クエストNo.X


かなりのお節介焼きだと、シュルクは仲間達から言われた事がある。
機神兵との戦いの旅をしながらも困っている人を見るとついつい声を掛け、解決の手伝いをしてしまう。
旅の途中で解消できる悩みばかりだったのが幸いだ。
自分がお節介焼きである事に関しては、それに対して不平不満一つ言わずに、むしろ喜んで付き合う仲間達も同等だと笑って返していたシュルク。

しかしこのスマブラ世界に来てからと言うもの、何かあれば首を突っ込んでしまう性分は相当目立ち、ファイター達の間では悩みや困り事を解決してくれる便利屋のような認識となってしまっていた。
シュルクとしては、別にそれでも構わなかった。
ファイター達はシュルクを便利屋のように認識しているとは言え、問題や仕事を無理に押し付けるような真似はしない。

シュルクの方も、歴史や認識・常識の全く違うファイター達と早く打ち解けたくて、頼って貰えるのが嬉しくて、自分から積極的に声を掛けて行った。
だから、ファイター達が暮らすピーチ城の廊下、マルスが窓際で外を眺めながら溜め息を吐いたのを、シュルクは見過ごさない。


「マルス、どうかした?」

「シュルク。いや別に……。……ああ、いや、ちょっと悩み事というか、考え事というか、そんなので」


悩みや苦しみを誰かに打ち明け相談するのが苦手なマルスは、一瞬だけ黙っておこうかとしたものの、シュルクの性格と行動を思い返して相談してみる事にした。
マルスのような悩みを内に溜めてしまいがちな者でも相談しやすいという、お節介焼きな性格と相性の良いシュルクの特長だ。


「詳しく聞かせてもらえる?」

「ありがとう。実はそんなに大した事じゃないんだけどね。アイクさんの事」

「彼がどうかした?」

「……何でこんなに体格差がついちゃったのかと」


スマブラ界が新しくなり仲間の再編成が行われた折、アイクの体格が変わっていた。
どうやら21歳の姿らしいが、ただでさえ筋骨隆々な体だったのが更に強化され身長まで伸びてしまった。
以前の姿を思い出し、あれで成長が打ち止めでなかった事に驚かされる。
体格が以前と全く変わらないマルスは、すっかり差をつけられてしまった訳で。


「馬鹿馬鹿しい悩みだとは分かっているんだけどね。こうして差がつくのが、どうも寂しくってさ」

「分かるよそれ。僕の親友も体格が良くてね、昔は大して変わらなかったのにどうしてここまで差がって、落ち込むまでは行かないんだけど、何となく寂しくなっちゃったりして。彼の本質は何も変わっていないのに、変わった部分ばかりに目が行ってしまうんだよね」

「そうそう、そうなんだ! 分かってくれる!?」


思いがけない理解にマルスの声色が弾む。
自分でも下らないと思っていたから尚更嬉しい。

友人だけではない、世界は常に目まぐるしく変わる。
今回の再編成だってそう、色々なものが変わってしまいなかなか追い付かない。
そんな中、身近な友人の著しい変化がたまたま目についただけの事だ。


「シュルクはさ、世界が反転したみたいに環境が変わった事ってあった?」

「あったよ、何度も。引っくり返り過ぎてどこが表か分からなくなったくらい」

「そんな時に、君の言う親友は君を支えてくれたんだろうね、きっと」

「勿論だよ。彼だけじゃない、他にも大切な仲間が居て僕を支えてくれた」


そう話すシュルクの顔は嬉しそうで、掛けがえない仲間達への想いが窺える。
その自然な笑顔を見たマルスは安心したように息を吐き、何でもない笑顔で。


「ようやく普通に笑ってくれたねシュルク」

「えっ?」

「緊張してたのかな。何だか今まで、笑顔や動作がぎこちないように思えて」

「……誘導された? と言うかちょっと待って、僕そんなに作り笑いしてたの!?」

「少し緊張とか、無理してるように見えただけ」

「言っておくけど、お節介を焼くのは無理なんかしてないよ。便利屋扱いだってむしろ嬉しいくらいだ」

「分かってるよ。付き合いはまだまだ短いけど、君が僕達に気に入られようとして気を使っている訳じゃない事くらい。お節介焼きは君の元々の性格だよね」

「……いや、まあ。お節介を焼く事で交流を多くして、早く打ち解けたかったのは否定しないけどさ」

「シュルクは、この世界に来てから誰かの悩みや困り事を聞いてばかりで、自分が誰かに話す事は全くしてないだろ。僕と似たタイプかなと思って」


誰かから相談される、頼られるのは嬉しいけれど、自分が誰かに相談するのはどうも苦手……。
マルスはシュルクも、きっと似たようなタイプだろうと読んでいた。
その通りだったシュルクは、言い当てられた事ではにかんで笑う。
まさか相談に乗っているようで、知らない間に乗らせていたとは。


「一本取られた……」

「あ、相談内容は嘘なんかじゃないよ。以前の姿でもそれなりに体格が良かったのに、あれから成長するなんて羨まし過ぎる! 僕なんかほぼ成長止まってるのに不公平だ!」

「以前はアイクってどれくらいの体格だったの?」

「アルバムがあった筈だから見せようか。一緒に部屋まで来てよ」


相談もどこへやら、すっかり遊び気分になった二人はマルスの部屋へ向かう。
お節介焼きの新人も自信を付け、お節介抜きでファイター達と交流できそうだ。

よかった、これで解決ですね。




*END*
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