夢の始まり
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目の前で淡々と話す小さな女を見下ろして、ラオウは表情を崩さないままに内心少々動揺していた。
この女は一体何を言っているのだ。
女が言うにはこの世界は物語の中の世界で、女は自分の世界からこの世界に突然やってきたのだと言う。
そんな話をそう易々と信じられるはずがない。
この世界とは別の世界がどこかに広がっているなど、誰が信じられようか。
しかし。
ナナシは続けた。
ラオウの過去、当の本人たち以外の誰も知り得ない話をしてみせたのだ。
リュウケンに拾われたこと、養子になるまでの経緯、他その修行時代から今までのことなどを。
これにはラオウも驚いた。
自分しか知らないようなことまで話されては、信じざるを得ない。
まだ半信半疑ではあったが、その話を信じるとして、この女を一体どうするべきか。
「その話が本当だとして、お前は一体何を望む?」
ラオウは問う。
素通りして生かし放っておくには、あまりにいろんなことを知っている。
ここで消しておくべきか、それとも・・・―――
「どうか・・どうかこのまま私を連れて行ってはもらえませんか。」
ラオウの眉がピクリと動く。
相変わらずの威圧感に怯みそうになるが、ナナシはしっかりとその目を見て話を続ける。
周りの男たちの槍の先はナナシに向いたままだ。
不審で気味が悪いと思っているのだろう。
奇異の目がナナシに注がれている。
元の世界に帰りたい。
そしてその帰る方法は、ラオウの側で探したい。
ラオウは黙っている。
必死に、そらさずに目を見て希うナナシ。
「覇道の邪魔はしません。どうか・・お願いします!」
ふたりは黙って見つめ合う。
周囲がその妙な緊張感漂う二人を見守る中、ざらりと撫でるように怪しい風が通り過ぎていった―――