日常と予兆
+名前+
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
黒王号と戯れたあの日から3日後。
ナナシは今日も城の中を走り回っていた。
これはナナシにとっても、城で暮らす者にとっても日常になりつつある光景だった。
ただ、ナナシにとってひとついつもと違っているのは、これがラオウの言いつけで走り回っているということだ。
いつもナナシがどこで何をしていようが特に声をかけられることなどなかったというのに、今朝は突然本人から直接用事を言いつけられたのだ。
あまりに唐突で、ナナシは一瞬自分の耳を疑った。
思わず反射的に聞き返してしまうと、案の定じろりと睨みつけられてしまったが、一体どういう風の吹き回しだろうか。
勢いで急ぎ飛び出してきたが、ナナシはほんの僅かでも近づけた気がして嬉しくなっていた。
廊下は走りません。
現代で育った者は幼い頃から学校で教わってきたことだ。
ナナシも例に漏れずそう教わってきた。
しかしナナシは今、城内を移動するときは基本走って移動するようにしている。
最初はもちろん抵抗があった。
物陰から出てきた人にぶつかるかもしれないし、もちろん全力疾走しているわけではないとはいえ、常に走るというのは疲れもする。
しかし、顔を合わせて日の浅い兵士達からの命にかかわるちょっかいは、顔見知りの兵士たちのおかげもあってかなり少なくはなったものの、いまだになくなってはいない。
走るのは命を守るためでもあった。
立ち止まったりゆっくり歩いたりしていると、兵士たちの目に止まってしまうのだ。
まれに追いかけてくることもなくはなかったが、日常的に疲れている兵士たちが、ただナナシを見かけたというだけで走ってまで追いかけてくることはそうそうない。
そうして走り回って、ナナシは初めてのラオウのお使いをやり遂げた。
ラオウはいつも通りそっけなかったが、この日を境に日常の小さな用事をナナシに言いつけるようになった。
ナナシもそれを喜んで引き受けた。