弱虫ペダル
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相変わらずハードな部活を終え、部員達は それぞれ帰路へ着いていく。
部員達は 皆ストイックだ。帰ってからもトレーニングなどを欠かす事はないだろう。
終始、身が引き締まるような ピリピリした雰囲気の部内だったが。
『先輩〜。もう掃除終わらせて早く帰ろうよ』
彼一人だけは “相変わらず”彼らしさを貫いているようで。手に掃除用のブラシを持つだけで、一向に床を磨こうとしない。
「帰りたいなら、早く掃除終わらせよう?」
この日の掃除当番は、後輩の真波と マネージャーの私。同学年で 主将の泉田には「真波を頼んだぞ」と言われてしまっていた。
頼まれたからには しっかり真波に掃除をさせ、早めの帰路に着きたい所だったが…。
『夜は雨が降るからって、天気予報で言ってたよ? 今帰らないと雨に降られちゃうよ』
「なら、早く終わらせて 雨が降らないうちに帰らないとね」
『ちぇ〜』
真波は口を尖らせ、やっと掃除する気になったかと思うと、ブラシを投げ出し椅子に座り始めた。
「ちょっと 山岳。私の話し聞いてた?」
『…』
「山岳ってば」
呆れて ため息を着きながら問うと、ふと真波が小さく呟いた。
『来る』
「え?」
瞬間、窓の外が光り 大きな雷が鳴る。
「…きゃっ!…」
途端に 窓を激しく叩くようなスコールが降り始めた。雷は かなり近い場所で鳴っているようで、耳を塞ぎたくなるような轟音を響かせる。
驚く私とは 反対に、真波は楽しそうに笑った。
『ね、 言ったでしょ』
少し悔しくもあったが、真波の言う通り 早めに切り上げて帰った方が良かったか…。
しかし、泉田に頼まれた以上、真波に促されて帰った、というのも気が引ける。
「…しょうがない。雨が止むまで 雨宿りしよっか」
『やった』
「雨宿りしてる間に 掃除終らせるよ」
真波は私の言葉に ふふん、と何故か自慢気に笑うのだ。
『ん〜。掃除…出来るかなあ〜。俺は無理だと思うよ』
「どうして?」
『今からね。なんにも見えなくなるから』
「え?」
すると、真波の言う通り、それはまるで魔法でも使ったかのよう。
大きな音をたて 落雷が近くに落ちる。
瞬間、部室の電球の光がパッと消え、真っ暗になった。
「っや……!…嘘…停電っ…!?」
急に暗くなり、目が慣れず 慌てていると、真波の落ち着いた声が聞こえる。
『先輩、名前先輩。大丈夫だよ』
「さ、山岳…」
『学校や部室だけじゃなくて、ここら辺 一帯が停電してる。慌てて動くと危ないし、復旧するまで待とう、ね?』
「…う、うん…ありがとう」
いつもヘラヘラ笑って、空きあらば寝ている真波が、急に頼もしく思えた。
しかし、窓を叩く激しい雨と、耳に響くような 落雷はまだ続いている。
大きな音と 暗がりの部屋で、不安だけが募っていった。すると、暗がりの中 私の様子が見えていないにも関わらず、真波が口を開いた。
『先輩、俺。ここにいるから平気だよ』
「……山岳………怖いよ……」
つい本音が出てしまう。雷くらいで怖がっているなんて…笑われる、そう思ったが。
『名前先輩、前の方に 手伸ばして』
「え…こう…?」
おずおずと手を伸ばすと、温かい真波の指先と触れた。
『そ、おいで』
「…ち、ちょっと…きゃっ…!」
指と指が触れた途端、真波が私の手首を掴み、自身に引き寄せた。暗くて良く見えないが、彼の体温を背中全体に感じる。
どういった状況か、理解するのに さほど時間は要さなかった。今 私は、椅子に座った真波の膝の上にいる。
「さ、山岳っ、やだ、私重いよ…!」
『重くないよ〜、軽い軽い。それにさ』
真波は逃げようとした私を引き止めるよう 両手を回し、後ろから抱きしめた。
「…っ…!」
『くっついてれば、先輩、怖くないでしょ?』
全て見透かされてるような気がして悔しかったが、私は 変な意地を張るのを諦めた。
「…うん。ねえ…山岳。さっきから 山岳が言う事、全部当たってるよね」
『え?』
「雨が降るとか、雷で停電するとか……私が怖がってるのも当てちゃうし…」
すると、少し間を開けて、真波は笑いながらが答えた。
『そうだなあ……。あ!俺 魔法使いなんだよね』
「……」
荒北曰く“不思議チャン”を発揮する彼に、私が言葉をつまらせていると、ふいに 真波に名前を呼ばれる。
『名前先輩』
「…なに?」
そうして、後ろから抱きしめいる 真波の方へ振り向くと、唇と唇が微かに触れた。
「……さ、山岳…」
突然のキスに目を丸くする私に 真波は静かに呟く。
『魔法使いの話し、信じてないでしょ』
「…」
『今のキスは、先輩が俺を好きなる魔法』
身体が熱い…。
真波が私を抱きしめる腕に 力が入る。
さっきから この男に翻弄されてばかり。心臓の跳ねる音すら、静かな部室に響いてしまいそう。
――本当に魔法にかかってしまったみたい…。
真波の手がそっと伸びてきて、私の頬に触れる。
『名前先輩。言い忘れたけど』
「…山岳?」
暗がりで何も見えないはずなのに、真波のいたずらな表情が見えた気がした。
『この魔法、強力だから』
部員達は 皆ストイックだ。帰ってからもトレーニングなどを欠かす事はないだろう。
終始、身が引き締まるような ピリピリした雰囲気の部内だったが。
『先輩〜。もう掃除終わらせて早く帰ろうよ』
彼一人だけは “相変わらず”彼らしさを貫いているようで。手に掃除用のブラシを持つだけで、一向に床を磨こうとしない。
「帰りたいなら、早く掃除終わらせよう?」
この日の掃除当番は、後輩の真波と マネージャーの私。同学年で 主将の泉田には「真波を頼んだぞ」と言われてしまっていた。
頼まれたからには しっかり真波に掃除をさせ、早めの帰路に着きたい所だったが…。
『夜は雨が降るからって、天気予報で言ってたよ? 今帰らないと雨に降られちゃうよ』
「なら、早く終わらせて 雨が降らないうちに帰らないとね」
『ちぇ〜』
真波は口を尖らせ、やっと掃除する気になったかと思うと、ブラシを投げ出し椅子に座り始めた。
「ちょっと 山岳。私の話し聞いてた?」
『…』
「山岳ってば」
呆れて ため息を着きながら問うと、ふと真波が小さく呟いた。
『来る』
「え?」
瞬間、窓の外が光り 大きな雷が鳴る。
「…きゃっ!…」
途端に 窓を激しく叩くようなスコールが降り始めた。雷は かなり近い場所で鳴っているようで、耳を塞ぎたくなるような轟音を響かせる。
驚く私とは 反対に、真波は楽しそうに笑った。
『ね、 言ったでしょ』
少し悔しくもあったが、真波の言う通り 早めに切り上げて帰った方が良かったか…。
しかし、泉田に頼まれた以上、真波に促されて帰った、というのも気が引ける。
「…しょうがない。雨が止むまで 雨宿りしよっか」
『やった』
「雨宿りしてる間に 掃除終らせるよ」
真波は私の言葉に ふふん、と何故か自慢気に笑うのだ。
『ん〜。掃除…出来るかなあ〜。俺は無理だと思うよ』
「どうして?」
『今からね。なんにも見えなくなるから』
「え?」
すると、真波の言う通り、それはまるで魔法でも使ったかのよう。
大きな音をたて 落雷が近くに落ちる。
瞬間、部室の電球の光がパッと消え、真っ暗になった。
「っや……!…嘘…停電っ…!?」
急に暗くなり、目が慣れず 慌てていると、真波の落ち着いた声が聞こえる。
『先輩、名前先輩。大丈夫だよ』
「さ、山岳…」
『学校や部室だけじゃなくて、ここら辺 一帯が停電してる。慌てて動くと危ないし、復旧するまで待とう、ね?』
「…う、うん…ありがとう」
いつもヘラヘラ笑って、空きあらば寝ている真波が、急に頼もしく思えた。
しかし、窓を叩く激しい雨と、耳に響くような 落雷はまだ続いている。
大きな音と 暗がりの部屋で、不安だけが募っていった。すると、暗がりの中 私の様子が見えていないにも関わらず、真波が口を開いた。
『先輩、俺。ここにいるから平気だよ』
「……山岳………怖いよ……」
つい本音が出てしまう。雷くらいで怖がっているなんて…笑われる、そう思ったが。
『名前先輩、前の方に 手伸ばして』
「え…こう…?」
おずおずと手を伸ばすと、温かい真波の指先と触れた。
『そ、おいで』
「…ち、ちょっと…きゃっ…!」
指と指が触れた途端、真波が私の手首を掴み、自身に引き寄せた。暗くて良く見えないが、彼の体温を背中全体に感じる。
どういった状況か、理解するのに さほど時間は要さなかった。今 私は、椅子に座った真波の膝の上にいる。
「さ、山岳っ、やだ、私重いよ…!」
『重くないよ〜、軽い軽い。それにさ』
真波は逃げようとした私を引き止めるよう 両手を回し、後ろから抱きしめた。
「…っ…!」
『くっついてれば、先輩、怖くないでしょ?』
全て見透かされてるような気がして悔しかったが、私は 変な意地を張るのを諦めた。
「…うん。ねえ…山岳。さっきから 山岳が言う事、全部当たってるよね」
『え?』
「雨が降るとか、雷で停電するとか……私が怖がってるのも当てちゃうし…」
すると、少し間を開けて、真波は笑いながらが答えた。
『そうだなあ……。あ!俺 魔法使いなんだよね』
「……」
荒北曰く“不思議チャン”を発揮する彼に、私が言葉をつまらせていると、ふいに 真波に名前を呼ばれる。
『名前先輩』
「…なに?」
そうして、後ろから抱きしめいる 真波の方へ振り向くと、唇と唇が微かに触れた。
「……さ、山岳…」
突然のキスに目を丸くする私に 真波は静かに呟く。
『魔法使いの話し、信じてないでしょ』
「…」
『今のキスは、先輩が俺を好きなる魔法』
身体が熱い…。
真波が私を抱きしめる腕に 力が入る。
さっきから この男に翻弄されてばかり。心臓の跳ねる音すら、静かな部室に響いてしまいそう。
――本当に魔法にかかってしまったみたい…。
真波の手がそっと伸びてきて、私の頬に触れる。
『名前先輩。言い忘れたけど』
「…山岳?」
暗がりで何も見えないはずなのに、真波のいたずらな表情が見えた気がした。
『この魔法、強力だから』