鳴らしてしまった。
『喜んでもらえて良かったです』
ニコリと笑うと、サラサラの髪が揺れた。つられて私も、無意識に口角が上がる。
初めて小鞠から“差し入れ”を貰ったのは一週間前だった。なぜ私に?と問うも、いつも上手く はぐらかされ、未だにその理由が分からない。しかし、彼の差し入れのセンスは良く、疲れているような時は甘酸っぱいもの、暑くて汗をかく気温の時は、やや塩気のあるもの。箱を開ける度、色んな事に良く気がつく子だなと関心する。
「小鞠くん、いつも言ってるけど。小鞠はもうマッサージャーじゃなくて、一流の選手なんだから。マネージャーの私に差し入れなんて気を遣わなくていいのよ」
きっとまた、はぐらかされるだろう。差し入れは確かに嬉しい。しかし、せめて毎日差し入れをしてくれる理由を知りたいものだ。
すると小鞠は、一瞬目を丸くしたあと、おかしそうに笑った。
『気なんて遣っていませんよ。ボクが名前さんに 渡したいだけです。いつも見えない所で部を支えてくれるマネージャーへの感謝の気持ちですよ』
「そっか、ありがとう。でも、作るの大変じゃない?練習の時間削ってないよね?」
『ボクのタイムは落ちてないはずですよ。それはマネージャーである名前さんが、一番理解しているのでは?』
確かにタイムが落ちたり、コンディションが悪いようには見えない。自転車以外にも、きっと息抜きも必要だ。人それぞれ ストレス発散の方法だって違うし、彼の息抜きがこの差し入れと言う名のお菓子作りであれば、わざわざ咎める必要もない。
「そうだね、マネージャーの私が口出ししてごめんね。桜餅、美味しく頂くね。いつもありがとう」
『どういたしまして。美味しく食べてくださいね……。美味しく、その口で…頬張ってくださいね』
目を細め、笑みを浮かべながら小鞠は、サラサラの髪を風に揺らして私の元を去っていった。
気付けば 午後の授業が始まる予鈴が鳴り、私はパタパタと教室へ向かう。廊下の角を曲がる途中。
「あ、御堂筋くん」
『名前、走ったらぶつかるやろ。気い付けや』
「ごめんね」
小鞠と一緒の自転車競技部で、エースの御堂筋。危なく彼にぶつかってしまう所だった。
体躯が良い彼にぶつかったら、きっと私の身体は軽々 跳ね飛ばされて、小鞠の差し入れも駄目になっていたかもしれない。
ふと御堂筋の目線が私の手にしてる 黒い重箱に向けられた。
『キミ、また小鞠クンに貰ったん?』
「うん、今日は桜餅だって」
すると、御堂筋が笑いを堪えるよう、必死に
口を手で塞ぐ。
「あの男、意外に よう我慢しよる…ぷぷ…」
「…ん? 何の話?」
不思議に思い首を傾げるが、御堂筋は依然 笑いを堪えるのに必死だ。
「でも、ボクが思うに。あの男の我慢は今日までやで。キミ、明日は今までよりずっと美味しい物が食べれる思うよ? ほな、また部活で」
そう言い残すと、御堂筋は 面白ろおかしそうに笑いながらが ゆらゆらと何処かへ向かっていった。
「今までより、ずっと美味しいもの…?」
私は両手に乗る、重箱の中の桜餅を見つめた。
_______________
「小鞠くん。重箱返すね、ありがとう」
翌日の昼休み。空になった重箱を私は、小鞠に手渡した。
『いえいえ。桜餅、お味はいかがでしたか?』
「凄く美味しかった。今まで色んな差し入れを貰ったけど、昨日の桜餅が一番美味しかったかも。…て、貰ってる身で順番付けるなんて 失礼だよね」
眉を八の字にして笑うと、小鞠もつられて笑った。
『そんな事ありませんよ。名前さんが その口で……ボクの作った物を美味しく頬張っていたかと思うと…ああ……もうハァハァものです』
「…こ、小鞠くん…?」
ジリジリと彼との距離が縮まる。ふと気付いた。今日、小鞠は いつも差し入れしてくれる重箱を手にしていない。
いつの間にか壁に追いやられ、小鞠の長く細い両手が私の逃げ道を断つ。
近づいて初めて分かる、彼の熱い吐息。
『名前さん、ボク。今日まで精一杯 我慢しました。知ってますか?我慢して…我慢して…限界まで我慢した後に食べた時の肉は、今までとは比べ物にならない程 格別なんですよ』
彼は熱く漏れた吐息と一緒に、私の唇を自分のそれで塞いだ。
「…んっ、待って…!…小鞠くん」
『待ちましたよ……昨日で限界でした』
私は、御堂筋に言われた言葉を思い出す。
――でも、ボクが思うに。あの男の我慢は今日までやで。
『初めは ボクの作った物を食べる名前さんの唇を見ているだけで満足していました。けど、見ているうちに どんどん自分が我儘に…本能が剥き出しになっていくんです…』
「こ、小鞠くん…ちょっと…ダメだってば…!」
押し返そうとするが びくともしない。身体は細くても やはり男性である事に変わりはなくて、小鞠の力強さに圧倒される。
『そのうち、名前さん。ボクはあなたの唇が食べたくて仕方がなくなってしまいました。ボクはボクの本能に逆らう事が出来ません』
「…んッ…!」
荒い息を漏らし、何度も唇を重ねてくる。いつの間にか 背中に手を回され、身じろぎ一つ出来ない。気付けば彼の薄い唇から、熱い舌が伸び、私の口内を侵食する。
「…ふ…あッ……」
『ああ、この感触がたまらない…!…我慢した甲斐がありました。名前さん、あなたさっき。ボクからの差し入れで、昨日の桜餅が一番と言ってましたが、きっとこっちの方が 絶対美味しいですよ…アハ…』
舌が何度も絡まり、頭がジンジンして、何も考えられなくなってくる。
背中に回された手がスルスル下に降り、スカート越しに私のお尻に触れた。瞬間、身体が反応し、小さくヒクついてしまう。
『唇がこんなに美味しいんですからっ…他ももっと…美味しいんでしょうね…アハ…ああ、ああ、名前さんの全てを 全身で感じたい…!…あぱァ…!』
「小鞠くん、待っ…!」
小鞠の目は瞳孔が開き、血走りが見える。
ふと視線が重なると、妖艶な笑みを見せて 私の耳元で語りかけるのだ。
『待てませんよ…。ボク、我慢の出来ない男なので』
そう言うと、彼は息つく暇も与えず、再び私の唇を塞ぐ。スカート越しに触れられていた手は既に素肌に触れていた。
長いキスのせいで頭が ぼうっとする私は ついに抵抗をやめる。
小鞠を押し返そうと必死になっていた両手を だらりと下ろした。
「あ、小鞠くん。ありがとう」
昼休み。私は、満面の笑みの小鞠から、両手に乗るサイズの重箱を受け取った。
高級そうな重箱には、小さな桜が散っている。私は、小鞠を目の前に その蓋を開けた。
「わあ、今日は桜餅。美味しそう」
重箱の中身は一口サイズの桜餅が並べられている。甘い香りがふわりと広がり、思わず喉を鳴らしてしまった。
『喜んでもらえて良かったです』
ニコリと笑うと、サラサラの髪が揺れた。つられて私も、無意識に口角が上がる。
初めて小鞠から“差し入れ”を貰ったのは一週間前だった。なぜ私に?と問うも、いつも上手く はぐらかされ、未だにその理由が分からない。しかし、彼の差し入れのセンスは良く、疲れているような時は甘酸っぱいもの、暑くて汗をかく気温の時は、やや塩気のあるもの。箱を開ける度、色んな事に良く気がつく子だなと関心する。
「小鞠くん、いつも言ってるけど。小鞠はもうマッサージャーじゃなくて、一流の選手なんだから。マネージャーの私に差し入れなんて気を遣わなくていいのよ」
きっとまた、はぐらかされるだろう。差し入れは確かに嬉しい。しかし、せめて毎日差し入れをしてくれる理由を知りたいものだ。
すると小鞠は、一瞬目を丸くしたあと、おかしそうに笑った。
『気なんて遣っていませんよ。ボクが名前さんに 渡したいだけです。いつも見えない所で部を支えてくれるマネージャーへの感謝の気持ちですよ』
「そっか、ありがとう。でも、作るの大変じゃない?練習の時間削ってないよね?」
『ボクのタイムは落ちてないはずですよ。それはマネージャーである名前さんが、一番理解しているのでは?』
確かにタイムが落ちたり、コンディションが悪いようには見えない。自転車以外にも、きっと息抜きも必要だ。人それぞれ ストレス発散の方法だって違うし、彼の息抜きがこの差し入れと言う名のお菓子作りであれば、わざわざ咎める必要もない。
「そうだね、マネージャーの私が口出ししてごめんね。桜餅、美味しく頂くね。いつもありがとう」
『どういたしまして。美味しく食べてくださいね……。美味しく、その口で…頬張ってくださいね』
目を細め、笑みを浮かべながら小鞠は、サラサラの髪を風に揺らして私の元を去っていった。
気付けば 午後の授業が始まる予鈴が鳴り、私はパタパタと教室へ向かう。廊下の角を曲がる途中。
「あ、御堂筋くん」
『名前、走ったらぶつかるやろ。気い付けや』
「ごめんね」
小鞠と一緒の自転車競技部で、エースの御堂筋。危なく彼にぶつかってしまう所だった。
体躯が良い彼にぶつかったら、きっと私の身体は軽々 跳ね飛ばされて、小鞠の差し入れも駄目になっていたかもしれない。
ふと御堂筋の目線が私の手にしてる 黒い重箱に向けられた。
『キミ、また小鞠クンに貰ったん?』
「うん、今日は桜餅だって」
すると、御堂筋が笑いを堪えるよう、必死に
口を手で塞ぐ。
「あの男、意外に よう我慢しよる…ぷぷ…」
「…ん? 何の話?」
不思議に思い首を傾げるが、御堂筋は依然 笑いを堪えるのに必死だ。
「でも、ボクが思うに。あの男の我慢は今日までやで。キミ、明日は今までよりずっと美味しい物が食べれる思うよ? ほな、また部活で」
そう言い残すと、御堂筋は 面白ろおかしそうに笑いながらが ゆらゆらと何処かへ向かっていった。
「今までより、ずっと美味しいもの…?」
私は両手に乗る、重箱の中の桜餅を見つめた。
_______________
「小鞠くん。重箱返すね、ありがとう」
翌日の昼休み。空になった重箱を私は、小鞠に手渡した。
『いえいえ。桜餅、お味はいかがでしたか?』
「凄く美味しかった。今まで色んな差し入れを貰ったけど、昨日の桜餅が一番美味しかったかも。…て、貰ってる身で順番付けるなんて 失礼だよね」
眉を八の字にして笑うと、小鞠もつられて笑った。
『そんな事ありませんよ。名前さんが その口で……ボクの作った物を美味しく頬張っていたかと思うと…ああ……もうハァハァものです』
「…こ、小鞠くん…?」
ジリジリと彼との距離が縮まる。ふと気付いた。今日、小鞠は いつも差し入れしてくれる重箱を手にしていない。
いつの間にか壁に追いやられ、小鞠の長く細い両手が私の逃げ道を断つ。
近づいて初めて分かる、彼の熱い吐息。
『名前さん、ボク。今日まで精一杯 我慢しました。知ってますか?我慢して…我慢して…限界まで我慢した後に食べた時の肉は、今までとは比べ物にならない程 格別なんですよ』
彼は熱く漏れた吐息と一緒に、私の唇を自分のそれで塞いだ。
「…んっ、待って…!…小鞠くん」
『待ちましたよ……昨日で限界でした』
私は、御堂筋に言われた言葉を思い出す。
――でも、ボクが思うに。あの男の我慢は今日までやで。
『初めは ボクの作った物を食べる名前さんの唇を見ているだけで満足していました。けど、見ているうちに どんどん自分が我儘に…本能が剥き出しになっていくんです…』
「こ、小鞠くん…ちょっと…ダメだってば…!」
押し返そうとするが びくともしない。身体は細くても やはり男性である事に変わりはなくて、小鞠の力強さに圧倒される。
『そのうち、名前さん。ボクはあなたの唇が食べたくて仕方がなくなってしまいました。ボクはボクの本能に逆らう事が出来ません』
「…んッ…!」
荒い息を漏らし、何度も唇を重ねてくる。いつの間にか 背中に手を回され、身じろぎ一つ出来ない。気付けば彼の薄い唇から、熱い舌が伸び、私の口内を侵食する。
「…ふ…あッ……」
『ああ、この感触がたまらない…!…我慢した甲斐がありました。名前さん、あなたさっき。ボクからの差し入れで、昨日の桜餅が一番と言ってましたが、きっとこっちの方が 絶対美味しいですよ…アハ…』
舌が何度も絡まり、頭がジンジンして、何も考えられなくなってくる。
背中に回された手がスルスル下に降り、スカート越しに私のお尻に触れた。瞬間、身体が反応し、小さくヒクついてしまう。
『唇がこんなに美味しいんですからっ…他ももっと…美味しいんでしょうね…アハ…ああ、ああ、名前さんの全てを 全身で感じたい…!…あぱァ…!』
「小鞠くん、待っ…!」
小鞠の目は瞳孔が開き、血走りが見える。
ふと視線が重なると、妖艶な笑みを見せて 私の耳元で語りかけるのだ。
『待てませんよ…。ボク、我慢の出来ない男なので』
そう言うと、彼は息つく暇も与えず、再び私の唇を塞ぐ。スカート越しに触れられていた手は既に素肌に触れていた。
長いキスのせいで頭が ぼうっとする私は ついに抵抗をやめる。
小鞠を押し返そうと必死になっていた両手を だらりと下ろした。