相談しましょ


スマブラ界ピーチ城、カービィがちびっ子仲間と共に、広々とした庭をぽよぽよと跳ね回っていた。
その様子を物陰から眺めるのはカービィの保護者的立場のメタナイト。
過保護を通り越し、周りの者達からはストーカーなどと呼ばれている事は、本人は知る由も無い。


「うむ、カービィは今日も周りの子供達より一段と可愛らしい」


……これなら、ストーカー呼ばわりも無理はない。
本人も過保護は認めているが、それ以外の事に関しては隠しているつもりらしい。
物陰から子供達(実際メタナイトが見ているのはカービィのみ)を眺めているのは端から見れば変質者。
そこへ通りかかったのは、メタナイトの行為が下心など無い純粋な親心だと信じて疑わない、メタナイトに言わせれば良き理解者のマルスだ。


「メタナイト卿、子供達の護衛ですか。お疲れ様です」

「あぁマルス、平和な世界になったとは言え、もう何も起こらないとは限らぬからな。城の敷地内なら安全かもしれないが、一応は用心の為だ」

「本当に、ご自分の時間を削ってまでそうするなんて……尊敬します、卿」


メタナイトの真の目的がカービィのストーキングだと知ったら、さすがのマルスも幻滅してしまうだろう。
まぁ一応護衛という目的も果たしてはいるので、周りの仲間達も止めたりはしないのだが。
マルスは少し考え、メタナイトの隣に並んで物陰から子供達を見守る。
メタナイトが何事かと視線を送ると、僕もご一緒しますと申し出てくれた。
どうかと思ったが、純粋な親切心を断る訳にもいかず承諾する。
暫く黙って子供達を見守っていた二人だが、ふとマルスが声を掛けて来た。


「あの、卿。こんな時に何ですけれど……ちょっと相談してもいいですか?」

「どうした、悩み事か」

「はい。最近、夜によく眠れない日が続くんです」

「それはいけないな。何かストレスに思う事でも?」

「はぁ……実は、よく分からない何かで、眠るのが不安になってしまって」


近頃、眠っているハズなのに何かの気配を感じる事があるという。
何をして来るでもなく、熱い視線とヒソヒソした話し声だけがするそうだ。
幽霊じみた何かかと思うメタナイトだが、
次のマルスの言葉に、その予想を根底から覆す事になる。


「それで…問題は、その何かが、その、……やたらと僕を誉めるんです」

「……誉める?」

「はい。僕としては些か不名誉なのですが、……マルス可愛いだの、綺麗だの……。僕からはとても言えないような事まで。恥ずかしくて、おちおち眠ってなんかいられないんです」

「……」


ストーキングを日課とするメタナイトには、大体の予想がついてしまった。
そう言えば夜中に起きた時、マルスの部屋がある方へ向かって行く男達を見た事があると思い出す。
ロイだのアイクだのリンクだのピットだの……。
時たまガノンドロフまで居た時は、さすがに心配になってしまったものだが。


「マルス、それは私が思うに、魔法だの心霊だの何だのの、超常的なものではない。今日からは部屋にしっかり鍵を掛けておく事だ」

「それは何者かが侵入しているという事ですか……? 分かりました、ピーチ姫にお願いして、頑丈な鍵を用意して貰います」


これが知れたらマルスに想いを寄せる男達からは非難囂々だろうが、良き理解者であり、素直に可愛く慕って来る彼の為ならば何でもない。


「(まぁ一番可愛いのはカービィ、お前だからな)」


誰も必要とは思わないフォローを入れつつ、可愛らしく跳ね回るカービィへ密かにラブ波を送る。
マルスはそれをどう見間違えたか、真摯に子供達を見守っていると勘違い。


「(やっぱりメタナイト卿は素晴らしい人だな。僕も見習わないと……)」


そんなメタナイト卿と、真夜中に自室へ侵入して来る「何か」が同類に当たるとは、マルスは微塵も思っていないようだ。
やがて子供達が遊び終わり、わぁわぁと城の中へ駆け戻って行く。
その後に離れて続きメタナイトとマルスも城の中へと戻って行くのだが。


「あっ、“めた”! いっしょにおやつたべよー!」

「! カービィが呼んでいる……行かねば! 待っていろカービィすぐに行く!」

「卿!」


メタナイトに気付いたカービィが彼を呼び、お呼ばれした事に嬉々として応じるメタナイト。
それを呆然と見送ったマルスは、こんな雰囲気を最近どこかで感じたような気がしてならない。


「……気のせい、かな」


それが、真夜中に自室へ侵入する「何か」と同じ雰囲気だと、彼が気付かない事を祈る……。





*END*
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