Caterpillar panic!
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とある組織に属している為にファイターの一員ではないが、今やすっかり馴染んでしまったセルシュ。
一緒に暮らしているうち完全に仲間認定され、今や乱闘だのファイターの仕事だの色々やらされるようになってしまった。組織のボスも、この世界で多大な影響を持つファイター達に何かあった場合すぐ動けるからか、セルシュの身柄は今やファイター預かりになっている。
いつまでここに居れば……と思うものの、楽しいのは確かなのでどうにも拒否し辛い。
そんなセルシュに声を掛ける者が。
「セルシュ、頼まれてたビームガンの修理、終わったよ」
「シュルク。有難うございます」
ファイターの一人、シュルクだ。
彼は手先が器用で機械いじり等も得意、更にお節介焼きで首を突っ込む性分の為、時折ファイター達から頼み事をされていた。少々便利屋扱いを受けてはいるが、様々な物を貰ったり生活の当番を免除されたりとシュルクに得もあるので、よく引き受けている様子。
何より優しい彼は誰かの役に立つのをとても喜んでいるようで、今もこうして調子の悪かったセルシュの装備を修理していた訳だ。
「……うん、大丈夫みたいですね。助かりましたよシュルク、お礼は何が宜しいですか?」
「みんな毎回それ言うけど、お礼なんていいのに」
「受け取って貰えた方がこちらとしても気持ち良くお願い出来るんですよ。私達の為にも受け取って頂きます」
「そう? それなら受け取った方が良いかもね」
お礼を受け取るのも相手の為。人の頼み事は聞く割に自分が誰かへ相談するのは苦手なようだが、全く出来ないという訳ではないし、本当に出来た人。弱点なんて無いのではと思える彼だが、人当りも良いので完璧すぎる遠い存在という訳でもない。
勿論、実際は欠点も弱点もあるだろうけれど、それを感じさせない彼は見ていて気持ちがいい。
「そうだなー……。最近は特に欲しい物も無いし、当番も当分は先だし……」
「では定石ではありますが、食事でも奢りましょう」
「じゃあそれで」
遠出はせず近場の小さな町までバスで出掛ける事にした二人。辿り着いた町は山々に囲まれた自然豊かな場所。
ここに美味しいレストランがあるんですよ、なんて言いながら歩いていたセルシュの足元に、ぼとりと何かが落ちて来る。
それは一匹の毛虫。どうやら通り掛かった木から落ちて来たらしい。
「なんだ、毛虫ですか。ちょっとびっくりしましたね……さ、行きましょうシュルク」
「……」
「シュルク?」
声を掛けつつ歩み出したセルシュだが、何故かシュルクが毛虫を見つめたまま一歩も動かない。心なしか顔が青ざめており、少しだけ体が震えているような……まさか。
「あの。まさかシュルク……毛虫、苦手なんですか?」
「……じ、実は……」
弱点など無いのでは、と先ほど思った矢先の弱点発覚に、セルシュは少々呆気に取られてシュルクを見た。
人には得手不得手があるのでたかが毛虫で、とは思わないが、勇敢に戦い人助けの為なら少々の危険には躊躇わず突っ込んで行くシュルクだから、あまりに意外。何だか可愛らしく見えて来て、クスリと笑うセルシュ。
「大丈夫、もう落ちて来たんですから簡単に避けられますよ。何なら木の下は通らないようにしましょう」
「そ、そう、しようか……」
恥ずかしいと思っているのか、少し照れ臭そうに頬を染めたシュルクが木の下を迂回してセルシュの隣へ。
「はぁ……情けない所 見られた」
「私だって好きという訳ではないです、体にくっ付いたりしたら叫ぶかもしれません。情けなくなんてありませんよ」
「でもさ、例えば小さな子供とかに『毛虫が服に付いたから取って!』なんて言われても出来ないんだよ、それどう思う?」
「他の誰かに頼めば良いと思います。一人じゃないんですから、仲間の手を借りましょうよ」
「他に誰も居なかったら?」
「それは困りますけど、まあ命の危機でもありませんし、誰かを探せば良いと思います」
「……そっかなぁ」
「そうですよ。まあお節介焼き、お悩み解決のシュルクにも解決できそうにない事があるなんて、面白いとは思いますが」
「待って僕そんな風に呼ばれてるの?」
「今 考えました」
「ちょっとちょっと……」
と、そこまで会話した所で、二人の足がぴたりと止まる。二人は家々の間の道を歩き、広場に出た所。何だか先程からあちこちがざわめいているような気がしていたが、人が多いのかなと気にしていなかった。
しかし、広場から先。
建造物だの、木々だの、あちこちに毛虫が大量発生している。
これにはさすがのセルシュもぞわりと全身を総毛立たせたが、隣はそれ所ではない。
「……………………」
「シュルクしっかり!!」
ふらぁっと、顔を青ざめさせて倒れようとした彼を支えて止める。ハッとして再び体に力を入れ立つシュルクだったが、顔は青ざめたまま戻らない。
近くの町人を捕まえて事情を聞くと、今朝からこの有様だったらしい。そのまま話してくれた町人に頼まれる。
「丁度いい、あんたらスマブラファイターだろ、駆除を手伝ってくれないか!?」
ファイター達は時折、この世界に住む人々から依頼を受けて仕事をこなす事がある。ちょっとした遠出のお使いのようなものから悪人退治まで内容は多岐に渡り、害獣駆除もやった事があった。だからそれをするのは一向に構わないのだが。
「シュルク……大丈夫ですか?」
「……」
「大丈夫じゃなさそうですね」
「い、いや、やる。困ってる人を放っておけないよ」
「無理なさらないで下さい。町の人も駆除に奔走していますから、私一人でも手伝いは十分でしょう」
「いやそれが、頼みたいのはその辺の毛虫の駆除じゃないんだ」
町人が否定する。では何をやって欲しいのかと言葉の続きを待つが、その人は気まずそうに。
「町の奥の作農地帯にな、でっっっかい毛虫のバケモノが居るんだよ」
「えっ」
「でかいだけで普通の毛虫同様に襲ってくる訳じゃないんだが、その辺の植物を食い尽くす勢いでな、俺達の武器じゃ傷一つ付きやしねえ」
「……」
「頼む! このままじゃ町の植物や作物が全滅しちまうよ!」
思ったより深刻そうな事態に、セルシュはすぐさま走り出す。
「セルシュ!」
「私が行って来ますので、シュルクは町に居て下さい!」
走り去るセルシュをどうしても追えない。
巨大とはいえ特性は普通の毛虫と同じらしいので危険は少ないだろうが……万一の事があったら? 町の人達では傷一つ付けられなかったらしいが、もし傷付けられた瞬間に襲って来るようなモンスターだったら?
「……行かないと!」
意を決してシュルクは走り出した。
一方セルシュ、たどり着いた町の奥地にある農地。畑が一面に広がるそこに、一目でわかる真っ黒で異質な存在。
「お、おっき……」
優に20メートルはあろうかという巨大な毛虫。畑の作物をむしゃむしゃと食べており、襲って来るような気配は無い。気持ち悪さに竦みそうになる足を動かし、セルシュはビームガンを構えた。
「今日シュルクに修理して貰ったばかりの、ファイター仕様の特別製ですよ。覚悟しなさい!」
しっかり狙いを定めて……どこを狙えば良いのか分からなかったので、じりじりと回り込んで前方らしき方へ出る。弱点が分からないなら頭と思われる場所を狙う。直前まで尻込みしていても流石は場慣れした戦闘員、撃つ瞬間は迷わなかった。
ビームガンは普通の銃とは違って発砲音もごく小さい。発射されたビームは数発、確かに巨大毛虫の頭部と思われる場所を撃ち抜き……傷口から飛び散った体液がセルシュの居場所にまで飛んで来た。それが体に掛かった瞬間、痺れて動かなくなる。
「う、嘘っ……!」
既に居場所は気付かれたようだ。スピードは毛虫らしく大した事は無いと思ったが、何しろ巨体。すぐに近付いて来てセルシュに襲い掛かろうとする。外見は普通の毛虫だけに気色悪さで涙が浮かんだ。
「こ、来ないで! 来ないで……!」
「セルシュッッ!!」
突然 慣れた声がしたと思ったら上方からシュルクが降って来て、持っていた剣で一気に巨大毛虫を切り裂いてしまう。すぐさま飛び退いた為か体液は掛からなかったようで、セルシュの方に駆け寄って来た。
「セルシュ、大丈夫!?」
「あ、私に触れない方が……所であの毛虫は」
「ご、ごめんちょっと、奴を見ててくれないかな! そっち向けない!」
「……はい」
格好良く助けてくれたかと思ったら、やはり毛虫は駄目らしい。よく見ると巨大毛虫に背を向けそちらを見ないように努めており、一気に肩の力が抜けたらしいセルシュから笑いが漏れる。
どうやら巨大毛虫は真っ二つになって息絶えた様子。体液の麻痺効果も毛虫が死んだら消えたようでセルシュの体も動き、もう安心だろう……。
と、思っていたら。
ぼとぼととシュルクの背後に何かが沢山落ちて来る。
「…………」
「…………」
まるで血の代わりのように、巨大毛虫の中から数えきれない程の毛虫が。思わず振り向いたシュルクの顔から見る見る血の気が失われて行き……。
「……無理」
「シュルクーーッ!!」
その場に気絶してしまうのだった……。
その後、集まって来た町人の力を借りてシュルクを運び、宿の一室に寝かせて貰った。目覚めたシュルクの落ち込み様と言ったら見ている方が申し訳なくなる程。
「ごめん……ほんとごめん……情け無さすぎる……」
「まあまあ。お陰様で私は助かりましたし、それに決意しましたから」
「決意? 何を……」
言いかけたシュルクの手を握り、ずい、と顔を近づけるセルシュ。その目は何だか、小さな子供を見る母親のようで……?
「私がシュルクを守ります!」
「えっ」
「今でもまあまあ平気ですが、これから完全に毛虫を克服してみせますので! 次に毛虫を見つけた時は私を頼って下さいね!」
「……」
その勢いが有無を言わせないようで、シュルクは気圧されながら、「はい……」と小さく返事をするしか無かったのだった……。
*END*
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