癒されたいっ!
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スマブラファイター達が暮らしているピーチ城。Dr.マリオの助手として働いているセルシュは戦えないものの、ファイター達を癒す大切な存在。
彼女はカービィと特別に仲が良く、癒し系コンビとして親しまれていた。ぽよぽよとしか喋れないカービィと穏やかなセルシュのやり取りは可愛らしさに溢れている。
そんな二人を特別大切にしているのが。
「ほれ、二人とも菓子いるか?」
「いいの? ありがとうデデデ」
「ぽぉよっ!」
デデデ大王である。もはや孫に向けたお爺ちゃんレベルの甘やかしっぷりはファイター達の語り草。
勿論デデデも、セルシュはともかくカービィが歴戦の戦士である事は重々承知。それでもこんなに愛らしければ仕方ない、と開き直っている様子。戦いの最中でさえなければいくら甘やかしても構わないだろうと、今日もべったべたに可愛がっていた。
ファイター達が集まるサロンの一角、3人並んでソファーに座りデデデが用意した菓子を食べる。ほわほわした空気に多くが和みムードに侵食されるが、当の本人達は雰囲気の伝播に気付いていない。
「ねぇデデデ、次の乱闘はカービィと組むんでしょ」
「おう。何故かカービィと組むと勝率が悪くなるからな、今回こそは勝ち越してみせるぞ!」
「ぽよ、ぽよ!」
今度こそ任せてよ、と言いたげに胸(?)を張るカービィ。デデデの言う通り、何故か二人が組むと勝率が妙に悪くなってしまう。何とかしようと二人は少しずつ戦いの研究を重ねているようだ。
そんな彼らを見たセルシュは、嬉さを感じると同時に少しだけ寂しくなる。
「わたしは応援しか出来ないからなあ……わたしも一緒に戦えたら」
「何を言う! お前の応援がどれだけ力になるか分かっとらんのか!」
「わわっ!」
弱音を漏らした途端に凄い勢いで迫って来るデデデに押されるセルシュ。
ファイターである仲間達に対し戦えない事で引け目を感じていた彼女も、ネガティブな事を言う度に全力で否定して全力で持ち上げてくれるデデデのお陰で、マイナス思考が解消傾向にあった。
「寧ろ周りの連中に羨ましがられるぞ。ファイター達の癒しであるお前に特別に応援されるのは、ワシとカービィだけだからな!」
「う、羨ましがられてるの?」
「うむ! こんな特権、羨ましがられて当たり前だ! なぁカービィ」
「ぽぉい!」
カービィも実に嬉しそうに笑う。二人とも嘘偽りの無い笑顔が眩しくて、セルシュまで自然と笑顔になった。
……しかし。
羨ましがられれば当然、打倒の目標を持たれ易くなってしまう訳で。
選ばれしファイター達の事だから本気で敵視するような事は無いものの、他より標的にされるし相対した相手に力を入れられる。セルシュから特別に応援されているデデデとカービィが組めばそれはより顕著になってしまい……。
「……負けちゃったみたいだね」
今日の勝率もすこぶる宜しくなく、ちょっと沈んだ様子の二人が乱闘から帰って来た。特に、次こそは勝ち越すと誓った矢先の戦績が酷い有様となったデデデは、見るからに落ち込んでいる。
「すまんセルシュ、折角お前が応援してくれたというのに……」
「で、でも二人とも、戦ってる姿はカッコよかったよ! 今日負けたってまた次に勝てばいいじゃない!」
「うむ……」
また次に、と言われても、カービィと組むと毎回これなのでさすがに落ち込むようだ。まだ浮き上がって来ないデデデに、セルシュもカービィも困惑顔。
ふと顔を見合わせた二人がハッとする。多分同じ事を考えているだろうと理解した二人は頷き合うと、セルシュは手を伸ばし、カービィは飛び上がってデデデの頭に乗り、二人で彼の頭を撫で始めた。
「お……?」
「元気出してデデデ、また次も絶対に応援するから」
「ぽよ、ぽぉよっ」
「ほらカービィも、次は勝とうねって」
「お前達……」
デデデの目が見開かれ、大きな瞳がうるうると潤んで行く。それを乱暴に拭うと、デデデは二人をがばっと抱き締めた。
「よし次は、次こそは勝つぞ、お前達のためにも!」
「その意気だよ大王様っ」
「ぽよ!」
「うぅ、すまんな二人とも。ワシは幸せ者だっ……!」
いやちょっと大袈裟では……となっている周囲をよそに、何か家族もののドキュメンタリーでも繰り広げているかのような三人の姿。しかし呆れつつも微笑んでしまうのは、やはり彼らが持つ空気と雰囲気のお陰だ。もう本当に家族ではないかと思える光景は見ていて癒される。
……こっそりデデデまで癒し枠に編入されている事は、本人は知らない。
気合を入れた乱闘で戦績ガタガタな失態を披露してしまったデデデとカービィは、更に二人で特訓する事に。普段あんなに甘やかしているカービィと特訓など出来るのかと思うだろうが、戦いに関しては二人とも真剣な様子だ。故郷の星が危機に陥った事など一度や二度ではないので当然ではある。
リーチの短いカービィを大柄でパワフルなデデデが補い、隙が生まれ易いデデデを小柄で素早いカービィが補う。二人のコンビネーションは、戦いの事がよく分からないセルシュから見ても惚れ惚れするほど見事。
「やっぱり二人のコンビネーションは最高ね。どうして組むと勝率が悪くなるんだろう」
「うーん、それさえ分かればなぁ。セルシュよ、見ていて何か気付かなかったか?」
「わたし戦いの事はちょっと……」
カービィも困った顔を見せるが、あまり考え込むのが得意ではないのですぐに飽きてしまう。セルシュの応援を羨ましがられて多少力を入れられ易くはあるが、それくらいで勝率が著しく悪くなる事は無いだろう。カービィとデデデも他に引けを取らない立派なファイターなのだから。
デデデは座って二人を眺めていたセルシュの隣にやって来て腰を下ろす。早々に考える事に飽きたカービィが蝶々を追い掛けて走り回っているのを、ほんわかと眺め始めた。
「あーやって遊んどるのを見ると、とても巨悪を倒してきた星の戦士とは思えんな」
「ほんと。でも戦ってる時はカッコいいのよね。デデデも勿論、カッコいいよ」
「お前が折角そう言ってくれても、二人で組めば負け越しにしかならんしなぁ……」
「……どうしてだろうね」
それきり沈黙が訪れ、そよ風とカービィの走り回る音だけが聞こえるようになる。やがて蝶々追いにも飽きたらしいカービィがぽよぽよ二人を呼び、行こうか、と立ち上がってそちらへ向かうセルシュ達。
しかしほんの数歩 歩いた矢先、セルシュが躓いて転んでしまった。
「わっ!」
「セルシュ!」
予想外に派手にすっ転び、全身が地面に着いてしまう。転んじゃった、と笑おうとする前にデデデに抱き起され、一気に抱え上げられる。
「ちょ、ちょっとデデデ……!」
「医務室、医務室へ行くぞカービィ!」
「ぽよっ!」
駆け寄って来たカービィを引き連れ、セルシュを抱えたまま急ぎ城へ戻るデデデ。大袈裟に慌てられて転んだ事よりも恥ずかしくなったセルシュが何とか止めようとする。
「あ、あの、下ろして! ちょっと転んだだけじゃない!」
「どっか折れてたらどうする!」
「このくらいで折れるほどは弱くないから……!」
そう言っても下ろしてくれず、途中 数人のファイターと擦れ違ってしまう。デデデの勢いに言い訳も出来ないまま運ばれるセルシュは、顔を隠して恥ずかしさを誤魔化すしか出来ない。
「(もう、デデデの過保護は分かってたつもりだったけど、転んだだけで……!?)」
医務室へ勢いよく飛び込み「セルシュが転んだ!」と騒いだデデデに驚いたDr.マリオに謝って、セルシュはカービィに手伝って貰いながら自分で手当てをする。
ドクターに診てもらっても折れるどころか捻挫すらもしていなかったので、ひとまずホッとしたデデデは今、医務室で騒いだ事をドクターから説教中。膝と腕の一部を擦り剥いたくらいで、特に重症ではない。
説教が終わりしょんぼりした様子のデデデがやって来る。
「セルシュ、怪我は……」
「大丈夫、ちょっと擦り剥いただけ。心配してくれたのは嬉しいけど、大袈裟だよ」
「す、すまん……」
更にしょんぼりするデデデに、セルシュもカービィも苦笑。そんな彼らにドクターが声を掛ける。
「そうだデデデ、カービィ。お前ら二人で組んだら勝率が悪くなるの、悩んでただろ」
「ん? ああ」
「セルシュも気にしてたみたいだからな、参考になるかと試合を録画してたんだよ。見てみれば?」
「本当? 有難うドクター!」
思わぬ所からの助け舟に飛びつく三人。そう言えば今まで、自分達の試合を見た事など無かった。セルシュは観戦していたが、乱闘は多人数で激しく動く事が多いので、一人一人の動きをじっくり見るという訳にもいかない。
早速ドクターがくれた動画を再生し、戦いを確認してみる。すると一瞬、セルシュが何かに気付いた。
「……あれ? ちょっと、戻していい?」
「ああ」
それはカービィが対戦相手から攻撃を受けようとしていた場面。近くで反対を向き別の相手と戦っていたデデデが不自然な程に後退している。そしてカービィと彼が対していた相手との間に入り込み、相手の攻撃を受けていた。
「え……待って、これもしかして」
その一回だけではない。近くにカービィが居る場面では、デデデがほぼ毎回不自然な動きでカービィと対戦相手の間に入り込んでいる。今までは乱闘の激しい動きと流れに気を取られて気付かなかった。
「デデデあなた、まさか毎回カービィ庇ってたの!?」
「……あー、いや、そうだった……ような気も……」
「ぽぇ……」
カービィも気付かなかったのか、ぽかんとした顔でデデデを見ている。遠くに居る時はともかく、近くに居るとほぼ確実にカービィと相手の間に割って入っていた。
「それで作戦も動きもガタガタに崩れちゃってたんじゃない? 二人とも強いのに、どおりで組んだ時だけ勝率が悪かったのね……」
「ぽよっ、ぽよっ!」
「カービィも今回ばかりは怒ってるわよ。わたしの事もだけど、過保護は程々にしないと」
「うー……ん……」
セルシュとカービィを甘やかすのがもはや趣味と言っても過言ではないデデデは、どうにも頷けない様子。普段ならともかく、戦いの場においては良くない筈だ。
……普段なら。
「えっと、それじゃあ。戦いの時に控えてくれるなら、普段はデデデの思い通りにしてくれてもいいから」
「本当か!?」
「えっ」
思ったより食い付いて来られて、セルシュは面食らう。デデデの目はきらきらと少年のように輝いており……不味い事を言ってしまったかもしれないと思っても、後悔先に立たず。
結果、デデデは乱闘中 無暗にカービィを庇う事はしなくなった。そうすると見事なまでにぐんぐん勝率が上がったので、やはりそれが原因だったのだろう。
代わりに普段の生活の中で、今まで以上にセルシュとカービィをべったべたに甘やかし始め……。
「セルシュ、カービィ! 今日はどこか出掛けるか、好きな所に連れて行ってやるぞ!」
「……困ったね、カービィ」
「ぽよ……」
さすがのカービィも苦笑を見せるが、どうにも拒否は出来ない。
過保護と甘やかしは恥ずかしいものの、心のどこかで嬉しく思ってしまうのも事実なのだった。
*END*
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