星と宿命と小さな決意
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しかしここでナナシはふと気がついた。
初めのころに感じた圧倒的な威圧感が、薄れている。
すくみ上りそうなほどにひしひしと感じられていた重たい空気が、今はそれほど感じられない。
はっとしてラオウを見上げると、無表情でこそあるものの、険しさがなくなっていた。
「・・・よかろう。
好きにするがいい。」
ナナシはあっけにとられた顔で、ラオウを見つめていた。
言っておいてなんだが、こんなにあっさりOKしてくれると思わなかったのだ。
「・・・お前にも何か星の宿命があるのかもしれん。
黒王号に免じて命は助けてやろう。
拾った命で、どこまで生き抜けるか見ものだな。」
フン、と一瞬笑って、ラオウは背を向けた。
これで話は終わりだとばかりに、奥の部屋へ向かっていく。
「あ、ありがとうございます・・!!」
その様を呆然と見ていたナナシは、今にも奥の部屋に消えそうな背中に向かって慌てて礼を述べると、ぺこりと一礼して部屋を後にした。
あのラオウが、命を拾ってくれた。
話を信じてくれて、そして、傍にいることを許してくれた。
ナナシは嬉しさに踊る心を落ち着かせながら、長い廊下を歩いていた。
聞き出そうと思えば、いくらでも方法はあったのだ。
拷問するなり、それこそ得意の北斗神拳を使うなり、どうとでもなったはずなのだ。
それを、ラオウは待ってくれるという。
しかも、ラオウの傍でそうしていいという。
これが嬉しくないはずがあるだろうか。
この先、何がナナシを待ち受けているのか。
どんなことがナナシの身に起きるのか。
そして元の世界に戻ることが出来るのか、その方法をどうやって探すべきなのか。
そのすべてが予測すらつかないことばかりだったが、ナナシは不思議と不安を感じなくなっていることに気が付いた。
やはりラオウも言ったように、自分にも何か宿命があるのだろうか・・
すっかり日が落ちて、いつの間にか灯されている蝋燭の明かりだけが照らす薄暗い廊下を歩きながら、窓の外に広がる星空を見上げてナナシは立ち止まった。
星は静かに瞬いている。
この世界へ来たことが何かの宿命なのなら、まずはその宿命を見つけよう。
ラオウの元で、とにかく自分にできることをやってみよう。
初めてしっかりと北斗七星を見上げて、ナナシは決意する。
七つの星を見つめるナナシを撫で吹く風は、穏やかだった。