こっちを向いて!
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スマブラファイター達が暮らすピーチ城。
Dr.マリオの助手として働くセルシュは、時間がある時にはちょっとした雑務も行う。
ふと外を見ると小雨が降っているのに洗濯物が干しっぱなし。
「た、大変取り込まないと!」
城仕えのキノピオ達が大抵の家事を行うのだが、ファイターが多いので洗濯物は分けて干されてあり、今は他を取り込んでいるのかもしれない。
すぐに来るだろうが早いうちに取り込んだ方が良いのは当たり前。
セルシュはすぐさま外に出て洗濯物を取り込み始める。
ふと一枚のシャツに手を伸ばした瞬間、もう一本の手が横から現れてセルシュの手を止めた。
え、と思いそちらを見るとマルス。
「手伝うよ、セルシュはもう沢山持ってるだろ。後は僕が取り込むから」
「あ……」
すぐに礼を言うべきなのに言葉に詰まる。
それは他ならない、マルスの手がシャツに伸ばされたセルシュの手に触れているから。
みるみる真っ赤になったセルシュは目を逸らす。
「あり、が、とう、マルス」
「あ、セルシュ!」
消え入りそうな声で礼を言ったセルシュは走り去り、マルスが声を掛けても振り返りもしない。
それを少し呆然として見送った後、マルスは慌てて洗濯物を取り込み城の中へ戻る。
と、そこで声を掛けて来たのが。
「見たぞ」
「! あ、ああ、何だリンクか」
「何だって何だよ」
「いや別に……」
「よし、マルスがセルシュにセクハラしてたって言い触らそ」
「ちょっと!!」
ただ単に洗濯物を取り込む手伝いをしただけで、あらぬ噂を立てられるなどたまったものじゃない。
しかしセルシュのあの反応……そういう風に見られても仕方が無いかもしれない。
「本当にセルシュって異性に免疫が無いんだね」
「らしいな。ドクターの助手として働いてるなら、男に触れる機会もあると思うんだけど」
「……そう言えば、セルシュが直接異性の手当をしてるの見た事無い気がする」
「言われてみれば。するとしたら同性の手当くらいで、後は別の仕事をしてるんだろうな」
セルシュの可愛い所であると同時に欠点でもある、異性への免疫の無さ。
今では女性ファイターも随分と増えたが、相変わらず男性が多い訳で。
セルシュも周りもお互いに不便を感じている状況だろう。
「よし、俺ちょっとセルシュに特訓して来る。じゃあなマルス、洗濯物サンキュー」
「あ、ああ……」
春風のように爽やかな笑顔で去って行ったリンク。
特訓……? と暫く疑問符を浮かべながら取り込んだ洗濯物を片付けていたマルスは、ふとリンクの言った“特訓”の意味に思い至った。
「……いや、まさか、そんな」
そんな、と言ってみても悪い想像(妄想)は止まらない。
慌てて彼を探しに行くと人気の無い廊下の途中、セルシュを壁際に追い詰め、壁に手をついて迫っているリンクの姿。
「なるほど、これが壁ドンか」
「あ、あの、その、リンク、あの」
「大流行してる最中には照れ臭くてやれなくてさ、今ならいいかなと思ってやってみたかったんだ。ありがとうセルシュ、やっぱりお前は優しいな」
「あ、あぅ、あ、あ……」
可哀想なくらい顔を真っ赤に染めて硬直しているセルシュを見た瞬間、マルスは助走をつけてリンクの頭をはたいた。
「何やってるんだセクハラ勇者ぁぁ!!」
「いってぇ!」
はたいた後、すぐさまリンクをセルシュから引き離す。
優しいな、とリンクは言っていたが、きっとロクな了承も得ず勝手にやったのだろう。
リンクから逃れたセルシュはすぐさま数歩離れ、溜まった息を吐き出した。
リンクが叩かれた部分を押さえながらマルスに抗議。
「セクハラって何だよ、お前と違って触ってもないしマズイ事も言ってないぞ!」
「それでもセクハラだ! あと人聞きの悪い事を言うなっ!」
ぎゃあぎゃあ言い合う二人を見て更に数歩後退り、セルシュはまた消え入りそうな声でマルスに礼を言い走り去る。
あ、と二人がそちらを見ても、引き止められる距離じゃない。
「ほら見ろマルスのせいでセルシュに逃げられた、異性慣れする特訓の最中だったのに!」
「7割ぐらい下心だろそれ!」
「馬鹿にするな! 9割だよ!」
「正直者!!」
勢い任せなリンクのカミングアウトで言い合いが止まる。
異性慣れする特訓だの何だの言っても、セルシュが年頃の可愛い女の子である以上、ちょっかいにしかならない。
そしてやる側も結局は特訓よりセルシュに構いたい、ちょっと意地悪したい意識が上回ってしまう為に無意味。
「それもこれもセルシュの可愛さが悪いな」
「酷い責任転嫁を見た」
リンクを窘めつつ、マルスもちょっと彼の気持ちが分かるのでやきもきする。
既に誰も居ないセルシュが去った方を見つつ、溜め息を吐くマルスだった。
++++++
一方、リンク達から逃れたセルシュ。
異性に対し異様に意識して反応してしまう自分をどうにかしたいとは思っていた。
恥ずかしいし、何より妙な態度を取られる男性達も不快だろうと。
小さく溜め息を吐いてからサロンの扉を開け中に入ると、ソファーが集まる辺りが少々騒がしい。
近付いてみるとピーチを中心にして女性陣がわいわいしている模様。
「何かあったんですか?」
「あらセルシュ、これ見て!」
ピーチが見せて来たのは綺麗なイヤリングと一枚のパンフレット。
話を聞けば珍しくマリオが1vs1の乱闘を申し込んで来たので了承し、二人で対戦していたらしい。
途中くす玉が落ちて来たのでピーチがそれを開けると、中から出て来たのは沢山の花びら。
驚いて呆気に取られていたピーチの元にマリオが歩いて来て、彼女の前に跪くと指輪ケースのような小さな箱を差し出して来た。
中に入っていたのは今ピーチが見せてくれたイヤリング。
そして差し出して来たもう一つ、ファイター達がよく出掛ける海上都市から出航する、海上ディナークルーズのパンフレット。
「えぇーっ、凄いサプライズ! しかも跪いてケースを差し出すなんて、マリオさんそんなロマンチックな事して下さるんですか!」
「私もびっくりしちゃった。ディナークルーズは来月に行って来るわ」
「いいなあいいなあ、マリオさんかっこいいなあ!」
「ふふ、でしょう?」
男性への免疫は無いが、恋話や仲睦まじいカップルの話は大好きなセルシュ。
夢見る乙女のように両手を頬に当てて、嬉しそうな顔で小さく首を振る。
そんなセルシュに、その場に居たアイスクライマーのナナが。
「セルシュお姉ちゃんはカレシいないの?」
「えっ!? わわ、わたしは別に……」
「だけど色んなお兄ちゃんに好かれてるみたいよ」
「き、気のせい気のせい。わたし男性がちょっと苦手だから、面白がってちょっかい出されてるだけだよ」
苦手……と言うより免疫不足や意識し過ぎなだけではないだろうかと、その場の女性陣は思う。
けれど男性陣も根底に好意があるからちょっかいをかけるのだろう。
好きでも何でもない相手なら、異性に免疫が無いなんて気にかけようとすら思わないはず。
自分を見る女性陣の微笑ましい視線に気付いたセルシュは恥ずかしくなってしまい、それじゃあ……と話も中途半端に立ち去る。
取り敢えず医務室に戻ろうかと廊下を歩いていると、前方からアイクが歩いて来た。
いかにも男性を意識させる逞しい体格を持つ彼は、セルシュが特に緊張する相手。
目を合わせないように通り過ぎようと考えていたら声を掛けられてしまう。
「セルシュ、丁度良かった。傷の手当てをしたいんだが、道具がどこにあるか分からんから教えてくれ」
「え、アイクどこか怪我したの?」
「大した傷じゃない。庭で自主練していたら木の枝を折ってしまってな、それが飛んで来た勢いで手の甲を切った」
「ドクターは?」
「医務室には誰も居なかった。俺にはよく分からん薬品とかもあるし、迂闊に触れなくてな」
一応、医務室の扉には無人である旨と、出掛け先が書かれたプレートが掛けられていたようだ。
どうやらドクターは城の裏手にある薬草畑に出掛けているらしく、アイクがそこへ向かっている最中セルシュに会ったという訳。
相変わらず、顔を合わせながらも視線は微妙に逸らしてアイクと会話するセルシュ。
しかしアイクの手の甲に巻かれている布に血が染みていて、そこそこ出血している事に気付いた。
覆っている範囲から考えて傷はそれなりに長そう。
Dr.マリオの助手として働いている身、いくら緊張する男性が相手でも怪我を無視する事は出来ない。
「っと、とにかく消毒して止血しないとね。一緒に医務室に来て」
「……分かった」
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