夢の始まり
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「何事だ。」
頭上からの低い声と、凄まじいほどの威圧感。
激しく波打つ動悸とこみ上げる吐き気を何とか押さえ込んで、先ほどまで人だったものの残骸の上に乗る巨大な蹄の先を見上げると、大きな黒馬と大きな男がこちらを見下ろしていた。
圧倒するようなその鋭い眼光に、思わず逃げ出したい衝動に駆られる。
それもまた必死に押さえ込んで、ゆっくりと立ち上がる。
目の前にいる馬のなんと大きいことか。
その馬に乗った男もまた、かなりの大男であった。
馬上の男は兜をかぶり、赤い外套を風になびかせている。
この人がここの将軍か、それとも王様か。
兜や装飾品を見たところ、地位の高い人であることに違いはなさそうだ。
しかしナナシはここでもまた違和感を感じていた。
この光景も、どこか見覚えがあるような気がするのだ。
男は黙ってその威圧的な目でナナシを見下ろしていた。
「ケンオウサマ!!」
いつの間にか側に来ていた男たちが、馬上の男を見上げて恐れの色を浮かべている。
ケンオウサマ、と呼ばれた男はじろりと辺りを一瞥すると無言で状況の説明を促した。
「この女が迷いこんだようで・・」
「いかがしましょう・・!?」
この絶体絶命の危機を回避する方法を混乱する頭で必死に考えていたそのとき、ナナシはふとあることを思い出した。
ケンオウサマ。
ナナシはこの言葉を聴いた覚えがあった。
拳王様。
とある話の中で、恐怖による世界の統治を行ったとある兄弟の長兄。
恐ろしくも強く、男らしいその人を人は拳王と呼んでいた。
その拳王が体を預ける騎馬も、漆黒の巨馬だった。
しかしそれはお話の中の世界のことだ。
今現在、ナナシの目の前にいる馬上の男は、ナナシの知り得る拳王に良く似ていた。
漆黒の巨馬に騎乗し、こちらを見下ろすその鋭い眼光は何者をも圧倒するような威圧感を醸している。
あの拳王が現実に存在したとしたら、きっとこんな感じなのだろう。
この姿を見てすぐに思い出さなかったことが不思議なほどに、馬上の男の姿は拳王にそっくりだった。
あまりの恐怖に麻痺してしまったのか、意外にもナナシは冷静にそんなことを考えていた。
何となく沸いた勝手な親近感に、真っ直ぐに男の目を見つめて、ふと額に視線を移したナナシは再び目を見開くことになる。
見開いたナナシの視線の先にあったもの。
それは――――・・