星と宿命と小さな決意
+名前+
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「・・・・・詳しくはわかりません。」
しばしの沈黙のあと、小さな声で答えるナナシ。
ラオウが目を細める。
「確かに私のいた世界ではこの世界は物語の中の世界でした。」
再び視線を下げて語るナナシの話を、ラオウはただ黙って聞いていた。
「あれだけのことを話しておいてなんだと思われるかもしれませんが・・・
今の私にはこの世界での今現在が、私が読んだ物語のどのあたりを進んでいるところなのかわからない。
物語とまったく同じストーリーで進んでいるのか、それとも少し違うストーリーで進んでいるのか・・・
あらゆることに対して、今の私には確証が得られない。
それから・・・私は物語をまだ完結まで読めていないので・・・。」
ちらりとラオウに視線を戻すと、ラオウは何も応えず、黙って続きを促した。
「確かに、あなたは拳王で、私はそれを知っていた。
昨日の話であなたは私の話を信じてくれたから、あなたの生い立ちはきっと私の知っている話で合っていたんだと思いますが・・・」
合っていたからこそ、ラオウはその話に驚き、ナナシを拾うことにしたのだろう。
事実、ナナシにはこの世界が今どのあたりのストーリーなのかわからなかったが、おそらくナナシがこの世界にやってくるまでは、少なくとも拳王が拳王として君臨しているところまでは知っている物語と同じストーリーで進行してきているのだと思われた。
ここで一日過ごしながら、ナナシはいろんなことを考えていた。
ナナシは物語の登場人物には含まれていない。
しかしなぜかこうしてこの世界にやってきて、物語の中でもかなり重要と言える人物に関わってしまっている。
こうして接触してしまったことで、この人の、この世界の未来は変わってしまっているのではないだろうか。
実際、こうしてラオウと自分が話しているこの環境がすでに、物語とは異なってしまっているのだ。
たとえば、現時点を自分の知り得る物語の中である程度の見当をつけて未来を語ってみたところで、果たしてそれが事実この世界の未来として進行するのだろうか?
うまく説明できる自信はなかったが、ナナシは精一杯言葉を紡いでいった。
「だからといってすべてが私の知っている物語と同じだという確証はないし、実際こうしてあなたと話している私は、物語には登場しない存在なんです。
・・この世界にはなかったはずのもの・・
私がここに来たことで、この世界の流れは私が知っているものとはすでに少し違ってしまっているんじゃないかと思うんです。
無責任に未来だと思われることを話して、人の人生を狂わせたくない。」
ラオウは変わらずただ黙って話を聞いている。
その表情からは、何を思っているのかはうかがい知れなかった。
沈黙は話の先を促しているのだと受け取って、ナナシは話を続けた。