My only heroine
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※拙作のスマブラ長編夢【グランドホープ】の番外編的内容です。これ単体でも一応読めますが少々のネタバレ注意。
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スマブラキャラが普通に暮らしている近未来の街・グランドホープに異世界転移して数ヵ月が経った。特に美少女ではなく特殊能力も何も持っていない私は平凡な毎日を送る筈だったけれど、諸々の出来事があって結構な数の任天堂キャラと友達になってしまった。
“しまった”って言ったけどもちろん嬉しいよ。
凡人も凡人な私には身に余る程の難事が降り掛かったけど、何とか解決して平和な日々を享受できるようになった。今日は休日、最近ちょっと忙しくて会えなかった友人達と暫く振りに会って、招待されたマルスの家で楽しく過ごしてる。
今マルス以外に一緒に居るのは、同居してるピカチュウとルカリオ、バイト仲間のロイとリンク、ひょんな事から知り合ったルフレとシュルク。ちなみにルフレは男性型と女性型が双子の兄妹として存在し、更に一つの体に纏まっていて入れ替わる事が出来るけど、今は男性になってる。
ロイが背伸びと欠伸をして、のんびりした口調で明るく愚痴る。彼は原作とはまるで違う性格と口調になっているんだけど、もうすっかり慣れっこだ。
「それにしても、あの戦いが嘘だったみたいに平和だよなー。オレついにヒーローになる機会なかったよ」
「私もヒロインになる機会なかった~」
「なー、拍子抜けだよなー」
「あはははは」
彼とそう話せば、何事も無かったんだから良かったじゃないか、と平和主義なマルスの言葉。結局 私は脇役だったし、そんな私を守っていたロイ達に活躍の機会は無かった訳だ。
私の頭の上に乗っていたピカチュウが、あっけらかんとした口調で話に交ざる。
「ま、これがコノハにはちょーどいいんだよ。ヒロインなんてダメダメ、まかり間違って悲劇のヒロインなんかになられちゃ堪んないからね」
「まったくですよピカチュウさん」
ちょっと棘を感じる言い方だけど、要は私が不幸にならなくて良かったと喜んでくれてるだけ。
そうそう。特に何の能力も無い私じゃ、ピンチに陥ったって回避できないかもしれないんだから、助かって良かったと喜ぶべきだよ。ヒロインなんかになれなくったっていい。ドラマチックな人生なんて、こうして友人達と仲良く楽しく過ごせなくなるくらいなら、無い方がいい。
……まあ夢小説好きとして、ドラマチックなヒロイン人生には未だに興味も未練もあるけどね! それでも平和が一番だ、うん!
そんな私達の会話を聞いていたルフレがふと。
「僕にとってコノハさんはヒロインだけどな」
「……」
全員の時間がピタリと止まる。
は、はい? 誰が誰のヒロインだって?
「……何をおっしゃるウサギさん」
「何それ」
私の棒読み気味なノリの言葉に軽く笑うルフレ。他の誰もまだ動かない事に気付いて話を続ける。
「僕はコノハさんと出会ったのは運命だと思ってるよ。最初は市長の悪だくみに巻き込まれた可哀想な一市民ってだけだった」
「……」
「だけど少しでも強くなろうと一生懸命で、命を懸けた友達想いで……。そんなコノハさんを見て思ったよ、『守らなきゃ』って。そうしてコノハさんが“特別に守りたい人”になった」
「……」
「これってコノハさんが僕にとってのヒロインって事だと思うけど。お姫様って言っても過言じゃないね」
「ぶっふぁ!!」
お姫様とは程遠い噴き出し方をしてしまった。笑ったんじゃなくて衝撃に詰まってた息が出て来たんだけど。そんな私にもルフレはニコニコ笑顔を崩さず。
そこにシュルクも。
「でもルフレの言う事は分かるよ。僕だってコノハの事、絶対に守らなくちゃって思ってたから」
「ちょま、待ってシュルクさんまで。守られるヒロインだとかそんな大層な存在じゃないよ私は!」
「まあ俺達も前世の事とかあるし、確かにコノハは友達であると同時に、守るべきお姫様だな」
慌てての否定も虚しく、リンクまでもが援護射撃して来た。個人的に歴代リンクで一番イケメンだと思ってるトワプリ仕様の容姿をしている彼に、そんな内容の援護なんてされては命が持たない。
「ぎゃー! 私そんなんじゃない違う違う、恥ずかしいからやめてー!!」
「照れ屋だねコノハ」
最後のはマルス。
ヒイィィ何なのこの状況どんな羞恥プレイだよほんと夢小説の主人公はこういうの言われること多いのによく照れで死なないね尊敬する!
「……待て……」
突然低い声が聞こえて、そちらを見ればルカリオ。俯いてわなわなと体を震わせてる。
「何だそれは。お前達、コノハ様を守る臣下の役目を私達から奪おうと言うのか」
「奪うとか、そんなつもりは無いけど」
「ちょっとルカリオ、“私達”ってそれボクも入れたー?」
頭上のピカチュウが気の抜けた様子で横槍を入れる。ピカチュウは間違いなく私を守っていてくれたけど、親友ポジションだから臣下は嫌なんだろう。
「お前達はコノハ様の友人だろう。臣下の立場は譲らない!」
「ルカリオお前なんかヘンな所でこだわってるよなー……」
ロイが感心も呆れも混じっていそうな苦笑で答える。っていうかルカリオも友達ポジで良いのに、臣下の態度を崩さないんだよ。
はー、これが友人関係の話で本当に良かった。もし万が一にでも逆ハーレム状態になったら私の精神が多分持たない。
っていうか言い出しっぺのルフレは一体全体この私に何を見ているっていうんだ。私は夢主人公とは程遠い凡百の一般人で、ヒロインだのお姫様だのとは完全に無関係なんだってば。
そう思いながら彼に視線を向けると、相変わらずのニコニコ笑顔で私を見ていて……。
……いや、つい今さっきの楽しそうな笑顔じゃない、なんとも優しい眼差しで見つめて来てる。それはまるで、その、なんか、愛しい相手でも見守っているような……。
「……私はお子様です」
「えっ、急にどうしたのコノハ」
突然妙な事を言い出した私にマルスが疑問符を浮かべるけど、今のは自分に言い聞かせた。
そうだよあれだ、小さい子供や小動物を見守ってるような感じだよあの眼差しは。そうそうそう、まさかルフレが私に対し男女の特別な感情を持ってるなんて、そんな事……。
「あのさ、コノハさん」
「ひゃいっ」
うわ変な声でルフレに返事しちゃった。ロイがちょっと噴き出したけど、今の私にはそちらに反応する余裕なんて無い。
「本当に僕、コノハさんの事が大切だし尊敬してるよ」
「ひゃい……あ、いえいえ、私はそんな大層な存在では……」
「さっき言った事に嘘偽りは無いよ。僕にとってコノハさんは特別に守りたい人だから」
「あれ、これ俺ら出て行った方が良くない?」
リンクがきょろきょろ皆を見ながら控え目に言う。やめて今ルフレと二人っきりにしないで死にそう手遅れだけど。
「この世界に来た事、コノハさんにとっては災難だったかもしれない。だけど僕は感謝したい。コノハさんと出会えた運命に」
「あ、ははー……。まあ災難な事もあったし、元の世界に未練も執着もあるけど、間違いなく今の私は幸せだよ」
「良かった。そんなコノハさんの幸せの中に、僕も居るだろうか」
「居る居る。今まで出会った友達のみんな、私の幸せに不可欠だよ」
「……」
あれ、ルフレが黙っちゃった。急に真顔になって真っ直ぐ私を見てる。
んー……? 何か失言したっけ、多少大げさに言っちゃった感は否めないけど、みんな大事な友達なのは間違いないし。
ルフレは私から顔を逸らし何か考え込んでしまった。周りの皆も、雰囲気の変化に何事かと顔を見合わせて言葉を発しようとしない。おーい、やや空気読まない気味のロイくーん、キミの出番じゃないかーい? こんな時こそ この妙な空気を打ち破っておくれよー。
もう少しして再びルフレが私に視線をやる。今度はどこか真剣な表情で、何を考えているのかは窺い知れない。
「あのー、ルフレさん?」
「……参ったな」
「え?」
「今、改めて言われて分かったよ。コノハさんに“友達のみんな”って言われるのは嫌だ。僕がキミを特別に思っているように、キミにも僕を特別だと思って欲しい」
「しっっっつれーしましたァァァ!!」
ちょ、待ってぇぇ! 私とルフレを残して皆が部屋から出て行っちゃった! っていうか家主! 家主一族のマルスさんまで行かないでここ私らの家じゃないよォォ!!
マルスの家はイーストエリアの富豪地帯にあって例に漏れず豪邸だから、他にも集まれる部屋はあるだろうけど! ちょっと待ってよ、何なのこれピカチュウとルカリオまで居なくなった!
と、そこでふと傍に気配。気付くと私が座ってるソファーに、いつの間にかルフレが座ってる。
おわ、ちょ、ちか、近い、近いですルフレさん!
「みんな気が利くね。良い友達を持ったよ」
「へ、へぁ」
「ふふ……可愛いよね、コノハさんって」
「カワイクナイデス」
「どうしてそんなこと言うの? 自分に自信が持てないからって、僕の感性まで疑わないで欲しいな。それとも僕の事が信じられない?」
「え、いや、ルフレさんは罰ゲームとか冗談でこんな事したりとか、そんなの無いって信じてるけど」
「よかった。じゃあ分かってくれるよね」
またさっきの、愛しいものを見守るような優し気な笑顔。待って無理無理、絶対に顔赤くなってる、イケメンさんの攻撃力理解してないのこの人!?
いや本当に可愛くないっていうのは謙遜でも何でもなく事実なので。「そんな事ないよー」の否定待ちとかではないので。ブサイクではないと思うけど可愛いわけでもなく、まあ凡顔レベルなので。
……ひょっとしてルフレ氏、私の中身とか言動とかそういうのひっくるめて、可愛いって言ってる……?
「ひぇ……」
「なんか怯えられてる?」
「あまりの展開に怯えてる」
「僕に怯えてる訳じゃないんだね?」
「う、うん」
「じゃあコノハさん。僕のヒロインになってくれますか」
手を握られた。キャパオーバーです。燃え尽きそうです。
「オ、オトモダチカラハジメマショウ」
「もうお友達だよ」
「……」
これは、もう腹を括るべきなんだろうか。ルフレは真剣に想いを向けてくれてるし、受け入れるにしろ拒否にしろはっきり答えなきゃ駄目な気がする。
そして私の答えは、多分……いやもう、決まってる。
「あ、あの」
「うん」
「……いきなり、恋人らしい事は、精神が持たないので。あの、初めは、お手柔らかに、……お願いします」
(多分)顔を真っ赤にしながら、俯き気味に言った言葉。あまりに恥ずかしくてルフレの顔を見られないけど、一応はっきり言えた。
少しの間だけ沈黙していたら、すぐルフレが私の肩を抱き寄せた。
「う、うゎぇっ」
「抱きしめようかと思ったけど。コノハさんが持ちそうにないなら、最初はこれだね」
拝啓、お父さん、お母さん。良い意味で精神に悪い彼氏が出来ました。
その後しばらくして戻って来た友人一行に、祝福されるやら揶揄われるやら大騒ぎになったのは、言うまでもないか……。
私は“物語”のヒロインにはなれなかったけれど。こうして誰かのヒロインになれるんだったら、それも悪くない。むしろ身に余る程の幸福が降って来た事に、改めて私は自分の運命に感謝した。
おばあちゃん。
辛い事も多々あったけれど、私はちゃんと幸せだよ。
*END*
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