そりゃ恋だな!
「いい加減にしろっ!」
また今日も、スマブラ界のピーチ城に2人の怒鳴り声が響く。
エフラムとリーフの喧嘩は最早、名物のようになっていた。
「いつもいつも、そうやって人を小馬鹿にしか出来ないのかお前は!」
「何だよ、初めに突っかかって来たのはエフラムの方じゃないか!」
至る事が原因・きっかけになるので、もういつだって喧嘩は起きる。
大体つまらない事なので皆は微笑ましく見守っているのだが。
エフラムとリーフはお互いに睨み合う。
最初は保っていた一定の距離も意味を為さなくなり、掴み合い、果ては殴り合いも始まりそうな距離まで近寄った。
「君が何かにつけて僕を勝手にライバル視して、一々勝負を申し込むわ、何かやる時に違う人とペアを組むと怒るわ……」
「お前を完膚なきまでに叩きのめすまでは挑戦し続ける!」
「め い わ く だ!!」
何だかんだ言って、結局付き合うリーフもリーフなので説得力が薄い。
ちなみに、エフラムがリーフに負け続けている……と言う訳ではないので、悪しからず。
「呆れた……人の迷惑ってものを考えられない奴なんだな、エフラムって」
「迷惑なら断ればいい。お前が結局付き合うから、いいかと思うんだ」
「僕のせいか!?」
「そうだ!」
まだ、ぎゃあぎゃあと言い争う2人。
それを見ていたロイが、思い出したように手を叩いて2人に近寄った。
「エフラム、リーフ。そう言えば、二人に街まで行って欲しかったんだ。言うの忘れる所だった」
「はぁ……? ロイ、何で僕がエフラムなんかと……」
「“なんか”って何だ」
また言い争いが始まりそうになった雰囲気を無理矢理戻して、ロイは2人にメモ用紙と財布を渡した。
一体何かと怪訝な表情をする2人へ、ロイは実ににこやかな表情を浮かべて。
「おつかい、行ってらっしゃい」
エフラム、リーフ、初めてのお使い。
++++++
「大体! 何で! 僕が! こんな奴と! 買い物なんか!」
「リーフ、それ言うの何回目だ」
「30回ぐらい?」
不機嫌も露わに吐き捨てるリーフ。
エフラムもどことなく機嫌が悪い。
街まで出たはいいが、常に一定の距離を保って歩く2人は何だか滑稽だ。
さっさと頼まれた物を買って帰ろうと、メモを見てみると……。
「“店が散らばってるから二手に分かれてね”……って何だ、別に一緒に行動しなくてもいいんだ」
「ならさっさと分かれるぞ。メモをよこせ」
「何でだよ! メモは僕が持つから、エフラムは暗記して行けば!?」
「それこそ何でだ!」
また言い争いが始まり、ようやくメモをコピーすればいいのだと思いついた2人は、近くのコンビニでコピーして二手に分かれた……。
買い物をしながらグチグチと文句を言うリーフ。
ここの所、口を開けばエフラムへの文句が多い。
「何でアイツってあぁなんだろう……。一々突っかかって来るなっての!」
自分も一々反応している事については棚上げだ。
リーフのエフラムに対する文句は止まらない。
「この前なんか、チーム戦で乱闘するペアを決めてたら勝手にペア登録してたしさ、折角あと1歩で吹っ飛ばせそうだった相手を勝手に倒すし……」
いくらでも出て来る文句に自分が疲れ始めた頃、急に誰かに呼ばれた。
そこの少年よ、と弱々しいがはっきり通る声。
見れば何だかヨボヨボした爺さんが、路地の一角に机と椅子を置いて座っていた。
……何だか、どこかで見た事があるような爺さんだ。
「……何か?」
「お悩みのようじゃの。占って差し上げよう」
「いや……別に」
断る前に、勝手に占い始める爺さん。
厄介事に巻き込まれる前に立ち去ろうとするリーフなのだが、意外に早く結果が出てしまった。
そう言えば何を占ったんだろうと気になった瞬間、爺さんは結果を告げる。
「お主はエフラムが好きなようじゃ」
………。
暫く時間が止まった後、叫び出して走り出すリーフ。
一方その頃、エフラムは。
「お主はリーフが好きなようじゃ」
似たような(つーか同じ)顔の爺さんに、似たような(つーか同じ)事を言われ、リーフと全く同じ行動をとっていた。
「(俺がリーフの事を好きだと……!? まさか!)」
「(僕がエフラムを好きだって!? 有り得ない!)」
思いっ切り意識しながら自分の事を振り返る2人。
そう言えばいつもエフラムが何をしようと結局付き合っていたのも、リーフにちょっかいを出したりペアを組むなら彼じゃないと気が済まないのも。
言われてみれば思い当たる節は沢山ある。
しかし、やはりどうしても認めたくない。
考えながら走っていたものだから、思いっ切りぶつかってしまった。
お互いがお互いに。
「……!」
“お主はエフラムが好きなようじゃ”
“お主はリーフが好きなようじゃ”
「絶対に嘘だッ!!」
2人は武器を構え、戦いを始めてしまった……。
++++++
その頃、ピーチ城。
スマブラメンバー達(FE男主人公達も含む)が、ひそひそと何かを話し合っていた。
「上手くいったかな……」
「大丈夫だろ、占い爺さんには念を押したからな」
「これで、2人がお互いを意識してくれたらいいんだけどね」
あのケンカペアを見て、きっと心の底ではお互いに好き合っていると……物凄く勝手に解釈したメンバー達。
占い爺さんに金を握らせ、お互いが相手の事を好きだと嘘を吹き込ませた。
何にしても、あの2人が意識すれば脈があると言う事。
そしてきっかけはどうあれ、2人はお互いに相手を意識した訳だ。
つまり作戦成功。
「早く、“結ばれておるぞ”になるように、きっちり頑張って貰わないと!」
こんな暗躍の事などつゆ知らず、エフラムとリーフの2人は、相手を意識した自分の不甲斐なさをぶつけるかのように武器を振り回していた……。
*END*
1/1ページ