星と宿命と小さな決意
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夕刻、ラオウが戻ってくるまでナナシは厨房と洗濯房で手伝いをして過ごした。
ほとんどが洗濯房での大量の洗い物作業だったせいで、ナナシは時間が来るまで作業にすっかり没頭していた。
ラオウが戻ったことを聞いたナナシは、言いつけられた仕事がおおかた片付いてからラオウの元へ向かった。
最上階にあるラオウの部屋へと続く、長い廊下と階段がことさら長く感じる。
広く長い螺旋階段を登りきって、見覚えのある扉にたどり着いたナナシは、今朝と同じく重い扉の前でひとつ深呼吸をして心を落ち着けると、扉を叩いて中にいるであろうラオウに声をかけた。
今度は、朝とは違い聞き覚えのある声が「入れ」と短く応えた。
「・・失礼します・・」
重い扉に体重をかけてゆっくりと開くと、その隙間から体を滑り込ませる。
ラオウは大きなソファとテーブルの側に向こうを向いて立っていた。
すでに外套や兜は身に着けていない。
数歩だけ進んで、立ち止まる。
「あ・・の、拾っていただいて、ありがとうございます。」
数秒の沈黙の後、まずは礼を述べた。
どういった理由であれ、野たれ死にはせずに済んだのだ。
食事だって厨房で恵んでもらった。
あのままあの荒野にいたなら、ナナシは今頃どうなっていたことだろう。
ラオウはちらりとナナシを見やると、ゆっくりとこちらを向いた。
二人の目が合ったが、あまりに力強い眼差しに、思わずナナシはその視線を逸らしてしまった。
改めて対峙すると、その威圧感に思わず委縮しそうになる。
感動と緊張とで、ナナシの胸中は少し複雑だった。
「・・この世界が、お前の世界では物語りだったと言ったな」
静かに発せられた声に、俯いていたナナシは顔を上げる。
「ならば知っているはずだ。この世界はこの先どうなる」
あれだけ誰も知らないはずのことを話して見せたのだから、そう聞かれるのは至極当然のことだ。