やっぱ恋だな!


街へ買い物に出たら、占い爺さんからお互い愛し合ってるなんて言われたエフラムとリーフ。
帰ってからもその事で妙に意識してしまい喧嘩を繰り返す毎日だ。
……いや、喧嘩を繰り返すのは以前からお決まりの恒例行事なのだが。
真冬のスマブラ界、ピーチ城の庭は久々の雪で一面の銀世界になっていた。
折角だからと庭に出てハシャぐファイター達の中に当然彼らの姿も。


「リーフ! いま雪玉ぶつけたのお前だろう!」
「あ、ごめーん。白くて団子みたいだったから雪だるまかと思ったー」
「俺は断じて白くも団子でもない!」


それを周りでニヤニヤ……ではなく微笑ましく見守っているのが、前回 占い爺さんを買収して二人のゴールインを画策したファイター達である。
喧嘩ばかりのエフラムとリーフはきっとお互い好き合っているのだと、物凄ーく勝手に解釈し、好き放題二人をくっ付けようとしているのだった。


「おーい、お前ら雪合戦に参加しねえかー?」
「いいぞヘクトル、望む所だ。戦法が何であれ、俺は勝ってみせる!」
「全く子供っぽいなあエフラムは。たかが雪合戦に熱くなって」


言いながらリーフは雪玉を作っている最中。
言葉にも行動にもイラっと来たらしいエフラムは、素早く雪玉を作り上げリーフ目掛けて投げる。
雪玉はリーフの横顔に見事命中してしまった。


「……」
「勝つ自信が無いなら引っ込んでいろ、勝負の邪魔になるからな」
「だ、れ、が! お前に勝つ自信が無いって!? 望むところだ、僕も雪合戦に参加するよ!」
「恥をかくだけだぞ」
「その言葉、そっくりそのまま返すね!」


また喧嘩を始めた二人をニヤニヤ……ではなく微笑ましく見守るファイター達だった……。

数人ずつチームに分かれて雪で防波堤を作り、その後ろから相手目掛けて雪玉を投げて勝負する。
ぶっちゃけ明確な勝ち負けなど無く、ただ大騒ぎ出来ればそれでいい。
勝ち負けにこだわるファイターは各自でルールを決めて勝負していた。
そして雪で作られた防波堤の一つ、雪の壁の後ろで不機嫌そうな表情を浮かべているのは彼らだ。
当たり前にエフラムとリーフで、強制的にペア決めされてやる気は出ない。


「大体エフラムがさ、普段から乱闘の時に僕とペアを組みたがるから周りに誤解されるんだろ!?」
「また何でも俺のせいにするのか! じゃあなぜ拒否しない? 溜め息を吐くばっかりで拒否の言葉など聞いた事がないぞ」
「……その溜め息で嫌がってるって分かってよ」
「そんなこと知るか、そんなに嫌なら次からキッパリ拒否するんだな」
「はいはい分かりましたよ僕が悪いですよ、拒否しますから僕と君は金輪際関わらないって事でOKなんですね!」
「断る!」
「こっちだって!」


…………。


話の流れはいつも通りだった筈なのに、勢いに任せて放った最後部分が明らかにいつもと違った。
思えば二人は普段から喧嘩して罵り合ってはいるものの、離れる事に関しては言った事が無い。
言ったとしても、どっか行けなど相手に遠ざかってくれと願うばかりで、自分から離れると宣言して実行した事は無かった。
今リーフが会話の最後に拒否するだの金輪際関わらないだの言ったのが、二人にとって初めて自分から遠ざかる発言だった。
そしてそれを聞いたエフラムは断固拒否し、リーフもそれに同意した。

きっと今までお互いに思っていたのだろう、相手はきっと離れたりしない、自分から遠ざからない限り関係は変わらないと。
だから安心して相手に離れろと言うばかりで、自分から離れたりしなかった。

お互い余計な事に気付いてしまったとばかりに顔面蒼白になる二人。
だが確かにこの関係が消滅してしまう事を考えると、じんわり胸が痛むような嫌な気持ちになる。
周りで大騒ぎするファイター達の声がやけに遠く聞こえ、辺りが静まり返ったようにも感じて……。


「えーい!」
「ぶっ!!」


……雪玉が二人めがけて飛んで来て、モロに直撃してしまった。
そちらを見ればカービィが楽しそうに雪玉を手にしていて、隣にはロイの姿も見受けられる。


「あたったー、ろい、あたったよー!」
「よくやったカービィ、この調子で皆もポケモンゲットだぜ!」


どうやら二人は雪玉をモンスターボールに見立てて遊んでいるらしい。
エフラムとリーフにぶつけて満足したのか、けらけら笑いながら去って行く。
そちらを呆然と見ながら黙っていたエフラムとリーフだったが、姿が仲間達の中へ紛れる前にいきり立ち雪玉を作った。
そのまま二人揃ってロイとカービィを追う。


「待てロイ、カービィ! 人の物を取ったら泥棒だろうがっ!」
「勝負だ勝負、まだ捕まってないよ僕らは!」


さり気にエフラムが爆弾発言をした事にお互い全く気付かない。
他の仲間にも雪玉をぶつけられたりぶつけたりしながらロイとカービィを追うが、なかなか二人の姿が見付からなかった。
また、エフラムのせいだとかリーフのせいだとか言い争っていると、他方向からリンクとアイクに雪玉で狙われる。
とっさに近くにあった雪の防波堤の裏に二人して隠れた所へ、丁度アイスクライマーとトレーナーのレッドのポケモン達が飛び掛かって来た。
柔らかな雪で作られた防波堤は呆気なく崩れ、エフラムとリーフは二人して埋まってしまう……。


「エフラム、リーフ、生きてるかー?」
「ああ、うん、ちゃんと生きてるよエリウッド」
「この程度では死なんし怪我も何もない」


倒れて体だけ埋まったまま、心配して近寄って来たエリウッドの方を見もせずに応える二人。
飛び掛かって来たアイスクライマーとポケモン達は、けらけら笑いながら走り去って行く。
もう追い掛ける気力も湧かなくて、あ゙ー、なんて息を吐くだけだった……。


そしてその日の夕方、存分に遊び終えて満足したファイター達の横で、エフラムとリーフがいつも通りに喧嘩を始めた。
今日の雪合戦で散々だった事に関する責任のなすり付け合いだ。
しかしその内容に結構な変化が表れている。


「大体エフラムがいけないんじゃないか! なんか、急に、変なこと……言い出すからっ!」
「変な事を言い出したのはお前の方だ! 別に俺は、思った事を、そのまま言った……だけで……」


お互いに妙な意識をしてしまってから口喧嘩に勢いが無くなっている。
どうにも気のやりようが見付からなくなったか、少し黙り込んだ後は武器を振り回して勢いに任せた喧嘩を始めてしまった。
スマブラファイターの一部で発足した『エフリーをくっ付け隊』は、この成果に大満足だったり。
既に次はどんな作戦で二人を意識させてやろうかと練っているようだ……。
そんな仲間達の思いもつゆ知らず、エフラムとリーフは喧嘩を続けている。


「あああもうエフラムが悪い全部悪いっ! 僕の調子が出ないのも全部全部お前のせいだっ!!」
「いい加減にしろ、こっちこそ言わせて貰うがな、俺がおかしな事を言ってしまったのも全部お前のせいだからな!?」


今の状況では責任のなすり付け合いさえ、恋愛感情を肯定しているような物だ。
それにも気付かず、エフラムとリーフは周りのニヤニヤ……ではなく微笑ましい視線を浴びながら喧嘩を続けるのだった……。




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